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ニュースやインターネットの記事などで「シナジー効果」という言葉を見聞きすることがあります。
日常会話ではなかなか使うことがありませんが、ビジネスシーン、特に経営戦略を語る場面においてはたびたび登場する言葉です。
この記事では、シナジー効果の意味や種類、シナジー効果を生み出したM&Aの事例などについて、シナジー効果という言葉をはじめて聞いた人にも分かりやすく解説していきます。
シナジー効果とは
シナジー効果とは、ビジネス同士が統合されたときに、それぞれが元々持っていた以上の価値が生み出されることです。シナジー効果の分かりやすい説明として「1+1=2」ではなく「3にも4にもなること」という表現がよく用いられます。
シナジー(synergy)とは相乗効果のことで、2つ以上のものが相互に作用しあって、個々に得られる結果を単純に足したもの以上の結果が得られることをいいます。
シナジーは元々、生理・生物学用語で筋肉の共同作用をさす語で、筋肉間の協調関係のことを「筋シナジー」というなど、生理学においてもシナジーという言葉は使われます。しかし一般的にビジネスの場でシナジー効果といった場合には、企業や部門の統合によって生まれる相乗効果のことを指します。
シナジー効果の代表的なものとしては、重複コストが削減できること、相互補完により売上アップが見込めること、企業としての価値が高まることなどがあります。シナジー効果の種類や期待できる効果については、後に詳しく説明をします。
シナジー効果の反対語は「アナジー効果」
「シナジー効果」は企業や部門の統合によって生まれる相乗効果のことで、1+1=2以上の結果が得られるWIN-WINの事象ですが、反対に統合することにより生じる相互マイナス効果のことは「アナジー効果」と呼ばれます。
アナジー効果を引き起こす要因としては、組織拡大による意思決定スピードの遅れや組織内調整の複雑化などがあげられます。
アナジーを回避する方法の1つにピュアカンパニー化があります。ピュアカンパニーとは特定の分野に限定した専業企業のことで、ピュアカンパニー化は会社や事業を分裂させるという、シナジー効果を狙った統合とは逆の方向の動きです。
このピュアカンパニー化はアナジーを解消する戦略として注目されています。
シナジー効果の種類
シナジーは多角的な効果を生みます。ここではシナジー効果4つに分けて考えてみます。もちろん効果はどれか1つということではなく複合的に発生するものです。
売上シナジー
売上シナジーは、統合により元々の企業や事業の合計よりも大きな売り上げを作り出すことです。「1+1=2 以上」を生み出すことにおいて最も分かりやすいシナジー効果といえます。
お互いの販売チャネルやツールを利用して消費者顧客の層を広げることによる売り上げアップなどが、売上シナジー効果のひとつです。
コストシナジー
コストシナジーは、統合によるスケールメリットを活用するなどして、売上対比のコストを削減することです。
スケールメリットを生かして大量発注することによる仕入単価の削減、物流を統一することによる物流にかかる人件費や燃料の削減、重複している営業エリアを整理することによる営業経費の削減などが見込めます。
他にも設備の共有によるメンテナンス等の費用削減、経理などの管理部門を1つにすることによる間接部門費の削減も期待できます。
また、M&Aにおいて繰越欠損金などの債務を受け継いである程度の節税効果を得ることもできます。
経営シナジー
経営シナジーはマネジメントシナジーともいい、経営のノウハウを共有することで生み出されるシナジー効果です。失敗体験、成功体験、経営手法などを共有して、お互いの強みを企業戦略の策定に取り入れるものです。
売上やコストのようにはっきりとした数字で表しにくいものではありますが、新たな経営戦略が効果的に働いていると判断ができれば、経営シナジー効果がうまく発揮されたといえるでしょう。
投資シナジー
投資シナジーは、投資や研究開発などの成果を使ってシナジー効果を生むことです。製品の生産や研究開発を共同で行い相互補完的な助け合いをすることで、業績の好転を目指します。
