ビジネスシーンでは、時候の挨拶、お歳暮など贈答品の添え状、お礼などで、取引先に直接お手紙を差し上げることがあります。
ビジネスで連絡をとる方法の90%がメールです。しかし、営業部門に配属されたり、他社の方々との共同プロジェクトに参加していたり、会社で出世し上役になると、確実に手紙を書くことになります。

手紙の様式は、

「相手と自分の関係」×「手紙の目的」

で決まります。

この記事では、フォーマルな手紙で用いる「拝啓」と「敬具」の意味や使い方について説明します。

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拝啓と敬具の意味

拝啓の意味

拝啓は、フォーマルな手紙の最初に入れる挨拶です。拝啓は、「拝=おじぎして」、「啓=申し上げる」という漢字を重ねたものです。なので、冒頭におく挨拶である「拝啓」の意味は、「へりくだって申し上げます」となります。

時代劇で、家来が主君に何かを伝える作法を思い出してください。最初にかならず、座礼をして「お許しを得て申し上げます」などと言ってから、用件を伝えていますよね。この言葉にあたるのが「拝啓」です。

敬具の意味

敬具は、フォーマルな手紙の最後に入れる挨拶です。敬具は、「敬=うやまって」、「具=申し上げる」という漢字を重ねたものです。なので、結びの語である「敬具」の意味は、「つつしんで申し上げました」となります。

例えば、神事の際、神主が祈りの末尾に「かしこみかしこみ申す」などと付け加えますね。この言葉にあたるのが「敬具」です。

正しい拝啓と敬具の使い方

正式な手紙の構成

正しい拝啓と敬具の使い方を説明する前に、フォーマルな手紙の構成を簡単に説明します。正式な手紙は、以下のような構成で成り立っています。
また、図1に実例に基づいて、手紙の構成を区切り、前文・末文における各文の役割を色分けしました。解説と同時に確認してみてください。

① 頭語 : 最初に書く「拝啓」のような挨拶です。

② 前文 : 頭語に続く挨拶の文章です。季節に関する話題を述べる時候の挨拶、時候に合わせて相手の安否や活躍を確認し、相手への感謝・尊敬の念を述べる文章が続きます。

③ 主文 : 伝えたい用件を書きます。「さて」などの起語を置き、本題に入ります。

④ 末文 : 手紙の締めくくりの文章を書きます。前文と似たように、時候をからめながら、用件をまとめ、相手の今後の健康や繁栄を祈り、自らの手紙の拙さを詫びる文章を書きます。返信が必要な場合は、返信期限と返信のお願いについて書きます。

⑤ 結語 : 文末に「頭語」の対になる言葉を記します。「拝啓」で始めたならば、「敬具」で終わらせるのが決まりです。

⑥ 後付 : 手紙を書いた「日付」「署名」「宛名」「脇付」で、「いつ、誰が、誰に」宛てたものかを記します。

⑦ 追伸 : 主文とは関係はないが、追記する内容があればここに書きます。失礼なので、目上の方に追伸を書くのはやめましょう。

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図1 フォーマルな手紙の構成 (同じ色の文章は同じ役割です。)

拝啓に続く文章は?

上記で確認した通り、頭語である拝啓の後には、前文が続きます。
前文は、時候の挨拶、相手を気遣う文章、相手への感謝・尊敬の念を示す文章で構成されます。

時候の挨拶は、時期ごとの慣用句もありますが、自信があるなら自作してもかまいません。一般的な慣用句を表1にまとめました。

表1 時候の挨拶 慣用句一覧

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時候の挨拶には、相手の健康や安否を気遣い、それに続けて自分の現況を知らせる言葉を添えます。また、お世話になった方への感謝の言葉、ご無沙汰している事へのお詫びなどを付け加えます。もう一度、図1を振り返って確認してみてください。

また、時候の挨拶のかわりに時下という言葉もつかうことができます。

「拝啓 時下ますますご清祥のこと~」時下の意味と使い方と例文集

そのまま使える例文集

皆さまが遭遇するようなビジネスシーンを想定し、着任挨拶の文例と挨拶状(お礼)の文例を準備しました。


<着任挨拶文例>
拝啓 ○○の候 ますますご健勝のことと存じます。平素は格別のご厚情にあずかり心より御礼申し上げます。株式会社△△△△の○○と申します。
弊社の青山が、新商品開発のご相談にあがった際は、大変お世話になりました。青山が部署異動となりまして、この度の企画をわたくしが引き継がせていただくことになりましたので、ご連絡を差し上げました。至らぬ点もあるかと存じますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
高橋様をはじめとして御社の皆さまのご助言のお陰を持ちまして、具体的に企画が進んでまいりました。このたびは、試作品が一通り完成いたしましたので、改めてご挨拶かたがた高橋様にお目にかかりたく存じます。もし、お時間が可能でしたら再来週あたりにお伺いできたらと考えております。
ご多忙の中、急なご報告とご相談で恐れ入りますが何とぞよろしくお願い申し上げます。

敬具
平成 ○○年 ○○月 ○○日
株式会社 ○○○○○○○○
○○○ ○○
株式会社 ○○○○
○○ ○ 様

<挨拶の手紙例(お礼)>
拝啓 初冬の候 貴社におかれましては益々ご清栄の事と心よりお慶び申し上げます。
このたびは過分なお心遣いをいただきましてありがとうございました。ご厚志誠に有難く、心より御礼申し上げます。早速有り難く拝受いたしました。
今後も変わらぬご厚誼のほど宜しくお願い申し上げます。 略儀ながら取り急ぎ書中にてお礼申し上げます。 ありがとうございました。

