人との別れ際や手紙の末尾に、相手の健康や体調を思いやる一言を添えるのが日本人の昔からの習慣です。よく使われる表現に「体に気をつけて」がありますが、実際に用いるときには細かい点で注意が必要です。意味や使い方、注意する点などを解説します。

「お体に気をつけて」の意味

お体に気をつけてとは、相手の健康やご自愛を願っている、という意味です。

「お体に気をつけて」と「体調に気をつけて」との違いは

「お体に気をつけて」と「体調に気をつけて」の違いはないですが、体と体調は少し違う意味になります。

体は頭から足の先までの全身のことを表し、肉体的な意味が強いです。一方、体調は体の調子のことをいいます。体のコンディションを主にさしています。そのため、精神的な部分も体調には含まれていると考えていいと思います。

しかし、「お体に気をつけて」、「体調に気をつけて」のどちらも相手の体調に気を遣う言葉に変わりはないです。

「お体に気をつけて」の使い方

「お体」と「お身体」の違い

体と身体、どちらも「からだ」と読みます。意味の違いを見てみます。

体…頭から足の全体。肉体。
身体…(心も含む)人の体。

「体」と「身体」はほとんど同じ意味です。厳密いえば、肉体と心という点で若干の違いはあります。
使い分けとしては公的な文書では「体」を使いますが、基本的にはどちらでも問題ありません。

「お体にお気をつけて」という表現を使うとき

「体に気をつけて」と言いたい場合、敬語にするといくつかの言い回しがあります。「気をつけて」という言葉に注目してみていきます。

「お体にお気をつけください」
「お体にお気をつけください」

どちらが正しい表現でしょうか。どちらも大して変わらないように見えますが、「て」がはいらない、前者の「お体にお気をつけください」が正解です。

「気をつけて」という言葉は「気をつける」という一つの単語の語尾が変化したものです。つまり、もととなる言葉は「気をつけ」です。活用するのは最後の文字「る」の部分というわけです。したがって「気をつけ」+「ください」となり、「お気をつけください」が正しい表現なのです。

では、次の表現は正しいでしょうか。

「お体にお気をつけてお過ごしください」

これは正解です。「気をつける」と「過ごす」がそれぞれ独立した動詞であるため、つなげると「気をつけてお過ごしください」となります。このときの「て」は2つの動作を並列する役割があります。

目上の人に「お体に気をつけて」を使用していいのか

基本的には使用しても問題ないですが相手の受け取りによっては勘違いをされてしまう可能性もあります。

「お体に気をつけて」をそのまま目上の人に使用するのは命令口調と捉えられてしまう可能性があるので、万が一のことを考えて、そのままの表現で使用するのは避けた方がよいです。

目上の人に「お体に気をつけて」を使用する際の注意点

目上の人に「お体に気をつけて」を使用する際に注意するべき点は相手が不快に受け取る可能性を考慮して、「お体に気をつけてください」などとより丁寧な表現にしたほうがよいです。

また、「お体に気を付けて」という単体の表現で使用するよりもなにか言葉を付け足して使用した方がより目上の人を敬った表現になります。

目上の人に「お体に気をつけて」を使用する際の例文

目上の人に「お体に気をつけて」を使用する際の例文は以下の通りとなります。

・「お忙しいとは思いますが、体調に気を付けてお過ごしください」
・「無理せずにお体にはお気を付けください」

「お体に気をつけ」の例文

・どうぞお体に気をつけてお過ごしください。
・寒くなりましたので、どうぞお体にお気をつけください。
・まだまだ寒い日が続きますが、どうぞお体にはお気をつけくださいませ。
・くれぐれもご無理をなさらぬよう、お体にお気をつけてお過ごしくださいませ。
・季節の変わり目ですので、お体には十分お気をつけくださいますよう。
・秋風を感じる頃はまだ少し先になりそうですが、●●様もお体にお気をつけて残暑を乗り切ってください。

ビジネスで「暑いので気をつけて」という場合の例文

残暑見舞いのメッセージを送りたい場合、「暑いので気をつけて」だと砕けた表現です。ビジネスで使うのに適した表現の例文をいくつか提示します。

・暑い日が続きますので、体調にお気をつけください。
・厳しい暑さが続きますが、くれぐれもご自愛ください。
・時節柄、日に日に暑くなってまいりますので、くれぐれもお体にお気をつけください。
・しばらく暑さが続くかとは思われますが、お体に十分お気をつけて。
・猛暑の折、ご自愛なされますようお祈り申し上げます。
・残暑厳しき折、どうぞご自愛くださいますようお願い申し上げます。
・暑さ厳しき折、お体大切にして下さい。
・暑さ厳しき折、くれぐれもご自愛くださいますようお祈り申し上げます。
暑中見舞いの例文については、こちらの記事もご確認ください。
 

「お体に気をつけ」の類語の使い方

「ご自愛ください」は目上の方にも使える?