企業における代表的なシナジー効果の創出手段
企業がシナジー効果を生み出すには、他の企業や事業と統合、協働する必要があります。代表的な方法としては次の3つがあります。
M&A
M&Aとは、合併(Mergers) and 吸収(Acquisitions)の意味で、企業を買収、合併吸収してスケールメリットをはじめとする新たな価値を見出す手法です。
スケールメリットを利用したコスト削減、事業譲渡における繰越欠損金の特例利用による節税効果などコスト面のほか、売り上げアップやリスク分散など多くのメリットがあります。
業務提携
業務提携は、企業が共同で事業を行うことで、お互いの技術やノウハウを利用してビジネスを成長させることを目的としたものです。技術提携、生産提携、販売提携などを行うことで、シナジー効果が期待できます。
事業の多角化
主力事業とは別の分野に進出してシェアの獲得および拡大を目指すことで、売り上げや利益の向上を目指す手法です。
事業の多角化は「水平型多角化戦略」「垂直型多角化戦略」「集中型多角化戦略」「集計型多角化」に分類され、状況に合った戦略を立てていくことになります。
4つの多角化戦略について、次に簡単に説明をします。
水平型多角化は、同じ分野での事業を広げる多角化です。例えば自動車を作っているメーカーがバイクを生産するというようなものです。今までのノウハウを活用できるためリスクは少ないですが、既存と似たような顧客層をターゲットにするので、劇的な効果は期待できない場合も多くなっています。
垂直型多角化は、現事業の上流や下流に手を広げる多角化です。例えば飲食チェーンが野菜の生産を手掛けるなどがこれにあたります。
製造工程だけを手掛けていたものを原料の調達から販売まで担うようにするなど、製造やメーカーが実施しやすい戦略です。
集中型多角化は、既存商品との間で、技術と対象顧客の生産技術のいずれか、または両方で関連性が高いところへ行う多角化です。医薬品メーカーが化粧品の製造販売に進出するなどがあげられます。
集成型多角化は、既存の事業にないまったく新しい事業に進出するものです。ノウハウを持たない事業への進出となることからリスクが高いとされています。しかし、将来的にみれば、複数の事業を持っていることで業界に特化したリスクに強くなるメリットもあります。
シナジー効果を生み出したM&Aの成功事例
ここまでシナジー効果の基本を解説してきましたが、次に、実際にシナジー効果を生み出した代表的なM&Aの事例をいくつか紹介します。
楽天
日本のインターネットモール最大手の楽天は、M&Aを繰り返して事業を拡大しています。
2003年に「旅の窓口」を運営していたマイトリップ・ネットを完全子会社化、同年にDLJディレクトSFG証券を子会社化、2004年にはあおぞらカードを完全子会社化し、楽天グループ内でさまざまな事業を展開するに至っています。
三木谷社長は『経済圏を囲い込むことによって、「楽天市場」で買ってもらう量を増やしていく』という楽天経済圏の構想を打ち出しています。
このようにユーザーを囲い込んでシナジー効果を得るパターンは「グループシナジー」呼ばれるようになっています。
ソフトバンク
ソフトバンクは、M&Aによる高いシナジー効果を得た事例として取り上げられることが多くなっています。
2004年には日本テレコムを子会社化し固定通信事業に参入し、法人顧客の取り込みと国内通信事業の拡大に成功しています。
その後も2006年にはボーダフォン日本法人を買収するなど、M&Aを繰り返して日本を代表する通信事業の総合企業に成長しています。
また、2004年にはホークス球団を買収して新しい分野に参入し、顧客の層を広げています。
JT(日本たばこ産業)
JTは海外のたばこ事業に携わる企業の買収を繰り返し、現在ではたばこ産業の売り上げのうち約半分は海外における売上となっています。
1999年の米国のRJRナビスコ社のたばこ事業とのM&Aを皮切りに、2007年にはイギリス大手たばこ産業のギャラハーを買収しています。ギャラハー社買収によって、JTは世界第3位の地位を確立しました。