商社とは|仕事内容や総合商社と専門商社の違いは?メリットやデメリット・平均年収などを解説

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商社は、給料が高い、グローバルに活躍できるなどの理由から、いつの時代も就活生に非常に人気のある業界です。しかし「商社」という名前からどんな仕事をするところなのか想像がつきにくく、業務内容をよく理解できていない人も多いでしょう。
この記事では、商社の仕事内容や総合商社と専門商社の違いなどの基本的なことから、商社に就職するメリットとデメリット、商社で働く「商社マン」の給料は?など、気になる情報を解説します。

商社とは


商社は「商(あきない)」の「会社」という名前から受け取れるように、品物の売買を商売とした企業です。商品を仕入れて必要としているところに売るという卸売りの事業から始まった商社ですが、現在は業務も多様化しています。

商社の仕事内容

商社の仕事内容は、大きく「トレーディング」と「事業投資」に分けられます。

トレーディングはひとことで言うと取引の仲介です。主に海外との取引で輸出入代行や貿易事務を担い、売りたい人と買いたい人の間に立って需要と供給をマッチングさせるビジネスです。商社は「コミッション(口銭):売買の仲介をした手数料」と「マージン(利ざや):売値と買値の差額によって生じる利益」で収益をあげています。

商社はこのトレーディングを事業の柱としていましたが、インターネットの普及などで時代の経過とともに仲介を通さずとも取引が可能になってきました。そんな中、商社は自分たちを介することで得られる付加価値を提供できるか否かが重要になっています。

そして、トレーディング事業のノウハウを生かして商社の主要事業となったのが事業投資です。事業投資とは企業に対して「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営資源を投資して、リターンを得るビジネスです。
事業投資というと投資銀行によるものを思い浮かべる人が多いと思いますが、投資銀行による事業投資と商社の事業投資は少し違います。

投資銀行は買収先の選定や資金調達などを外側から支援するものです。一方で商社は資金だけではなく、人材、情報、経営ノウハウを投入し企業を育てていきます。自社の社員を出向させることも多々あります。

投資銀行と商社の事業投資には、利益の得かたにも違いがあります。投資銀行はアドバイスの成功報酬を受け取るのがおもな収益です。一方で商社は企業を成長させることにより、投資比率に応じた利益を得ます。

商社とメーカーの違い

商社もメーカーも商品を売っていることから、業務内容の違いがよくわからないという人もいるでしょう。商社とメーカーの違いを簡潔に説明すると、モノを調達して販売しているのが商社、モノを製造しているのがメーカーです。

商社は自社で商品を製造することはありません。モノを製造するのに必要な原材料の調達や販路の開拓などでメーカーをサポートする立場です。

メーカーは商品の製造がおもな役割りで、商品企画、研究開発、製造などの部門があります。メーカーの中には材料の仕入れから販売まで自社で行っている企業もあります。

商社は「総合商社」と「専門商社」の2種類がある


商社には総合商社と専門商社があります。総合商社と専門商社の違いをひとことでいうと、扱う品目の違いです。特定の分野を専門に扱うのが専門商社、幅広く扱うのが総合商社です。

総合商社とは

総合商社とは「総合」という名の通り幅広い分野を取り扱う商社のことです。総合商社の取り扱う商品やサービスは、「カップラーメンからミサイルまで」と表現されるくらいに多岐にわたるものです。多種多様な商材を扱っていることのメリットはリスクが分散できることです。何らかの事情で特定の分やが大きく落ち込んでも他の分野でカバーすることができるので、一気に会社の経営が傾くことがありません。

代表的な総合商社には三菱商事、伊藤忠商事などがあります。一般的に「三菱商事」「伊藤忠商事」「丸紅」「三井物産」「住友商事」の5社を五大商社、「豊田通商」と「双日」を加えた7社を七大商社と呼んでいます。

商社の主なビジネスはトレーディングと事業投資ですが、特に近年、総合商社は事業投資に重きを置くようになっています。トレーディングも行っていますが、トレーディング部分は子会社を作って行っている企業も多くなっています。例えば、食品を専門に扱う専門商社の三菱食品は、総合商社である三菱商事の子会社です。

専門商社とは

専門商社とは、総合商社とは逆に特定の分野を専門に扱っている商社です。総合商社の事業内容は事業投資が大きな要素を占めていますが、専門商社はトレーディング事業をメインとしています。

特定の分野を専門としている専門商社は、扱っている商材の知識や情報に精通していて独自のノウハウを持っています。そのためや顧客との太いパイプがあるのも特徴です。半面、扱ってる分野が大きなダメージを受けるような事態になったときには、企業活動に大きな影響が出てしまうという弱みもあります。

