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この記事では、「声を荒らげる」の良き方や意味、使い方などについて考察します。
「声を荒らげる」と書かれた文章を見て、どう読みますか?多くの方は、「声をあらげる」と読まれたのではないでしょうか?しかし、これは本来の読み方ではなく、誤った読み方と指摘されています。
普段何気なく使っている言葉でも間違った読み方をしているものも少なくありません。
この記事を通して、「声を荒らげる」の正しい読み方や意味を理解して、社会人としての知識の幅を広げてください。
「声を荒らげる」なんて読む?
仕事のストレスがたまって、思わず「声をあらげた」なんて経験はありませんか?そうです。「声をあらげる」と言っても違和感はありませんね。でも漢字で「声を荒らげる」と表示された場合はどうでしょうか?
一般的に「荒」は、「アラ」と読みますよね。この理屈で考えれば、「声をあららげる」と読むのが正解のような気がします。でも、テレビのニュースやドラマなどで「声をあらげる」と言っていることは少なくありません。
では、一体「声を荒らげる」の正しい読み方はどちらでしょう。
「声を荒らげる」の読み方
「声を荒らげる」の正しい読み方は、「声をあららげる」です。「声をあらげる」と読むのなら「声を荒げる」と書きます。ですから、「声を荒らげる」を見て違和感を覚えるのは、「声をあらげる」が自然な表現になっているからと思われます。
「荒らげる」「荒げる」どっち?違いは?
文化庁が実施した令和3年度「国語に関する世論調査」では、「声を荒げる」を使う人が79.7%、「声を荒らげる」が12.2%との結果が報告されています。つまり、約8割の人が間違って使っているのです。
さらに、年代別においても「声を荒らげる」が、70歳以上で10.7%、16歳~19歳で9.2%とほとんど差がないのが注目すべきポイントです。つまり、ほとんどの日本人が正しくない表現である「声を荒げる」を使っているのです。
「荒げる」は「荒らげる」の「ら抜き言葉」のように思えますが、「ら抜き言葉」は、「食べられる→食べれる」「見られる→見れる」のように可能性の意味で使う言葉から「ら」を抜いたものです。
「荒げる」は、ら抜き言葉ではなく、本来の動詞である「荒らげる」が誤読して使われるようになったようです。以来「荒げる」は一般的に使われるようになり、声に出す場合は、NHKでも「荒らげる」と合わせて「荒げる」を使うことが認められています。
また、雑誌や新聞などにおいても「声を荒げる」という表現はよく見られ、「声を荒らげる」と「声を荒げる」との違いがなくなっていると言えます。辞書の表記もバラバラで、「荒らげる」だけを表記いているものや「荒らげる・荒げる」と併記しているものがあり、統一されていません。
「声を荒らげる」の例文
「声を荒らげる」の意味は、「激しい語気の声を出す」ですから、感情的に高ぶっている状況で使う慣用句です。そのため、会話で「声を荒げる」を使うのは、感情を表現するのに端的で言いやすいのも一因と考えられます。
NHKが承認しているように音に出す場合は、「声を荒げる」を使うことは間違いではありません。ここでは、「声を荒らげる」を使った文章での正しい例文を2つのシチュエーションに分けて紹介します。
親子や友人間での例文
親しい関係ほど、意見が対立したり、感情的になったりするものです。両親や友人に対して「声を荒らげた」という経験はだれでもあるでしょう。
- 母がしつこく「勉強しろ」というので、思わず声を荒らげてしまいました。
- あの時彼女が声を荒らげたのは、私のウソに気づいたからでしょう。
職場での使い方
ビジネスシーンにおいても「声を荒らげる」場面に遭遇することは少なくありません。仕事のトラブルや人間関係などさまざまな要因が考えられます。
- あの温厚な部長が声を荒らげるなんて、よほど事態は深刻なのでしょう。
- 先輩の理不尽な指図に、新人の彼は思わず声を荒らげて反論しました。
「声を荒らげる」の類語とその違い
「声を荒らげる」の代表的な類語としては、「大声を出す」や「怒鳴る」があります。では、この2つと「声を荒らげる」との違いはなんでしょう?
