普段、何気なく使っている『こちらこそ』という言葉ですが、場合によっては相手に不愉快に感じさせてしまうことがあります。そうならないために、気をつけるべきことを例文を交え解説していきます。

『こちらこそ』の意味は何か?

『こちらこそ』という言葉は相手からの感謝やお詫びの表明を受けて使う言葉です。
『こちらこそ』の「こちら」は代名詞で、話し手自身、または話し手の側を指しています。「こそ」は係助詞で、強調する意味があるでしょう。
相手の感謝やお詫びを認め、受け入れた上で、自分の方にも非があったと謝罪や、感謝していることを伝える際に使用します。「本来であれば、こちらから言うべきことです」というニュアンスも含んでいます。

ビジネスで利用する場合は、自分の状況や立場、相手のお詫びや感謝の意図を踏まえて、失礼だと相手に思われないように気をつけましょう。

『こちらこそ』の漢字表記

『こちらこそ』は漢字で表記すると、「此方こそ」とすることはできます。しかし、「こちら」を漢字で表記することはビジネスシーンでもほとんどないので、ひらがなで「こちらこそ」と使ったほうが無難でしょう。

また以下の記事ではお詫びや謝罪の際に役立つ情報を解説しています。緊張するような場面でも、適した対応ができるようになるビジネスパーソンを目指しましょう。


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『こちらこそ』を使うときの注意点とポイント

この「こちらこそ」を使用する際にはいくつか注意点があります。

1 お詫び、感謝をされた際には、自分と相手、どちらがより大きく、相手に迷惑をかけたか、もしくは感謝しているか、感謝しなければいけないか。
2 自分と相手、どちらの地位や立場が上か。
3 相手のお詫びや感謝が社交辞令やあなたに気を使った方便ではないか。
4 こちらの方(ほう)とはいわない

 

1や2は、基本的に、お詫びする側、感謝する側の方が立場が低いので、自分たちが相手より、より深くお詫びもしくは感謝しなければいけない場合、自分は相手より立場が低くなければいけません。

『こちらこそ、申し訳ありませんでした。』『こちらこそ、ありがとうございました』だけでは、相手のお詫びや感謝を受け入れてしまうことで、対等な立場になってしまい、相手に不愉快な思いをさせてしまう可能性があります。また、人によっては、本来であれば『こちらこそ○○していただき』というべきところを省略した形なので、失礼だと感じる人もいることでしょう。

省略せずに、何に対して謝っているのか、感謝しているのかをしっかりと相手に伝えましょう。

上司「今日は遅くまで手伝ってくれてありがとう。」
自分「こちらこそ、今日はよい勉強になりました。ありがとうございました。」

 

また、相手を立てたいい方を工夫することが大切です。相手のお詫びや感謝を一度、否定しておいてから、『こちらこそ』と続けましょう。その際には、「とんでもないです」、「とんでもございません」などの一言が使えます。

上司「今日は遅くまで手伝ってくれてありがとう。」
自分「いいえ、とんでもありません。こちらこそ、今日は間近で課長の仕事を拝見できて、とてもいい勉強になりました。
ありがとうございました。」

3の場合は、本来、相手は詫びる必要も感謝する必要もないにも関わらず社交辞令でいったことを、自分が相手のお詫びや感謝を受け入れてしまうことで、相手にはお詫びや感謝の必要性が本当にあったかのようになってしまい、相手に不愉快だと思われかねません。3の場合にも、「とんでもないです」などの表現を付け加えるといいでしょう。

4の『〜方』というフレーズ(「お釣りの方、お返しいたします」など)は言葉の聞こえが柔らかくなると好意的な意見と日本語としておかしいと批判的な意見に分かれるので、使わない方がよいでしょう。

『こちらこそ』の別の表現法

むしろ◯◯さん(相手)には◯◯です。

相手「今日はありがとうございました。」
自分「いいえ、とんでもありません。むしろ、お寒い中、このような遠くまでお越しいただきまして、◯◯さん(相手)には感謝しています。ありがとうございました。」

 

◯◯なのは◯◯(自分を表す言葉)です。

相手「先日は大変ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ありませんでした。」
自分「いいえ、とんでもございません。お忙しい中、ご足労いただき、ご迷惑をおかけしたのは、わたくしどもです。申し訳ございませんでした。」

『こちらこそ』を使ったよく聞くフレーズ

『こちらこそ』は、ビジネスシーンのカジュアルな会話でもよく使われます。

「こちらこそです」
かなり短縮された表現なので、近しい同僚や先輩には使えるフレーズでしょう。しかし、何に対しての「こちらこそ」かわからないので、相手は前後の話などから予測しながら意味をくみ取らなければいけないでしょう。目上の人には失礼になる表現なので、使うシーンを選びましょう。

「こちらこそ、どうぞよろしく」
挨拶として、またこの先に対しての期待などを伝える時に使うフレーズでしょう。目下の人に対して使うにはいいですが、このフレーズもカジュアルなので、使う時には注意が必要です。

「こっちこそ、ありがとう」
「こちらこそ」をさらにカジュアルに使う時に、「こちら」を「こっち」に言い換えることもあるでしょう。ビジネスシーンでは、あまり使わないのが無難です。

『こちらこそ』を用いた例文集

相手「本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。」
自分「いいえ、とんでもございません。こちらこそ、お忙しい中、弊社まで、ご足労頂きましてありがとうございました。」
相手「先日は期日ギリギリになってしまい、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
自分「いえいえ、とんでもございません。こちらこそ、多忙な中、ご無理をお願いいたしまして、申し訳ありませんでした。」

「こちらこそ」の英語表現

「こちらこそ」は、英語の”too”で表現することができます。
また、「こちらこそ、ありがとうございます」と言いたい時には、”Thank you”の”YOU”を強調するだけでも「こちらこそ」のニュアンスを伝えられるでしょう。

「こちらこそ」についてのまとめ

  • 『こちらこそ』という言葉は、よく使われる言葉だからこそ、注意が必要です。
  • 特にビジネスで使う場合は、相手が目上の人でなくても、相手を立てるように気をつけると角が立たないでしょう。
  • また、状況に応じて、『こちらこそ』の前に、相手のお詫びや感謝を否定する言葉を入れることで、へりくだったいい方をすることも大切です。
  • 英語で「こちらこそ」は、”too”で表現できるでしょう。