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この記事では「言質」について解説しています。
「言質」はふだんの生活で使う機会は多くありませんが、漢字クイズではおなじみの難読漢字です。
ビジネスの場で「言質」の読みや意味を知らないと言質どころか揚げ足まで取られることにもなりかねません。
この記事を読むと、「言質」という言葉の読みや意味をはじめ類義語や英語表現など多角的な知識を得ることができます。
「言質」の読み方・意味・使い方
漢字の「言質」は、「げんち」と読みます。
「げんしち」や「げんしつ」という読み方も慣用読みとして認められていますが、いずれも誤読が定着したもの。「言質」の正しい読み方は、「げんち」です。
まちがえないようにしっかり覚えましょう。
「言質」の意味は、「あとで約束や証拠になるような言葉」のこと。ビジネスや政治の現場では一度合意したにもかかわらず、後になって相手側が一方的に合意内容を破棄することがよくあります。それを防ぐために同意の言葉を証拠として取っておくことを意味します。
「言質」は契約書や議事録などの書面に記録された文言ではなく、会話での口約束や証言をあらわす言葉です。
そのため「言質を取る」あるいは「取られる」という行為は口約束だけで成立可能な契約か、あるいは契約外の付帯的な交渉の場に限られるのが一般的です。
当事者が書面に合意のサインを交わすようなレベルの交渉で「言質を取る」ことはまずありません。
特に海外企業との交渉では、相手からいくら言質を取っても口約束では証拠が残らないため効力はないとみなさまれます。
「言質」の語源
「言質」は漢字の「言」と「質」を結合した熟語です。故事成語ではないので文献や伝承などの出典はありません。そこでそれぞれの漢字の成り立ちについて解説します。
まず「言」は「辛」の下に「口」を合わせた会意文字。「辛」は先のとがった針や刃物の象形で、刺すと痛いことから「つらい」という意味の漢字となりました。「口」は言うまでもなく口の象形文字です。
「言」は「辛」と「口」を合わせて、「約束に背くと辛い罰を受ける」という「誓いの言葉」を意味する文字となり、やがて「話す」「言論」などを意味する漢字の「言」になりました。
一方、「質」はふたつの「斤」の下に「貝」を合わせた会意文字。ふたつの「斤」は文字通り「2丁の斧」で「価値が釣り合うもの」を意味します。「貝」は貨幣の象形文字。「質」は「斤斤」と「貝」で「金銭と価値が釣り合う品物」を意味する漢字となりました。
現在の日本語では、「質」を「しつ」と読むと「もの」「中身」「根本」「事実」などの意味となり、「しち」と読めば「返済などの約束を守る担保として預けるもの」という意味になります。
そこで「言」と「質」を合わせることで「言葉を担保にする」という意味の「言質」という熟語が成り立ちました。
「言質」のビジネス上での使い方
前述したように「言質」はビジネスの契約や政治的な交渉を口約束で進める場合に使われる言葉です。
しかも和気藹々の交渉ではなく、「口約束をさせる・させられる」というつばぜり合いのような状況の中で用いられるのが一般的です。
ビジネス上での「言質」の使い方としては「専務から言質を得る」「彼女に言質を取られた」「うっかり言質を与えてしまった」というように「取る・取られる」というババ抜きのような駆け引きをあらわす言い回しになります。
「言質を取る」「言質を得る」の意味と例文
「言質を取る」と「言質を得る」の意味は、口約束を交わした相手から合意の証拠となるような発言を引き出すこと。
「揚げ足を取る」とよく似ていますが、よりネガティブなイメージが強いのが「揚げ足を取る」です。
この場合、「取る」も「得る」も意味は基本的に同じですが、慣用句としては「言質を取る」が正解です。「言質を得る」は辞書に掲載されていません。
社長は自己都合主義のかたまりだから、いくら言質を取ったところで、「俺はそんなことを言った覚えはない!」と後でしらを切られたら一巻の終わりだ。
「言質を与える」の意味と例文
「言質を与える」は「言質を取られる」と同じ意味の慣用句ですが、「言質」は自主的に与えるものではなく、「相手の口車に乗せられて、ついつい自分に不都合なことを言ってしまう」というニュアンスがあります。
そのため「言質を与える」も「言質を取られる」と同様に「相手に有利なことをうっかり口約束してしまう」という意味になるので注意が必要です。くれぐれも「部下に褒美として言質を与える」といった誤用をしないように気をつけましょう。
社長は余計なひと言が実に多い人で、昨日も卸売会社に販売価格の2割をアローワンスとして容認するという、とんでもない言質を与えてしまった。
「言質をいただく」は誤用
日本のビジネス社会は上下関係に厳格です。上司や顧客に対する言葉遣いにはじゅうぶん気をつけなくてはなりません。かといって「言質を取る」の丁寧語のつもりで「言質をいただく」というのは、ふたつの意味で誤用です。
ひとつめの理由は「言質を取る」の「取る」には「相手から強引に取る」というニュアンスがあること。
言質は歳暮や中元のように「いただく」とか「差し上げる」とかいうものではなく、「取るか取られるか」です。敬語にするとその意味が矛盾してしまいます。
ふたつめの理由は「言質を取る」は慣用句なので「取る」を敬語にはできないこと。たとえば「揚げ足を取る」や「機嫌を取る」を敬語にするとして「揚げ足をいただく」「機嫌をいただく」とは言いません。
「言質を取る」の敬語表現としては、「言質をお取りになる」「言質を取らせていただく」 などの言い回しが良いでしょう。「取る」を尊敬語にして「言質を取られる」ということもできますが、これでは受け身か敬語かわかりません。
「言質を取る」に限らず、受け身形と同じ言い回しの敬語表現は誤解を防ぐためにも避けた方が無難です。
「言質」の言い換え表現と例文
「言質」と同じような意味を持つ類義語としては「確約」「口約束」「証言」などがあります。「証拠」を意味する「エビデンス」も類義語に近いと言えますが、「エビデンス」は「言質」と違って書面による証拠も含まれるのが特徴です。
エビデンスの例文
エビデンスとは?業界別の意味、間違った使い方などを簡単に解説
「言質」の英語表現
欧米のビジネスシーンでは口約束を信頼しないため、「言質」と同じ意味の言葉は存在しません。
「言質」を英語で表現する場合は「確約する」という意味の「commit (oneself) to」や「言明する」という意味をあらわす「give one’s word」を用いるのが一般的です。
ちなみに「口約束」は英語で「a verbal (or an oral) promise」と言います。会話ではもっと簡単に「one’s word」と表現することも可能です。
まとめ
- 「言質」は「げんち」と読みます。
- 「言質」は「あとで約束や証拠になるような言葉」を意味します。
- 「言質」は口約束として取る、または取られるもので、文書は対象外となります。
- 「言質」はビジネスの契約や政治的な交渉を口約束で進める際の駆け引きとして使われます。
- 「言質」の類義語としては「確約」「口約束」「証言」「エビデンス」などがあります。
- 「言質」の英語表現は「commit (oneself) to」や「give one’s word」を用います。