漁夫の利とは|意味・使い方と注意点・英語表現などを解説

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この記事では「漁夫の利」の読み方や意味について解説いたします。

学校の教科書やビジネス会話の中でも使われることがある言葉ですが、その意味や使い方についてはよく分からないという人もいるかもしれません。

そこで今回は「漁夫の利」の語源や類義語、対義語や英語表現も含めて取り上げました。

この記事の中で一つでも参考になるような情報があれば幸いです。

漁夫の利の読み方・意味・使い方

「漁夫の利」は「ぎょふのり」と読み、「当事者同士が争っている間に第三者が苦労もなく利益を得ること」という意味です。

例えば「A社とB社が争っている間に、C社が大きな利益を占めるようになった」のように使います。

また「漁夫」は漁師を意味しており、元々「漁夫の利」は「漁父」という字が使われていました。

しかし現在「漁夫の利」には「漁夫」の字を使うのが一般的になっているので、「漁父」と書くのは間違いです。

漁夫の利の語源・由来

「漁夫の利」の語源は、中国の戦国策という故事です。

ある日美味しそうなハマグリを見つけたシギがそれを食べようとしたところ、貝殻は見事に閉じ合わさってしまいました。

これを見たシギが「いつまでもそんな態度でいると、干上がってしまうだろう」と煽ったところ、シギは「そういうシギこそ、食べ物が無くて飢え死にしてしまうだろう」と返したのです。

そしてこの口喧嘩を眺めていた地元の漁師は、シギもハマグリも両方捕らえてしまいました。

この故事に由来し、「漁夫の利」は先述のような意味を持つようになったとされています。

漁夫の利の漢文と現代語訳

「漁夫の利」は中国由来ということもあり、漢文で書かれています。

この項目では、漢文とその現代語訳を取り上げました。

漢文

趙且伐燕。
蘇代、爲燕謂惠王曰、
「今者臣來過易水。
蚌正出曝。
而鷸啄其肉。
蚌合而箝其喙。

鷸曰、
『今日不雨、明日不雨、即有死蚌。』

蚌亦謂鷸曰、
『今日不出、明日不出、即有死鷸。』

両者、不肯相舎。
漁者得而并擒之。
今趙且伐燕。
燕趙久相支、以敝大衆、臣恐強秦之爲漁父也。
故願王之熟計之也。」

惠王曰、
「善。」

乃止。

現代語訳

趙は今にも燕を攻めようとしていた。
蘇代が、燕の為に趙の王である惠王に言うことには、
「いま私が燕に来る際に易水を通り過ぎました。
ハマグリがちょうど水面に出て日にあたっておりました。
そして鷸(シギ)がハマグリの肉をついばもうとしました。
ハマグリは貝殻を合わせて鷸のくちばしを挟んでしまいました。

鷸が言うことには、
『今日も雨が降らず、明日も降らなければ、すぐにひからびて死んだハマグリができあがるだろう。』と。

ハマグリもまた鷸に向かって言うことには、
『今日くちばしが貝殻から出ず、明日も出なければ、すぐに死んだ鷸ができあがるだろう。』と。

両者とも、互いを放すことを承諾しませんでした。
漁師がハマグリと鷸の両方を一緒に捕らえてしまいました。
今趙は、今にも燕に攻めようとしています。
燕と趙が長い間戦いに持ちこたえ、両国とも国民を疲弊させたならば、私は強国の秦が漁師と同じように燕と趙を一緒に得ることになることを恐れているのです。
そのために王が燕に攻め入ることをよくお考えになることを願うのです。」と。

恵王が言うことには、
「わかった。」と。

そこで趙は燕に攻め込むことをやめた。

漁夫の利のビジネス上での使い方

「漁夫の利」はビジネス上でも使うことがあります。

例えば「我が社とA社が争っている間にB社が市場を席巻するようになったのは、まさに漁夫の利だ」のように使うことが考えられるでしょう。

これは自社とA社が争っている間に、別のB社が市場を牛耳ってしまったという意味です。

「漁夫の利を得る」の意味と例文

「漁夫の利」は第三者が利益を得ることから、「漁夫の利を得る」という言い回しをする場合があります。

使い方としては、次のようなものが挙げられるでしょう。

・A君とB君が営業成績のトップ争いをしていたが、いつの間にかC君が漁夫の利を得た。

これはA君とB君が争っている間に、第三者であるC君がその利益を得たということです。

「漁夫の利を占める」の意味と例文

利益を得たことを強調する場合によく使われるのが「漁夫の利を占める」という表現です。

これは利益を得た事実を誇張する表現で、下記のような例文が考えられます。

・A社とB社が価格競争している間に、サービスの良さを売りにしたC社が漁夫の利を占めた。

上記の例文では、A社とB社が価格に訴求している間に、C社がサービスの良さを武器にして市場を占めるようになったということです。

漁夫の利の類義語と例文

「漁夫の利」の類義語としては、次のようなものが挙げられます。

・濡れ手で粟

・犬兎の争い

また上記の類義語を使った例文としては、以下のようなものが考えられるでしょう。

・入社間もない新人が考案した商品がヒットしたのは、まさに濡れ手で粟だ。

「濡れ手で粟」は「ぬれてであわ」と読み、「あまり努力などすることなく、多くの利益を得ること」という意味です。

上記の例文は、研修もほとんど受けていない新人の商品がヒットしたことを「濡れ手で粟」と表現しています。

・犬兎の争いを避けるべく、両者は合併に合意した。

「犬兎の争い」の読みは「けんとのあらそい」で、意味は「当事者が争い倒れているところを、第三者に利益を横取りされること」です。

そういった事態を避ける為、競争ではなく合併という手段があります。

漁夫の利の対義語と例文

「漁夫の利」の対義語は「二兎追うものは一兎をも得ず」が適切でしょう。

「二兎追うものは一兎をも得ず」は「にとおうものはいっとをもえず」と読み、「欲を出して同時に2つのことをやろうとしても、どちらも失敗すること」という意味です。

例えば「二兎追うものは一兎をも得ずということわざもあるように、他業界への進出は考えていない」のように使います。

上記の例文は、複数の業界へビジネスを広げようとするとどちらも失敗に終わるかもしれないので考えていないということです。

漁夫の利の英語表現

「漁夫の利」の英語表現は、「Two dogs fight for bone, and the third runs away with it.」が最もふさわしいといえるでしょう。

上記は英語のことわざで、「2匹の犬が一本の骨を争っている間に、3匹目の犬がやって来てその骨をかっさらう」という意味です。

このように英語のことわざでは、第三者が楽して利益を得ることを犬同士の争いにたとえています。

まとめ この記事のおさらい

・「漁夫の利」は「ぎょふのり」と読み、「当事者同士が争っている間に第三者が苦労もなく利益を得ること」という意味がある

・「漁夫の利」を「漁父の利」と書くのは誤り

・「漁夫の利」の語源は、中国の戦国策という故事だとされている

・「漁夫の利」はその意味から、ビジネスシーンでも非常によく使われる

・「漁夫の利」は「漁夫の利を得る」や「漁夫の利を占める」のように使うことも多い

・「漁夫の利」の類義語としては、「濡れ手で粟」や「犬兎の争い」といったものが挙げられる

・「漁夫の利」の対義語は「二兎追うものは一兎をも得ず」が適切

・「漁夫の利」の英語表現は、英語のことわざでもある「Two dogs fight for bone, and the third runs away with it.」が最もふさわしい