専門商社は大きく3つに分けることができます。

▼総合商社系専門商社
総合商社の子会社として、総合商社では扱わないニッチな商品を扱っています。代表的な総合商社系専門商社には、伊藤忠商事と丸紅から分離・統合して設立した「伊藤忠丸紅鉄鋼」、三菱商事と双日から分離・統合して設立した「メタルワン」などがあります。

▼メーカー系専門商社
特定のメーカーがバックにつき、そのメーカーの商品を売ることをメイン事業とした専門商社です。代表的なメーカー系専門商社には、JFEグループの「JFE商事」、花王グループの「花王カスタマーマーケティング」、日産自動車グループの「日産トレーディング」などがあります。

▼独立系専門商社
独立系専門商社は単独で事業を行っている専門商社です。扱う商品の自由度が高く、独自のコネクションを活かした顧客との繫がりを持っていることが特徴です。代表的な独立系専門商社としては、鉄鋼、食品、石油等を扱う「阪和興業」、乳原料、チーズ、食肉加工品などを扱う「ラクト・ジャパン」などがあります。

主な商社の企業紹介


この項目では、日本を代表する主な商社である「七大商社」をご紹介します。

各商社の社名だけではなく、どのようなことを行っているのかも含めてピックアップしました。

三菱商事
三菱商事は明治時代の実業家である岩崎弥太郎氏によって創設された「三菱財閥」の流れを組んでいる三菱グループの一企業です。しっかりとした基盤を持っており、総合商社のトップとして位置付けられています。

「地球環境・インフラ事業」「新産業金融事業」「エネルギー事業」「金属」「機械」「化学品」「生活産業」という七分野を手掛けているのが大きな特徴です。

中でも資源では石炭やLNGなどの「エネルギー事業」 、非資源は「生活産業」と「機械」が主力とされています。

伊藤忠商事
伊藤忠商事は1858年に伊藤忠兵衛が始めた麻布の販売を由来にしていることもあり、繊維分野が大きな強みです。「繊維」「機械」「金属」「エネルギー・化学品」「食料」「情報・金融」「住生活」を展開しています。

近江商人の商売哲学である「三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)」を大切にしていることでも有名です。

住友商事
住友商事は銅山経営で栄えた住友財閥をその源流とする企業で、戦後に商事会社として発足しました。他の商社と比べて発足が遅い為、かつては「遅れてきた商社」と呼ばれていたそうです。

住友商事の主要事業は「金属事業」「輸送機・建機」「環境・産業インフラ」「メディア・生活関連」「資源・化学品」です。住友の事業精神は「信用を重んじ確実を旨とする」で、信用を大事にしながら事業を展開しています。

なお住友商事は「ジュピターテレコム」というメディア企業を設立しており、「J:COM」というケーブルテレビを配信していることでも有名です。

丸紅
丸紅は元々は伊藤忠商事と同じ会社でしたが、戦後に分割されて丸紅として独立しました。

丸紅の主力事業は「生活産業」「エネルギー・金属」「電力・プラント」「素材」「輸送機」です。

丸紅は「電気」分野に強みがあり、中でも「IPP(Independent Power Producer)」では総合商社の中でもトップクラスの実績があります。
「IPP」とは「独立系発電事業」のことで、平たくいうと「電気の卸売」です。

近年では銅事業や鉄鉱山プロジェクト、石油・ガス事業で大幅減損を計上しており、ニュースで見たことがあるという人も多いかもしれません。

三井物産
三井物産は日本初の総合商社で、様々な商品を扱う「総合商社」という企業形態の原型を作りました。

設立は明治期と歴史があり、「金属」「機械・インフラ」「化学品」「エネルギー」「生活産業」「ICTなどの次世代・機能推進」の6事業を展開しています。

鉄鉱石や原油・ガスなどの資源分野が強みである反面、資源価格の変動による影響が企業の収益に大きいというのが特徴です。

双日
双日は総合商社の中でも自動車分野に強く、特にディーラーとしての事業を中心に国外への自動車輸入業に力を入れている点が特徴です。

双日は「エネルギー」「社会」「医療」「機械」の分野でインフラ事業に関わっており、多数のインフラ事業を手がけているのが強みだといえます。

もちろん取り扱っているのはインフラ事業だけではありません。国内外における工業団地や分譲マンションなどの開発や運営といった土地開発にも積極的に取り組んでいます。

国内では保育所運営などの総合的な生活サポート事業も行っていることでも有名です。

豊田通商
豊田通商は自動車メーカーとして著名なトヨタグループの総合商社です。

その傘下にトヨタ自動車があることから、豊田通商は自動車部品や自動車の輸送に特化しているという特徴があります。このことからも、トヨタグループがグループ全体として自動車関連事業に強みがあるといえるでしょう。