「大声を出す」との違い
「大声を出す」は、単純に音量の大きな声を出す意味ですから、感情的な因果関係はありません。逆に喜怒哀楽すべてのシーンで使うことができるのが「大声を出す」という表現です。
- 彼女があんなに大声を出して笑うなんて、日ごろの彼女からは想像できません。
一方、「声を荒らげる」は、感情的に「怒り」「不快」などのネガティブな状況で使われるのが一般的です。
「怒鳴る」との違い
「怒鳴る」には、「大きな声で叫ぶ」と「声高にしかりつける」の2つ意味があります。一般的には怒って大声をあげるときに使われることが多く、また、相手を威圧するために「怒鳴るクセ」がついている人も存在します。
- 山で遭難した彼は、何時間も怒鳴り続けたそうです。
- 部長に怒鳴られたからといって、そんなに落ち込みことはないですよ。
「声を荒らげる」と「怒鳴る」の違いは微妙です。一般的には怒りなどの感情が影響していますが、「荒らげる」には、「怒鳴る」のように「大きな声で叫ぶ」という意味は含まれていません。
その他「声を荒らげる」の類語表現
「声を荒らげる」のその他の類語としては、「声を張り上げる」「声を尖らす」「がなりたてる」「わめく」などがあげられます。
- 意味
できるかぎりの大声を出すこと。 - 例文
その男の失礼な物言いに、彼は思わず声を張り上げてしまいました。
- 意味
けわしい口調になること。 - 例文
私が声を尖らしたのは、あまりにも彼のミスが多かったからです。
- 意味
がみがみと怒鳴ること。 - 例文
がなりたてる社長を横目に、彼は今夜のデートの構想を練っていました。
- 意味
大声で叫ぶこと。怒鳴って大声を出すこと。 - 例文
職員室の前を通ると、教頭のわめく声が聞こえました。
「声を荒らげる」とどんな印象を与えるのか
普段は冷静な人でも「声を荒らげる」ことはあるはずです。あとから「しまった」と反省してもその事実を消すことはできません。また、「声を荒らげた」ことを悔やむに人なら問題はありませんが、日常的に「声を荒らげる人」もいます。
このような人の場合、「声を荒らげる」ことに対する自覚がなく、周囲に対する気配りがないように思われます。では、「声を荒らげる」と相手にどのような印象を与えるのでしょうか?
相手に与える印象
「声を荒らげる」ときの印象は、「声を荒らげる人」によって異なります。普段はおとなしい人や冷静な人が思わず声を荒らげた場合は、「うっぷんやストレスがたまっている」「なにか特別な理由があるのでは」と推測されるかもしれません。
逆に、「日常的に声を荒らげる人」の場合は、だいぶ印象が違います。多くの人に「威圧的で近づきたくない」「一方的で無神経」など悪い印象を持たれるでしょう。ケースによってはパワハラになる危険性もはらんでいます。
「声を荒らげる」はネガティブな表現?
「声を荒らげる」は、「激しい語気の声を出す」という意味ですから、イメージ的にはあまり良い印象ではありません。しかし、ネガティブな表現かと問われると、答えに迷ってしまいます。
威圧的で一方的な態度での「声を荒らげる」は、間違いなくネガティブな表現ですが、思わず「声を荒らげる」場合は、その状況によってニュアンスが異なります。何かに対する反発や批判の表れとしたら、ポジティブな意味合いが出てくるでしょう。
つまり、「声を荒らげる」は、発言する人の性格や状況によってネガティブにもポジティブにもなるのです。
「声を荒らげる人」の対処法
もし、日常的に「声を荒らげる人」が近くにいたらどうでしょう?職場の上司だとしたら大きなストレスになるかもしれません。仕事でなければ避けられますが、仕事が関係している場合は嫌でも対応する必要があります。
では、「声を荒らげる人」にはどのように対処したらよいのでしょうか?
黙って聞き流す
怒って「声を荒らげる」ときは、絶対に反論してはいけません。火に油をそそぐ結果になり、さらに大きな声で怒り狂ってしまいます。感情が鎮まるまではおとなしく黙って聞き流すのが得策です。
冷静に反論する
どうしても聞き流すことができない場合は、感情的にならないことが大切です。感情的になれば、相手もヒートアップしてケンカになってしまいます。まずは、感情を抑えて、冷静に敬語を混ぜながら話すことが肝心です。
日常的に「声を荒らげる人」は、「自分の能力を認めてほしい」「自分の考えを通したい」「優位に立ちたい」などの気持ちが強い傾向にあります。プライドが高い反面、寂しがり屋の人が多いようです。
「声を荒らげる人」に接する際には、このような特徴を理解して、冷静に対処することが大切です。
まとめ この記事のおさらい
- 「声を荒らげる」の正しい読み方は、「声をあららげる」。
- 文化庁の「国語に関する世論調査」では、「声を荒げる」を使う人が79.7%、「声を荒らげる」が12.2%との結果が報告されています。
- 声に出す場合は、NHKでも「荒らげる」と合わせて「荒げる」が認められています。
- 「声を荒らげる」の代表的な類語には、「大声を出す」や「怒鳴る」が。
- 「大声を出す」は、喜怒哀楽すべてのシーンで使うことができる。
- 「怒鳴る」には、「大きな声で叫ぶ」という意味も含まれている。
- 「声を荒らげる」のその他の類語には、「声を張り上げる」「声を尖らす」「がなりたてる」「わめく」などがあげられます。
- 「日常的に声を荒らげる人」の印象は、「威圧的で近づきたくない」「一方的で無神経」など。
- 「声を荒らげる」は、発言する人の性格や状況によってネガティブにもポジティブにもなる。
- 日常的に「声を荒らげる人」には、「黙って聞き流す」「冷静に反論する」などの対応が効果的です。