他部署の仕事に興味を持ったとき、あるいは今の部署でのキャリアに限界を感じたとき、「異動願いを出すべきかどうか」で悩む人は少なくありません。
ただ、異動願いは出し方やタイミングを間違えると、希望する部署への異動がむしろ遠のいてしまう可能性があります。上司との関係を損なわずに、希望をきちんと伝えるには準備が必要です。
この記事では、異動願いを出す前に確認しておきたい注意点、正しい出し方や書き方、提出するタイミングについて解説します。読み終えたころには、異動願いを出すための具体的な一歩が見えてくるはずです。
異動願いとは
異動願いとは、同一企業内の別の部署への配置転換を、従業員自身が希望して提出する書類です。
会社側からの指示による異動とは異なり、自らの意思で「この部署で働きたい」と申し出るものなので、書き方や伝え方には一定の配慮が求められます。
異動願いをだす前の注意点
今の部署から他の部署へ移りたいと考え、異動願いを作成する前に、確認しておきたいポイントが3つあります。会社の制度を理解しているか、異動を希望する理由に問題がないか、そして現在の仕事への向き合い方です。順番に見ていきましょう。
会社の人事制度を確認する
会社によっては、異動願いを提出するだけでなく、従業員自らが働く場所を選べる人事制度を設けている場合があります。代表的なものが「自己申告制度」「社内公募制度」「社内FA制度」の3つです。異動願いを出す前に、自社にどの制度があるかを人事部などに確認しておくと、動き方の見通しが立てやすくなります。
| 制度名 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自己申告制度 | 社員が異動希望を自己申告し、会社が判断して辞令を出す | 1990年代以降に広まった制度で、多くの企業が導入 |
| 社内公募制度 | 各部署が社内で独自に人材を募集する | 欠員時や新規プロジェクト立ち上げ時に多く、面接や試験が課される場合もある |
| 社内FA制度 | 実績や評価の高い社員にFA権を与え、希望部署からの声かけを待つ | プロ野球のFA制度を人事に応用したもので、導入企業はまだ限られる |
「自己申告制度」とは
社員自らが部署や勤務地などの異動希望を自己申告し、会社がその内容をもとに異動の可否を判断して辞令を出す制度です。
会社が異動を認めれば、希望の部署への異動がかないます。一方、本人にとっても会社にとってもマイナスと判断されれば、異動は実現しません。1990年以降、各企業が取り入れ始めた比較的新しい人事制度です。
「社内公募制度」とは
企業内の各部署が、社内向けに独自でその部署の人材を募集する制度です。
既存の部署に欠員が出たときや、新しいプロジェクトで人手が必要になったときに募集がかかるほか、新規部署の立ち上げに合わせて社内公募が行われることもあります。企画部や海外事業部といった人気の高い部署では、社内異動であっても面接や試験を設けているケースが見られます。
「社内FA制度」とは
プロ野球のフリーエージェント制度を、社内人事に応用した仕組みです。
主に、企業内で高い業績を上げてきた人や評価の高い人に対して、FAの権利が与えられます。FA権を取得した従業員はFA宣言をおこない、自分の希望する部署を含め、社内で自分を求めている部署からの声かけを待つ形です。日本では2016年にソニーがこの制度を採用し、「同一部署に3年以上在籍し、業績評価が高い人」にFA権を与えるとしています。
異動を希望する理由が自分勝手な事でないか
「人間関係が合わない」といった理由は、協調性がない、コミュニケーションに難があると受け取られがちです。
会社側としても、人間関係を理由とする異動願いに対しては「他の部署に移っても、うまくいかないのではないか」と判断するケースが多く、異動が実現しにくくなります。
さらに、人間関係を理由に異動を申し出ると、今いる部署の上司にとっては受け入れづらい話になります。結果として、上司との関係に溝ができてしまう恐れもあるでしょう。
異動するからといって今の仕事を投げやりにしていないか
他の部署へ異動したいからといって、今の部署での仕事を投げやりにしてはいけません。
仕事へのやる気のない態度は、上司や同僚からの評価を下げるだけでなく、部署全体のモチベーションにも影響します。「一緒に働きたくない人」というレッテルを貼られてしまう可能性もあります。
異動先の部署でも、もとの部署で高い業績を上げ、評判もよく、やる気のある人と一緒に働きたいと考えるのが自然です。まずは今いる部署で仕事にしっかり取り組み、業績や評価を積み上げていく必要があります。
以下では、他の人と同じように仕事をこなせない、職場の人間関係がうまくいかないという課題と、その改善方法を紹介しています。本記事と合わせて読むことで、異動に向けた準備がより整うでしょう。
異動の希望は粘り強く出す