また豊田通商は、海外の中でも特にアフリカへ注力して事業展開しています。アフリカでのインフラ事業やヘルスケアなど、多数の事業に取り組んでいることでも有名です。

とりわけ医薬品製造・卸産業や医療事業など、医療分野を中心に事業展開しています。

商社に就職するメリット・デメリット


就職先として人気の高い商社ですが、商社に就職することのメリットやデメリットにはどんなことが考えられるのでしょうか。それぞれについて考えています。

メリット

▼スケールの大きいビジネスを扱える
商社で働くことの一番の醍醐味は、何億、何兆というスケールの大きいビジネスに携われることです。他の業種ではなかなか味わうことのできない独特のやりがいや達成感を味わうことができるのではないでしょうか。

▼グローバルな舞台で活躍できる
商社は国内外をおいて広く取引を行っています。海外の取引先と商談を行うことも珍しくないですし、海外に拠点を持っている商社もあります。グローバルな活躍を目指している人にとって、商社は格好の舞台といえるでしょう。

▼給料が高い
就職先として商社の人気が高いのは、給料が高いことも要因と考えられます。総合商社は平均年収が1000万円を超えるところもあり、他の業種と比較してかなり高い年収が期待できます。もちろんその分、能力や結果も高いものを求められます。

デメリット

▼転勤が多い
商社は国内外に複数の拠点を持っていますので、特に営業は異動や転勤が多くなります。国内外を飛び回って仕事ができるのはメリットともいえますが、人生設計が組み立てにくいと感じる人もいるようです。

▼仕事量が多い
商社営業は日々多くの商談をこなすことになります。資料作成などの商談準備、報告書の作成なども含めるとかなりの仕事量になります。海外と取引をしている場合には、商談の時間帯を先方に合わせた時間になることもあり、勤務時間も不規則になりがちです。

総合商社は扱う商材も幅広く、世の中のトレンド経済の動きなど勉強することも山積みで、プライベートの時間がなかなか取りづらい環境でしょう。

▼人づきあいに苦労することも
商社は人数が多いためいろいろな人がいます。出身校で派閥のようなものがあったり、接待の機会も多く、社内外ともに人間関係に気を使うことが多い業界といえます。仕事が多忙な中で人間関係でも気苦労が絶えない環境に、多きなストレスを感じる人も多いでしょう。

商社で働く「商社マン」とは


商社で働く人、特に総合職として営業などの仕事をする人は「商社マン」と呼ばれることがあります。自分で「私は商社マンです」と自己紹介する人は少ないでしょうが、「商社マンに憧れています」「友達の旦那さんが商社マンなんです」のように、俗に職業名として通っています。

商社マンになるには

商社マンになるには、商社の求人に応募して総合職として採用されなくてはなりません。商社は就職先として非常に人気があり、狭き門といわれています。

まず、商社に総合職で採用されるには四大卒以上の学歴が必要です。特に総合商社には東京大学、慶応大学、早稲田大学などいわゆる名門大学が集まります。商社を志望する学生はOB・OGを訪問を繰り返したりインターンシップに参加したりして、積極的な情報収集が欠かせません。

資質の面から考えると、コミュニケーション能力に長け、チャレンジ精神を持った人、精神的にも体力的にもタフな人が商社マンに向いています。

商社マンの給料・年収

商社マンは給料が高いことで知られています。2018年度の有価証券報告書によると、五大商社の平均年収は次の通りです。

三 菱 商 事:約 1,608万円
伊藤忠商事 :約 1,521万円
丸    紅:約 1,389万円
三 井 物 産:約 1,430万円
住 友 商 事:約 1,340万円

このように、商社の平均年収は会社員全体の平均年収と比較してずば抜けて高くなっています。初任給で見てみると、三菱商事2021年度新卒募集要項では、大卒総合職の初任給は255,000円で、2020年度の大卒男性の初任給の平均212,800円(令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況より)と比べてみても高いことが分かります。

商社と商社マンについてのまとめ

  • 商社の仕事内容は、大きく「トレーディング」と「事業投資」に分けられます。
  • 商社は「総合商社」と「専門商社」の2種類があり、総合商社は幅広い商材を、専門商社は特定の分野の商材を扱っています。
  • 「三菱商事」「伊藤忠商事」「丸紅」「三井物産」「住友商事」の5社で五大商社、「豊田通商」と「双日」を加えた7社で七大商社と呼ばれます。
  • 商社で働くことには、スケールの大きいビジネスを扱える、グローバルな舞台で活躍できる、給料が高いなどのメリットがありますが、転勤が多いこと、仕事量が多いこと、人づきあいで気苦労があることなどがデメリットです。
  • 商社は給料が高いことで知られています。五大商社の平均年収は1,000万円台の半ばに及びます。