 敬具
平成 ○○年 ○○月 ○○日
株式会社 ○○○○○○○○
○○○ ○○
株式会社 ○○○○
○○ ○ 様

ビジネスマナーとしての拝啓と敬具

拝啓と敬具を用いる場合

前に述べた通り、手紙の様式は、「相手との関係」と「手紙の目的」で決まります。

拝啓と敬具を用いることができるのは、自分から見てどのような立場の相手なのでしょうか。
また、拝啓と敬具を用いるのは、どのような目的で書かれる手紙なのでしょうか。

抽象的になってしまいますが、自分と距離があり、尊敬もしくは尊重したいと思う相手に送ります。
例えば、普段ほとんど接点がない他部署に所属する上司には、拝啓と敬具をつけて手紙を送ります。普段直接やり取りをしていない、取引先の上役には拝啓と敬具をつけてください。ただし、取引先との手紙に関しては、かならず先例を確認するようにしましょう。

通常のビジネスに関するメールではなく、定期的な挨拶自体が目的でメールを送ることがあります。新年の挨拶や、年度替わりの挨拶などです。
その場合、メールでも正式な手紙の書式で送ることがあります。頭語・結語や時候の挨拶を入れる方が改まった感じがあって良いでしょう。どのような形式にするかは、慣例に従いましょう。

拝啓と敬具を用いない場合

繰り返しますが、手紙の様式は関係と目的で決まります。すなわち、拝啓と敬具を使ってはいけない関係や目的があります。

例えば、親しい相手(上司・先輩を含む)や近所の人に対して出す手紙では、前文・頭語を省略します。
拝啓や敬具は、フォーマルな手紙で使う表現なので、相手との距離感を強調することになってしまい、逆効果です。

また、自分に前文なしの手紙を送ってきた相手に、前文・頭語をつけて返信するのは、好ましくありません。相手が親しいと思って省略したものに、わざわざつけて距離感を出すのは、失礼ですよね。

手紙の目的によって、拝啓・敬具を避けることがあります。
例えば、わび状は、相手に自分の謝意を伝えるのが最優先なので、前文と頭語を含みません。
病気・災害への見舞い状、死亡通知も、相手に負担をかけないことが一番大切なので、前文と頭語を含みません。
他にも、ハガキで出す挨拶状も頭語・前文を用いません。年賀状や寒中見舞い、暑中見舞いや残暑見舞いなどです。

実は、手紙をだす状況に応じて、拝啓と敬具を用いないほうがよい場合があります。詳しくは、第7項の「拝啓と敬具の類義語」を確認してください。

ビジネスメールに拝啓と敬具は必要?

メールでは、原則として拝啓や敬具のような頭語・結語および、時候の挨拶などを含む前文・末文は省略されます。書いてはいけないというルールがあるわけではありませんが、ない方が良いとされています。

ビジネスメールは、用件を簡素に伝え、相手に負担を書けないことがよしとされるメディアです。頭語・時候の挨拶などに、相手の貴重な時間を割くのは避けるべきです。ただし、礼を失するのは歓迎されません。
拝啓などを使用しない代わりに、挨拶文として一番はじめに「お世話になっております」や「お疲れ様です」などを入れる人が多いです。結語の代わりには、「よろしくお願いいたします。」などの挨拶を入れます。

ビジネスメールの書き出しフレーズ30選

前略 ~前文を省略する際に使う頭語~

前略を頭語として使用すると、前文を省略することができます。
形式ばった前文は省略可能なのですが、省略することに対する謝意は書きます。
例えば、「ごめんください。」「まずは用件のみ失礼します。」と、前略の直後に書きます。

頭語「前略」のペアとなる結語は「草々」です。この場合、形式ばった末文は不要です。しかし、多少の挨拶は入れます。かたい時候の挨拶はせず、相手への気遣いや感謝、簡潔な手紙であることへの謝意などを示す挨拶文です。
例えば、「まずはご報告かたがたお礼まで申し上げます」、「寒くなりますが、お体を大事になさってください」という程度の挨拶文になります。

前略は、先述したような、前文を省略してもかまわない相手に対して使うことができます。身近な人がメインです。取引先相手への挨拶状にも使うことがあります。このような場合は、前例に従うのが妥当です。

かしこ ~女性専用の結語~

かしこは、結語の一つで、女性のみが使用できます。かしこは、全ての頭語と組み合わせて使用することができます。
古来、主に女性が使用していた「かしこまり、申し上げました」を平仮名で省略しています。
また、かしこを使用する場合は、形式ばった末文を書く必要がありません。簡単な時候の挨拶に先方を気遣う表現を入れれば十分です。

くだけた表現に見えますが、意味は「恐惶謹言(きょうこうきんげん-恐れかしこまり、つつしんで申し上げるということ)」なので、女性が目上の人に手紙を書く際に使用することができます。
ただし、女性らしさを強調することになるので、ビジネスシーンでは利用を避ける傾向があります。

拝啓と敬具の類義語

拝啓と敬具以外にも頭語・結語のセットはあります。
前述のとおり、人間関係と手紙の目的に応じて使い分けます。これまで、述べてきたそのほかの頭語・結語とまとめて下表2にまとめました。参考にしてください。

表2 頭語・結語のまとめ

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英文で書くメールと手紙の拝啓と敬具

通常、英語では挨拶などで敬意を示す文化はありません。
手紙やメールでの最大限丁寧な表現は、Dear + Mr., Ms., or Mrs.を冒頭におき、結語としてSincerelyを置くという程度です。

英語では、挨拶文ではなく、本文を通じて敬意を伝えます。
何かをお願いするときは、Please ~.ではなく、Would you mind if I ask you to ~?など、最大限丁寧な表現を使います。文章の各所で丁寧な表現を使うことが重要なのです。

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