「自愛」とは「自分のこと(心や体)を気にかけてくださいね」という意味です。相手の健康を気遣う表現なので、「ご自愛ください」は目上の方に使うことができます。

しかし、「ください」は相手への要求や頼みごとの際に使う文末表現と同じです。当初は押し付けがましい、命令されているようだ、と感じる方が多かったようです。今では手紙の結びで「ご自愛ください」という定型句として用いられることから、相手がどんな人でも使える表現とされています。

より丁寧に表現するなら「くれぐれもご自愛くださいませ」と文末に「ませ」をつけるとよいでしょう。

「ご自愛ください」の意味・使い方・ビジネスで使えるメール例文4選

注意ポイント
「自愛」とは「自分のこと(心や体)を気にかけてくださいね」という意味で「心身ともに」という意味も含まれています。よくある間違いに、「お身体ご自愛ください」という表現がありますが、2重に同じことを言っていることになります。よって、「お体」や「お身体」という言葉はつけずに「ご自愛ください」とだけ言うのが正しい表現です。

「お大事にしてください」は失礼?

相手の体調不良に対して気遣いの言葉をかける表現に「お大事に」があります。「お大事に」の後には言葉が省略されています。「お大事に」するのは【相手】であることから「お大事になさってください」というのが正しい表現です。

「お大事にしてください」と使う人がいますが、間違いなので覚えておきましょう。
お大事に・お大事にしてくださいのビジネスシーンでの使い方・例文集

メールで使える!「お体に気をつけて」の類似表現

・末筆ながら、●●様のご健康のほど、心よりお祈り申し上げます。
・末筆ながら、皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。
・時節柄、どうかご自愛ください。
・時節柄、ご自愛のほどお祈り致します。
・季節がらご自愛ください。
・朝晩が冷え込むようになったので風邪をひかないようお気をつけ下さい
・ご多忙の毎日、どうかお体を大切に
・汗ばむ季節になってきました。お互い体調を崩さぬよう気をつけましょう。
・お体を大切にお過ごしくださいませ。
・気候不順の折から、くれぐれもお体を大切になさってください。
・くれぐれもお体にご留意ください。

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まとめ

相手の体調を気遣う表現を理解して使えると、より人間関係が円滑になります。ポイントは以下の通りです。

・「お体」、「お身体」どちらもOK
・「お体にお気をつけください」、「お体にお気をつけてお過ごしください」は○、「お体にお気をつけてください」は×
・「ご自愛ください」は目上の人にも使える表現。中には上から目線に捉える人もいるので注意すること。「くれぐれもご自愛くださいませ。」という表現が適切。
・「お身体ご自愛ください」は誤り。「ご自愛」には「身体」の意味が含まれている。
・「お大事にしてください」は誤り。正しくは「お大事になさってください」。

「お体に気をつけて」に関するFAQ

「体に気をつけて」を手紙で使うのは適切?

「暑い日が続きますので」「寒くなってきたので」などクッション言葉を入れて、定型句的に手紙の結びに使うことは適切です。

「体に気をつけて」は目上の方に敬語で表現するには?

「気をつけて」が命令的に感じられる部分もあるので、「ご自愛ください」「お大事になさってください」などで言い換える方法があります。例文は本文にて。

コロナを心配する「体に気をつけて」の表現は?

「くれぐれもお体にはお気を付けください」などの表現があります。上司や年配の方には、「お体に気を付けて」単体ではなく、「くれぐれも」「コロナも流行っていますので」など、なにか言葉を付け足して使用した方が敬った表現になります。具体的には記事本文をご確認ください。

「体に気をつけて頑張ってください」の表現は?

例えばお店の人やスタッフに応援のメッセージを送る場合は問題有りません。目上の人や取引先等に送る場合は「お体にはご留意ください」などの表現が好ましいでしょう。具体的には記事本文をご確認ください。