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介護の問題に直面すると聞こえてくるのが「世帯分離」という言葉です。もともとは介護問題とは関係なく存在する手続きの一つですが、知らないと損をするとまで言われ、テレビや雑誌で度々取り上げられています。
そこでこの記事では、
・世帯分離と介護費用
・世帯分離のメリットとデメリット
・夫婦の世帯分離
・生活保護と世帯分離
についてわかりやすく解説していきます。
この記事を通して世帯分離のデメリットまで理解し、賢い選択ができるようになりましょう。
世帯分離とは 意味と概要
そもそも世帯とはなにか
「世帯」とは、同じ家に住み、家計を一つにして暮らしている生活体を指す言葉です。
夫婦であったり、夫婦と子供であったり、三世代が暮らす家族であったり、独立して暮らす単身者であったりします。
通常、住民票は世帯ごとに作られ、その中心となる人が世帯主となります。
世帯分離とはなにか
「世帯分離」は、1つの世帯を2つ以上の世帯に分けて住民票に登録することです。
分離前:①(親夫婦+息子夫婦) ⇒ 分離後:①(親夫婦)/②(息子夫婦)
分離前:①(父+子+子) ⇒ 分離後:①(父+子)/②(子)
世帯分離をしても同じ家に住み続けて問題はありません。ただし、世帯主は世帯ごとに、つまり同じ家に2人いることになります。
介護費用を抑えられるシステム
この仕組みが注目されるようになったのは、世帯分離をすることで介護費用を抑えられる可能性があるからです。
家族に介護の必要な人がいて、介護サービスを利用する場合、その利用料は世帯の収入によって変わってきます。
これを裏ワザ的に利用するのに世帯分離が有効となるわけです。
世帯分離のメリット
介護サービスの自己負担額を軽減
介護サービスの利用料は、世帯を同じくする家族全員の収入が多ければ高くなり、少なければ低くなります。
介護サービスは要介護度別に利用限度額が決まっていて、1割の自己負担が原則です。
一番軽い「要支援1」では月に5,003円の自己負担、一番重い「要介護5」では36,065円が自己負担額になります。
ただ、所得が低いとこの金額を支払うのが厳しい場合もあり、その負担を少なくするために自己負担額には所得に応じた限度額が設けられています。
区分 | 対象者 | 自己負担の上限額(月) |
第1段階 | 生活保護受給者 | 15,000円 |
第2段階 | 所得と年金の合計が年額80万円以下の人 | 15,000円 |
第3段階 | 世帯全員の住民税が非課税 | 24,600円 |
第4段階 | 住民税が課税されている世帯 | 44,400円 |
もし、介護サービスを受ける本人の収入が国民年金の78万円だけで、同居している家族もいなければ、負担限度額は第2段階の15,000円となります。
一方、同居している家族に住民税が課税される額の収入があると、負担限度額は第4段階の44,400円となり、大きな差があることがわかります。
このように、世帯分離は介護サービスを受ける本人の世帯を分離することで負担額を減らすことに利用されています。
国民健康保険料の負担額が減ることがある
もうひとつのメリットとして、国民健康保険料の負担額が減る可能性があげられます。
介護費用と同じように、国民健康保険料も世帯の所得が低い場合は減額制度が適用されて、2~7割軽減される場合があります。
世帯分離のデメリット
国民健康保険料の負担額が増えることがある
世帯分離で国民健康保険料が減ることもありますが、反対に高くなってしまう場合もあります。
国民健康保険料は世帯主に支払い義務があるので、世帯分離をすることで2人に支払い義務が生じ、世帯で見た支出が増えてしまう可能性もあるからです。
世帯分離による2~7割の減免措置とどちらが得になるかは個々の状況によって変わり、一概にはいえません。
会社の健康保険組合を利用したほうがよい場合がある
もし会社に勤めている親がいてその扶養に入ることができれば、国民健康保険料を支払う必要はなくなります。扶養家族が何人いても保険料は同じため、負担は増やさずに国民健康保険料分を丸ごと浮かす事ができます。
この場合、世帯分離をするまでもないので一考の余地があるでしょう。
節税が目的なら面倒な手続きをするよりもふるさと納税で返礼品を受け取った方がお得
ふるさと納税という言葉をだれしもが聞いたことがあると思います。しかしその仕組を理解している方は半数にも満たないでしょう。
ふるさと納税とは、地方自治体に寄付をした金額のうち2000円を超える部分が税額控除される制度です。
名前こそ「納税」ですが、厳密には自治体への寄付金額を住民税から差し引くという、寄付控除を活用した制度です。
さらに自治体の多くが、ふるさと納税の返礼として地元の特産品を贈呈することで寄付者にも喜ばれ、地場産業の振興にも一役買うという一石三鳥の効果があります。
また自治体によっては、寄附金の使い道についても、ふるさと納税を利用した人が選択することもできます。
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夫婦の世帯分離は可能か
介護保険料や保育料、国民健康保険料を安くするために、夫婦の世帯分離をするメリットがささやかれています。ですが、そう簡単にできるものではありません。
というのも、民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められていて、世帯分離はこれに反することになるからです。
そのため、手続きの際には生計が完全に別であることの証明を求められることもあり、役所の窓口で断られることもあります。
また、自治体によっては、一度世帯分離すると二度と元に戻せなかったり、数年間は継続が必要というルールを定めている場合もあるので、よく調べ、慎重に行う必要があります。
生活保護受給のため、同居家族の世帯分離は可能か
生活保護を受けられるかの認定も世帯が単位となっています。ですが、一定の条件のもとでは、世帯分離をして特定の人だけが生活保護を受給できる場合があります。
例えば、生活保護を受けている家庭の子供が大学に進学した場合、大学進学の費用は生活保護では支給されません。その場合は世帯分離をして、同居を続けながら子供だけは生活保護から抜けることになります。
そしてアルバイトなどで稼いだお金で自分の生活費をまかないます。子どもが稼いだお金は収入認定の対象外になるので、親は生活保護を引き続き受けられることになります。
とはいえ、こうしたことは例外的で、生活保護のための世帯分離の条件も簡単ではありません。認定されるかどうかも個々の状況によってさまざまです。
世帯分離のまとめ
・介護サービスの負担額は世帯の収入で決まるので、収入の少ない人を世帯分離すれば負担額を減らすことができる
・国民健康保険料は、世帯分離で減額できる場合と負担が増える場合がある
・夫婦の世帯分離は民法に反するので難しい
・生活保護の単位は世帯が原則だが、一定の条件のもとでは世帯分離を適用できる