自転車操業|読み方・意味・使い方・類義語・英語表現などを解説

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ここでは「自転車操業」について解説いたします。

「自転車操業」は個人・法人を問わず、資金繰りが苦しい状態をあらわす言葉です。そのため「自転車操業」をインターネットで検索すると、「自転車操業から脱却する方法」「資金繰り改善の進め方」など経営改善のノウハウを紹介するサイトに数多くヒットします。

本項では「自転車操業」の意味や語源、類義語や英語表現についてくわしく解説しています。純粋に言葉としての知識を深める内容ですので、お気軽に最後までお読みください。

自転車操業の読み方・意味・使い方

「自転車操業」は「じてんしゃそうぎょう」と読みます。意味としては、資金不足で借り入れと返済を繰り返しながら事業をかろうじて継続している状態、またはそのような苦しい経済状況にある法人や個人をあらわします。

「自転車操業」の「操業」は仕事や作業を意味する言葉です。そのため「自転車操業」はおもに企業や個人事業主の経営状態をあらわすときに用いられます。個人の家計が苦しいことをあらわす場合は「自転車操業」よりも「火の車」を使うのが一般的です。

また「自転車操業」というと、自転車関連の業種と勘違いされることもありますが、「自転車操業」に特定の業種をあらわす意味はありません。業種に関係なく経営状況が苦しい状態をあらわす言葉です。

自転車操業の語源

「自転車操業」は、資金難に陥った会社が借金を返すために別の借金をするという負のサイクルを繰り返しながら、かろうじて経営を維持しているフラフラな状態を、ペダルをこぎ続けないと倒れてしまう自転車に例えたものです。

同じ意味で、戦後間もない時期に「自転車経済」という言葉も使われましたが、やがて評論家の臼井吉見氏が雑誌の対談で「自転車操業」という言葉を用いると、「操業」のほうが意味的に身近でわかりやすかったことから広く社会に浸透しました。

自転車操業のビジネス上での使い方

資本主義社会では、企業や個人事業主が経営資金を融資=借金に頼ることは決して珍しいことではありません。しかしながら借金を返済するためにまた別の借金をするという「自転車操業」の状態は慢性的な赤字で倒産寸前の状況を意味します。

ビジネスシーンでは「自転車操業」は最も避けたい状況をあらわすネガティブな言葉です。あえて使うとしたら、企業経営者や個人事業主が自虐的なジョークで語るか、あるいは明らかな放漫経営で行き詰まった会社を批判する場合に限られます。

現存する企業や事業について、第三者が「自転車操業」と言うと、たとえジョークだとしても、聞き手が真に受けた場合に風評被害を招く危険があります。また一般社員が自社の経営状況を「自転車操業」と評することも、経営陣を侮辱することになりかねません。

日本のビジネスシーンでは、下手なジョークや自虐的な謙遜はトラブルの種だと考えたほうが良いでしょう。ビジネスの場では悪意がなくても、縁起でもない言葉はなるべく使わないのがベターです。

自転車操業の類義語と例文

「自転車操業」と似た意味の類義語に「火の車」があります。語源は仏教で「因果応報」を示す教えにあります。

仏教では、人は死ぬと生前の行いによって六道(「天道」「人道」「修羅道」「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」)のいずれかに生まれ変わる、とされています。そのうち最も罪深い者の行き場となるのが、最下層の「地獄」です。

極悪人が死ぬと「火車(かしゃ)」という炎が燃え盛る車に乗せられ、地獄へと移送されます。「火の車」は「火車」を訓読みした言葉に由来します。「火車」に乗せられた者は、まさに「地獄の苦しみ」を味わいます。

やがて「火の車」そのものが「地獄に落ちる苦しみ」をあらわすようになり、さらに「生きながらの苦しみと言えば貧乏生活」という連想で「経済的な苦痛」の意味に変遷したとされています。

一般的に「火の車」は法人や個人事業の経営状況よりも、家計の苦しさを表現するときに用いられます。企業の経営状態を表現する場合、「火の車」は「自転車操業」よりもさらに地獄に近い切羽詰まったニュアンスになります。

「自転車操業」の他の類義語としては「四苦八苦」や「貧乏暇なし」などもあげられます。

「四苦八苦」は金銭のやりくりに限らず、生活全般に関わる苦労を意味します。「四苦八苦」の語源も仏教用語で「生」「老」「病」「死」の「四苦」に「愛別離苦」「怨憎会苦」「求不得苦」「五陰盛苦」の四つを加えた「八苦」に由来しています。

「貧乏暇なし」は「貧乏人は稼ぎが乏しいので内職もせねばならず時間の余裕がない」という意味と、「貧乏人は生活に追われて時間の余裕がない」というふたつの意味があります。

火の車の例文

今月は妻の友達の結婚式が3件もつづいて、おめでたいことではあるんだけれど、ご祝儀やら交通費やらで家計のほうは火の車ですよ。

自転車操業の英語表現

自転車操業の意味をあらわす英語表現としては、「shoestring operation」と「rob Peter to pay Paul」をあげることができます。

「shoestring operation」の「shoestring」とは「靴紐」の意味ですが、昔の靴紐は安価で切れやすかったことから、「資金や予算などが乏しい」「(経営が)危なっかしい」という意味もあります。

「operation」は「操作」「作戦」「運行」などを意味します。「shoestring operation」は「乏しい財政状況で細々と仕事を続けること」をあらわす言葉になります。

「rob Peter to pay Paul」は古くからある有名なイディオムです。直訳すると「ポールに支払う金をピーターから強奪する」という意味になります。

他にも「to borrow from Peter to pay Paul」(ポールに借金を払うためにピーターから借金をする)、「to unclothe Peter to clothe Paul」(ポールに服を着せるために、ピーターの服を剥ぎ取る)などのバリエーションがあります。

いずれも、借りを返すために別の人から奪う(または借りる)ことをあらわすフレーズで、「自転車操業」と同じ意味で使われます。

ちなみに「Peter」と「Paul」は、キリスト教の正教会で十二使徒の首座とされる聖使徒ペテロとパウロをあらわします。ペテロとパウロは首座使徒として教会のステンドグラスなどに並んで描かれることが多く、信徒から深く崇拝されています。

そんな二人の名前を「rob Peter to pay Paul」と韻を踏んで、乱暴な金策のたとえにすることに、不謹慎だからこそおもしろいというブラックジョークとしての意味もあります。

まとめ

・自転車操業は資金繰りが苦しい状態をあらわす言葉です。
・自転車操業といっても自転車関連の会社の意味ではなく、自転車はこぎ続けないと倒れてしまうことが語源です。
・自転車操業と同じ意味の言葉には「火の車」「四苦八苦」「貧乏暇なし」などがあります。
・自転車操業の意味をあらわす英語には「shoestring operation」「rob Peter to pay Paul」があります。