現代では、正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト社員など、多様な雇用形態の社員が同じ企業内で働くことが一般的で、派遣社員を雇用しているのは「労働者派遣事業」を業としている企業です。

この記事では、労働者派遣事業とはなにか、労働者派遣事業と請負との違いはなにか、労働者派遣事業に関係する法律について解説します。

そもそも労働者派遣事業とはなにか?

労働者派遣とは、自社が雇用する労働者を派遣先のために働かせることです。

労働者派遣を事業として営んでいる企業を、一般的に派遣会社と呼んでいます。派遣先の要請を受けて派遣スタッフをマッチングさせて派遣するのが派遣会社の役割です。

派遣と請負は働き方に違いがある

派遣と請負はどちらも発注先の企業で働くので混同しがちですが、働き方に大きな違いがあります。請負や労働者は発注先の指揮命令を受けませんが、派遣では、労働者は派遣先の指揮命令を受けることに違いがあります。

例として、A企業に所属しているスタッフが請負でB企業で働く場合、仕事の指示を出すのはA企業の社員です。しかし、派遣でB企業で働く場合は、仕事の指示を出すのはB企業です。

働く環境にも違いがあります。請負の場合はチームで仕事をすることが多く、自分の所属している企業の何人かでチームを組んで仕事をするのが一般的です。

派遣の場合は派遣先企業の社員や別の派遣会社の社員と一緒に仕事をします。先ほどのA企業とB企業の関係で説明すると、請負はB企業がA企業に仕事を発注する形で、派遣はB企業がA企業に人の紹介を依頼する形です。

 

労働者派遣法とは労働者派遣に関する法律

「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」は労働者派遣に関する法律で、一般的には「労働者派遣法」と呼ばれています。

労働者派遣法は1986年に施行され、正式に認められていなかった派遣の雇用形態が法律として認められるようになりました。

労働者派遣法の大きな改正(1)平成24年

平成24年に労働者派遣法の大きな改正が行われました。

正式名称が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」から、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」になりました。

名前からもわかるように、派遣労働者の保護に重点を置いた改正内容です。主な改正ポイントは以下の通りです。

日雇派遣の原則禁止
日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者(日雇労働者)について、労働者派遣を禁止する。
グループ企業派遣の制限
あるグループ企業内の派遣会社が当該グループ企業に派遣する割合を8割以下に制限する。
離職後1年以内の労働者派遣の禁止
離職した労働者を離職後1年以内に離職前事業者へ派遣労働者として派遣することを禁止する。
無期雇用への転換推進措置
一定の有期雇用派遣労働者等について、労働者本人の希望に応じ、無期雇用への転換推進措置を講ずるよう、派遣元事業主に対して努力義務化する。
均衡待遇の確保
派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者等との均衡を考慮した賃金決定や、教育訓練・福利厚生の実施等に配慮する。
マージン率等の情報提供
派遣元事業主に対して、事業所ごとの「派遣労働者数」「派遣先数」「マージン率」「教育訓練に関する事項」等の情報提供を義務化する。
待遇に関する事項等の説明の義務化
派遣元事業主に対して、派遣労働者として雇用しようとする労働者への「派遣労働者として雇用した場合の賃金額の見込み」等についての説明を義務化する。

労働者派遣法の大きな改正(2)平成27年

平成27年にも労働者派遣法の大きな改正が行われました。

派遣労働という働き方、 およびその利用は、 臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、常用代替を防止するとともに、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図ることを趣旨とした改定です。

主な改正ポイントは以下の通りです。

労働者派遣事業の一本化

「一般労働者派遣事業」と「特定労働者派遣事業」の2つに区分されていた派遣事業が一本化されました。詳しくは以降の項で解説します。

派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップ

①雇用安定措置の実施
同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある方には、派遣終了後の雇用継続のために、派遣元から雇用安定の措置が講じられます。
②キャリアアップ措置の実施
すべての派遣労働者は、キャリアアップを図るために、派遣元から以下のもの受けることができます。
・段階的かつ体系的な教育訓練
・キャリア・コンサルティング(希望する場合)
③均衡待遇の推進
派遣労働者が求めた場合、派遣元から、賃金・教育訓練・福利厚生について、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るために考慮した内容の説明が受けることが出来ます。
④期間制限のルール変更
① 派遣先事業所単位の期間制限
同一の派遣先の事業所に対し、派遣できる期間は、原則3年が限度となります。
② 派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度となります。

労働者派遣事業の一本化される内容

一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の違い

平成27年の派遣労働法改正以前、派遣事業は「一般労働者派遣事業(一般派遣)」「特定労働者派遣事業(特定派遣)」の2つに区分されていました。

一般派遣と特定派遣の違いは2つあり、ひとつ目の違いは労働者と派遣元との契約形態です。一般派遣は仕事を探す人が派遣会社に登録をし、マッチする仕事があり派遣先が決まった時点で派遣元と労働者が雇用契約を結ぶ流れです。

派遣先との契約が終了すれば派遣元との雇用契約も終了します。一方で特定派遣は、常用で雇用している社員を案件に合わせて派遣先に派遣する形式です。派遣先との契約が終了しても派遣先との雇用契約は存続します。

二つ目の違いは業種です。特定派遣はエンジニアなど専門性の高い一部の業種に限られているのに対して、一般派遣はあらゆる業種が対象です。

一般派遣は許可制なのに対して、特定派遣は届出制と、事業を行う許可にも違いがあります。

 

 

特定労働者派遣事業の経過措置

特定労働者派遣事業を行っている場合は平成30年9月29日までは旧事業を継続できる経過措置がとられていますが、経過措置が終了した平成30年9月30日以降は特定労働者派遣事業が行えなくなります。

特定労働者派遣事業行っている方が引き続き労働者派遣事業を行う場合は、平成30年9月29日までに許可の申請を行い、許可を受ける必要があります。

経過措置期間終了後、許可を受けずに労働者派遣事業を行った場合は無許可派遣となり、労働局からの指導の対象となるほか、事業主名などが公表されることや罰則を受けることがあるため注意が必要です。

労働者派遣事業報告書は運営状況の報告書

「労働者派遣事業報告書」は労働者派遣事業を営むものが運営状況を報告するための書類で、毎年期限までの提出が義務付けられています。

平成27年の労働者派遣法の改正により、労働者派遣事業報告書の様式及び提出期限が変わり、年度報告と6月1日現在の状況報告の2回の提出から、2つの内容をまとめたものを年1回6月30日までに提出することになりました。

事業報告書の提出を怠った場合は、管轄労働局からの「指導」を受けることがあり、指導に従わない場合は「改善命令」「事業廃止命令」「許可の取消処分」を受けることがあります。

労働者派遣事業についてのまとめ

  • 労働者派遣事業とは、自社が雇用する労働者を派遣先のために働かせる事業のことです。
  • 派遣と請負の違いは、派遣先、派遣元のどちらの指揮命令を受けるかです。派遣は派遣先の指揮命令、請負は派遣元の指揮命令で仕事をします。
  • 労働者派遣法は1986年に施行され、平成24年と27年に大きな改定がありました。平成27年の大きな改定ポイントは、特定派遣と一般派遣の区分をなくす労働者派遣事業の一本化です。特定労働者派遣事業を行っている場合は、平成30年9月29日までは旧事業を継続できる経過措置がとられています。
  • 労働者派遣事業を営むものは、毎年、労働者派遣事業報告書を提出する義務があります。