「漸進」とは?意味や読み方、漸進主義などについて解説

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この記事では「漸進」という言葉について解説しています。漸進は一般になじみ深い言葉とはいえませんが、専門領域では「漸進性の原則」や「漸進主義」などの用語が使われています。ビジネスや日常生活の中で接する機会が意外にあるかもしれません。

この記事では漸進の読み方と意味をはじめ、漸進や斬新との違いや、先述した「漸進性の原則」と「漸進主義」の意味、および漸進の類義語と対義語、英語表現について解説しています。

漸進の読み方と意味

教養とは
漸進は「ぜんしん」と読みます。意味は「ゆっくり進むこと」「少しずつ進歩すること」などをあらわす言葉です。「漸」は訓読みでは「ようやく(漸く)」と読み、「氵(さんずい)」と「斬」で川の流れを象形した文字です。

「漸」が現在のように「待ち望んでいた事態がついに実現すること」「物事が徐々に進行して、ある状態になるさま」などを意味するようになった由来については諸説ありますが、一説には川の流れが徐々に変わることから現在の意味になったとされています。

「前進」との違い

「前進」は「乗り物や人、動物などが前へ進むこと」「物事や作業の度合いが進んでいること」「物事が良いほうへ進むこと」などを意味する言葉です。漸進は「ゆっくりと進む」というニュアンスがありますが、「前進」には速度のニュアンスは含まれません。

「斬新」との違い

「斬新」は「ざんしん」と読み、発想や趣向などがきわだって新しいことを意味する言葉です。「斬」は「斬首」や「斬殺」など「切る」という意味でよく使われる漢字ですが、「斬新」の「斬」は「きわだつ」「抜きん出る」という意味をあらわします。

「斬新」の読みは「漸進」と似ています。漢字も「漸」と「斬」が似ていますが、「斬新」と「漸進」の意味に類似点はありません

漸進の関連用語


「漸進」は一般になじみのある言葉ではありませんが、一部の専門的な領域において「漸進性の原則」や「漸進主義」といった用語が使われています。ここでは漸進の関連用語として、このふたつの言葉について解説します。

「漸進性の原則」とは?

「漸進性の原則」はスポーツ選手や一般人の健康づくりのための筋力トレーニングにおいて、最初から強く激しいトレーニングを行うのではなく、負荷や難易度の低いトレーニングからスタートして、ゆっくりと少しずつ負荷をあげていくことをいいます

激しい運動に慣れたスポーツ選手でもいきなり高負荷のトレーニングから始めたり、最初は低負荷でも途中から急に負荷を上げたりすると効率が悪いだけでなく、けがのリスクが高くなります。かといって低負荷のトレーニングばかり続けても一定以上の効果は得られません。

そこで最初は軽いトレーニングから始めて漸進的に負荷を上げていくことで筋力や持久力を効率的に向上させると同時に、筋肉や関節を痛めるリスクも軽減できる、というのが「漸進性の原則」のポイントです。

漸進性の原則は筋力トレーニングに限らず、芸道の稽古や勉強などにも当てはまります。自分の技術や能力よりも負荷が軽い練習ばかり行っていても一定以上の効果は期待できません。体力や技量の向上に合わせて負荷や難易度を徐々に上げていくことが重要です

「漸進性の原則」は「負荷を徐々に高める」という意味で「漸進性過負荷の原則」と呼ばれることもあります。

「漸進主義」とは?

漸進主義とは、 社会の改革をめざすうえで革命などの過激な手段や急激な変化を求めず、徐々に順を追う形で改革しようとする政治哲学上の思想のこと。漸進主義は急激な社会変革に慎重な思想や運動を包括する概念であり、思想的立場が左派か右派かは問いません

たとえばフランス革命において急進的なジャコバン派と穏健なジロンド派が対立したように、政治状況によって社会に変革の気運が高まると、政治運動の主導者や民衆の思想的立場が二分され、過激な急進派と穏健な漸進主義が対立する構図になるのが一般的です

社会改革によって経済的繁栄と政治的安定性が確保され、国民の権利や福祉が保障されるようになると、急進派は社会の安定を脅かす存在とみなされるようになります。その結果として、先進国の主要な政党は右派左派中道を問わず漸進主義を基本理念とする傾向があります

漸進の類義語


漸進と同じような意味の類義語としては、「向上」「進行」「進捗」「進歩」「前進」などの言葉をあげることができます。「向上」は「良い方に向かうこと」を意味する言葉です。また仏教では「悟りの境地」「悟りの境に向かうこと・入ること」などをあらわします。

「進行」は「人や動物、乗り物などがある場所に向かって移動すること」「事態が進んでいくこと」「物事がはかどること」などを意味する言葉です。「向上」は文字通り「上に向かう」というニュアンスを持ちますが、進行は単に「前へ進む」という意味になります。

「進捗」は物事がはかどることをあらわす言葉です。ビジネスの場では作業や計画が順調に進んでいるかどうかをあらわすことが多く、「計画の進捗状況」「進捗報告を怠る」「進捗管理状況を分析する」といった表現がよく使われます。

「進歩」は「物事がよい方へと進んで行くこと」を意味する言葉です。「次第に良い方向へ進んでいくこと」という意味もありますが、「漸進」ほど「ゆっくりと」というニュアンスは強くありません。最後の「前進」は「前へ進むこと」「物事がよい方へ動くこと」などを意味する言葉です。

漸進の対義語


漸進と逆を意味を持つ対義語は「急進」です。「急進」は文字通り「急いで進むこと」を意味します。また漸進主義と真逆の政治思想を急進派や急進主義といいます。

漸進の英語表現


「漸進」の英語表現は「gradual」「incremental」「evolutionary」といった形容詞を用いるのが一般的です。gradualは「漸進的な」「段階的な」「徐々の」「(傾斜などが)緩やかな」といった意味を持つ言葉です。

名詞としての「漸進」の英訳は「gradual advance」と表現すると良いでしょう。次に「incremental」は「徐々に増加する」「徐々に起こる」「漸進的な」という意味を持つ言葉です。名詞としての「漸進」は「incremental advance」とも表現できます。

最後の「evolutionary」は「進化論の」「進化の結果の」「漸進的な」などを意味する言葉です。「evolutionary」は基本的に「進化」の意味が強く、「evolutionary advance」は「漸進」ではなく「進化の前進」という意味になるので注意が必要です。

まとめ

  • 「漸進」は「ゆっくり進むこと」「少しずつ進歩すること」などをあらわす言葉です。
  • 「前進」は「乗り物や人、動物などが前へ進むこと」「物事や作業の度合いが進んでいること」「物事が良いほうへ進むこと」などを意味する言葉です。
  • 「斬新」は発想や趣向などがきわだって新しいことを意味する言葉です。
  • 「漸進性の原則」とは、トレーニングを行う場合に最初は負荷の低い運動からスタートして、ゆっくりと少しずつ負荷をあげていくことをいいます。
  • 「漸進主義」とは、社会の改革で急激な変化を求めず、徐々に順を追う形で改革しようとする政治哲学上の思想のことです。
  • 漸進の類義語には「向上」「進行」「進捗」「進歩」「前進」などがあります。
  • 漸進の対義語は「急進」です。
  • 「漸進」の英語表現は「gradual」「incremental」「evolutionary」などを用いるのが一般的です。