鶴の一声|意味や使い方、類語や英語表現などを解説

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ここでは「鶴の一声」ということわざについて解説いたします。「鶴の一声」は日本人にとってなじみ深い言葉ですが、善悪両方の意味があるため、使う際にはじゅうぶん注意しなければなりません。

そこで本項では「鶴の一声」の正しい意味と使い方、言葉の由来をはじめ類義語や対義語、英語表現にいたるまで多角的に解説いたします。言葉の意味を深く理解すれば誤用や誤解を防ぐことができます。ぜひ最後までお読みください。

「鶴の一声」の読み方・意味・使い方


「鶴の一声」は「つるのひとこえ」と読みます。意味は「意見が分かれる問題について権力者が絶対的な判断を下すこと」「権力者や有識者の発言が問題を解決に導くこと」「議論が紛糾する場を沈静化する権力者の一言」などをあらわします。

たとえば「社長の鶴の一声で事業の海外展開が決まった」というと、賛否両論の海外展開を社長の判断で決定したか、社長が他の反対を押し切って決断した、という意味になります。このように「鶴の一声」は権力者の有無を言わさぬ発言を意味します

「鶴の一声」の由来

「鶴の一声」の正確な由来は不明ですが、鶴は大きく美しい鳥として古くから秀麗な人物を象徴するたとえになってきました。また鶴の鳴き声はひときわ大きく響きわたることから、「雀の千声(せんこえ)、鶴の一声」ということわざも生まれています。

「雀の千声、鶴の一声」は「愚者の千言よりも賢者の一言が勝る」という意味の格言で、「鶴の一声」の由来になったと考えられています。

また「鶴の一声」はもともと「人の心にしみわたる美しい声」を意味する言葉でした。それが「雀の千声、鶴の一声」のように「取るに足らぬ人々の喧噪」と対比され、「下々の論議を一声でしずめる権力者の声」を意味するようになったと考えられます。

「鶴の一声」のビジネス上での使い方


「掃き溜めに鶴」といわれるように、「鶴」は「優れた者」を比喩的にあらわす言葉でもあります。「鶴の一声」も「愚者の異論百出で紛糾していた議論が、すぐれた者の意見ですみやかに収拾した」という意味で用いることができます。

ただし、ビジネス上での「鶴の一声」は、どちらかといえば「傲慢な権力者が他の賢明な意見を押し切って独断で決定すること」といった強権的な意味で使われることが多く、好意的な意味で使われることは少ないといえます。

したがって「鶴の一声」を良い意味で使う場合は、悪い意味に誤解されないようにじゅうぶん配慮しなければなりません。中途半端な表現でトラブルを招くことがないように言葉を選び、正しい意味やニュアンスをはっきり伝えるように心がけましょう。

「鶴の一声」の類義語と例文


「鶴の一声」と同じ意味で用いられる類義語としては、「天の声」「一存」「恣意(しい)」「胸三寸」「さじ加減」などがあげられます。まず「天の声」は 「ご神託」や「天のお告げ」の意味ですが、転じて「絶対的な権力者による逆らえない指示」をあらわします。

次に「一存」は「自分ひとりだけの考え」という意味。「恣意」は「思いつき」「気ままな考え」などを意味する言葉で、一般には接尾辞の「的」をつけた「恣意的」という言葉で「戦略や配慮がなく自分勝手で気ままな行動や考え」のことをあらわします。

「胸三寸」は「心の中」「胸中」のこと。最近は「舌先三寸」と混同した「胸先三寸(むなさきさんずん)」という言葉も定着しています。最後の「さじ加減」は「薬の調合や料理の味つけの加減」のこと。転じて「何かを行うときの配慮や方法」を意味します。

この中で「鶴の一声」に最も意味が近いのは「天の声」といえます。他の「一存」「恣意」「胸三寸」「さじ加減」には「権力者の意向で」というニュアンスがないため、「社長の一存で決まった」といった表現を用いて「鶴の一声」と同じ意味をあらわします。

このように「一存」や「胸三寸」は「上位者の意向」に限らないため、「私の一存では決められない」「このことは私の胸三寸に納めておきます」というように「自分自身の気持ちや考え」をあらわす意味でも使うことができます。

その意味では「一存」や「胸三寸」は使い方によっては「鶴の一声」の対義語にもなるといえるでしょう。

「天の声」の例文

わたくしが社長室にまいりまして、「天の声」を直接お聞きしたいと存じます。

「さじ加減」の例文

弊社では設備投資額から消耗品費まで、すべての支出は創業社長のさじ加減ひとつで決定いたします。

「鶴の一声」の対義語と例文

cf.
「鶴の一声」と逆の意味を持つ対義語としては、前述した「雀の千声、鶴の一声」の「雀の千声」があります。意味は「口数が多いばかりで取るに足らない愚か者の意見」をあらわします。

他のことわざでは、「空き樽(だる)は音が高い」をあげることができます。意味は「空の樽をたたくと高くひびく音がすること」。転じて「思慮分別を欠く人ほど、つまらないことに騒ぎ立てたり、ことを荒立てたりすること」を意味するたとえです。

「雀の千声」の例文

われわれがここでどうあがいても、しょせんは雀の千声。山の上に鎮座まします方々の耳にはとうてい届きません。

「鶴の一声」の英語表現

秀逸
「鶴の一声」の英語表現としては「word from the top」「voice from on high」などをあげることができます。「word」は「言葉」、「voice」は「声」。「high」と「top」はともに「地位が上の人」を意味します。

また「word from the top」の「top」を「president(社長・大統領)」「the throne(国王)」「ex cathedra(ラテン語の『権力』)」などに置き換えることも可能。相手の地位や肩書きによって言葉を使いわけましょう。

ほかにも「最終決定の意見」を意味する「final word」、「彼が法律だ」という意味の「His word is law」「He is the law」なども「鶴の一声」と同じ意味をあらわす英語表現になります。

またニュアンスを少し柔らかくして、「相手に自分の意見を聞かせる」という意味で「make one’s voice heard」というフレーズもあります。

余談になりますが、「鶴」は英語で「crane」といいます。この「crane」は重機の「クレーン」の語源で、形が鶴に似ていることから名付けられました。

「鶴の一声」を「A call(cry) of a crane」と直訳しても通じませんが、「雀の千声、鶴の一声」は「Better one cry of a crane than a thousand chirps from sparrows.」と訳されるのが一般的です。

まとめ

  • 「鶴の一声」は「意見が分かれる問題について権力者が絶対的な判断を下すこと」「議論が紛糾する場を沈静化する権力者の一言」などをあらわす言葉です。
  • ビジネス上での「鶴の一声」は「傲慢な権力者が他の賢明な意見を押し切って独断で決定すること」という意味で使われることが多い言葉です。
  • 「鶴の一声」の類義語には「天の声」「一存」「恣意(しい)」「胸三寸」などがあります。
  • 「鶴の一声」の対義語には「雀の千声」「空き樽は音が高い」があります。
  • 「鶴の一声」の英語表現には「word from the top」「voice from on high」などがあります。