異動願いを出しても、すぐに受理されるとは限りません。実際に異動がかなうまでには、思った以上の時間がかかるものです。
今いる部署での勤務期間が短いと、異動願い自体が受理されにくくなる傾向もあります。焦らず今の部署で実績を積みながら、会社には何度も希望を伝え続けることが大切です。
直属の上司や異動希望先の上司に対して「この部署で働きたい」というアピールを粘り強く続けることが、最終的に異動の実現へつながります。
異動願いの出し方・書き方
異動願いは、提出する相手やタイミングを誤ると、意図が正しく伝わらないことがあります。ここでは、誰にいつ出すべきか、そして実際の書き方をフォーマットと文例に分けて説明します。
誰に出すか、時期や時間などのタイミングについて
異動願いは、直属の上司に提出します。
上司との折り合いが悪い場合でも、上司よりさらに上の役職者や人事部に直接提出してしまうと、上司との溝が一段と深くなりかねません。必ず直属の上司に提出しましょう。
異動願いを出すタイミングは、遅くとも希望する異動時期の1か月前が目安です。ただし、会社の繁忙期や年度初め、年度末など、会社側にとって都合の悪いタイミングは避けたほうがよいでしょう。
提出する際は、勤務時間内に「少しお時間をいただけますか」と切り出し、一対一で話せる場を作ってもらうのが基本です。上司が忙しそうでタイミングがつかめないときは、メモを机に置いたり、メールで時間の調整を打診したりする方法もあります。
企業によっては、定期的な個人面談の場が設けられている場合もあります。そうした面談の機会に異動願いを切り出すのも一つの方法です。面談の前から「やりたい仕事がある」ということをそれとなく伝えておくと、上司も面談の場で話を受け止めやすくなります。
どのように書くのか、書き方の文例
会社に「異動願い」の決まったフォーマットがある場合は、それを使用します。フォーマットがない場合は、自分でA4サイズの異動願いを作成しましょう。
用紙の基本的な構成
用紙左側には、提出先の氏名を記載します。【〇〇 殿】もしくは【人事部長 殿】といった形です。
用紙右側には【提出日 令和 年 月 日】と【自分の氏名と捺印】を記入します。中央には大きめのフォントサイズで【異動願】と記載しましょう。
本文では、異動したい旨を「この度、以下の理由で異動を希望しております。何卒ご配慮いただけますように、お願い申し上げます」といった書き出しで伝えます。
そのあとに、所属部署(現在の所属部署、例【営業部】)、現在の部署の所属期間(例【○年○月○日から現在に至る】)、希望する異動先部署名(例【マーケティング部】)、異動を希望する時期(例【○月定期人事異動】)、異動を希望する理由の順に記載していきます。
異動理由の伝え方、どのような理由が適しているのか
異動理由として、「人間関係の悩み」や「パワハラを受けている」といった後ろ向きな内容は避けましょう。
「これまでの経験を生かして新しい仕事に挑戦したい」「自分自身のスキルアップを図り、会社の業績に貢献したい」など、前向きな理由が異動願いには適しています。
私は入社以来3年間、営業部での業務を経験させていただきました。実際に様々なお取引先様と接し、多くの営業目標を達成して参りました。これらを通じて、わが社の商品にどのようなニーズがあるのか、今後はどのような商品展開をしていけば良いのかについても、理解できるようになりました。
この貴重な3年間の経験を通じて、商品に対する知識が増えました。それにより、新しいことへ挑戦したいという気持ちと自信が生まれ、入社当初から希望していたマーケティング部門での業務に挑戦してみたいという思いに至りました。
営業部での経験を企画の業務面でも生かし、より多くのお客様のニーズに応え、適材適所に商品をお届けするための業務に日々励みたいと考えております。何卒、マーケティング部への異動をご検討いただけますようお願いいたします。
異動願いの書き方、出し方についてのおさらい
- 異動願いとは、様々な理由で同一企業内の別の部署への配置転換を自ら希望する際に提出する書類。
- 提出前に会社の人事制度を理解しておく。加えて、異動理由が自分本位になっていないかを確認する。提出後も仕事を投げやりにせず、希望は粘り強く伝え続けるのがポイント。
- 異動願いは直属の上司に提出する。勤務時間内に一対一で話せる場を作ってもらうか、個人面談の機会を活用するのも有効な手段。
- 提出は遅くても異動希望の1か月前までに。繁忙期や年度初め、年度末のタイミングは避ける。
- フォーマットがある場合はそれを使用し、ない場合は自分で作成する。最後に、異動理由が前向きな内容になっているかを必ず確認する。
異動が決まったあとの挨拶についても、事前に知っておくと安心です。以下の記事では実際に異動が始まった際の挨拶について解説していますので、本記事と合わせて読み、異動への準備を万全にしておきましょう。
