ポスドクとは|仕事内容・ポスドク問題・国による支援制度などを解説

※本サイトはプロモーションを含んでいます。

ポスドクとは、大学院で修士課程を修了した後に、教授、助教など正規のポストではなく任期付きの職に就いている人のことを指します。ポスドクという言葉を初めて知った人もいるかもしれませんが、ポスドクのあり方や将来性などは「ポスドク問題」と呼んでメディアでもたびたび取り上げられており、国も支援策を打ち出しています。
この記事では、ポスドクとはなんなのか、ポスドク問題と国の支援について、ポスドクになる方法や将来の方向性などを解説します。

ポスドクとは

「ポスドク」とは、ポストドクターの略で、大学院で修士課程を修了した後に、教授、助教など正規のポストではなく任期付きの職に就いている研究員を指します。「博士研究員」とも呼ばれます。

博士号を取得した後は、助教→講師→准教授→教授とキャリアアップを目指すのが一般的な道のりです。または企業に採用されて研究職として働く道を選ぶ人もいるでしょう。しかし、博士号を取得したらすぐに助教として採用されるかというと、そうではありません。おおよその人は「ポスドク」と呼ばれる任期付きの研究員として働くことになります。

欧米では、ポスドクは正規の研究職に就くまでのキャリアパスの過程として定着しています。博士号を取得した後に平均して5年程度、ポスドクとして経験を積み、大学の正規職員となったり、企業の研究職についてたりします。ポスドクはいわば正規の研究職に就く前のトレーニング期間として認知されているのです。

日本でのポスドクは、欧米のそれとは少し違います。「博士号まで取ったのに正規の職に就けない」「非正規雇用で不安定な立場」「正規のポストに就けないポスドクが高年齢化している」となど後ろ向きにとらえられることが多いのです。このような状況は「ポスドク問題」として語られ、政府も対策に乗り出してします。

ポスドクの仕事内容

ポスドクの仕事は研究をして結果を論文にまとめることです。研究内容は、所属する研究室の教授が決めたテーマに従い、プロジェクトの一員として研究を行うことがほとんどです。自分のやりたいテーマを研究するということはなかなか難しいでしょう。

「ポスドク」「助教」「特任助教」の違い

教授になるまでのステップして、ポスドクの次の位置づけが「助教」です。助教には「特認助教」というポジションもあります。この3つの違いを見ていきましょう。

<ポスドク>
博士号を取得した後の任期付きの研究職です。仕事内容は主に教授の決めたテーマに沿った研究、論文の執筆です。大学に所属をしても、ポスドクが学生に指導をしたり授業を行うことはほぼありません。

<助教>
教授を目指す「助教→講師→准教授→教授」というキャリアパスの入り口のポストにあたります。かつては博士課程を修了した後は助教になるのが一般的だったようですが、現在ではポスドクの道を通ることが多くなっています。

勘違いをしている人もいるかもしれませんが、「助教」は「助教授」ではありません。かつては教授の下のポストとして「助教授」があったのですが、現在は「準教授」という呼び名に変わっています。

助教の主な仕事は、研究と授業のサポートです。自ら講義や実習を受け持つこともあります。ポスドクは研究が主な仕事になりますから、助教のほうが幅広い業務を求められるということになります。

<特任助教>
特任助教は任期付きの助教のことです。特定の研究プロジェクトの要員として雇用されます。仕事内容は助教とほぼ変わりありませんが、任期のある非正規という立場です。助教とポスドクの中間のような存在ともいえるかもしれません。

特定のプロジェクトに採用されるので、仕事内容は学生の指導というよりは研究に重きを置いたものとなります。教員という立場ではありますが、プロジェクトが終わればポストがなくなる不安定さがあります。

「ポスドク問題」とは

欧米でのポスドクは、キャリアパスの一環として確立され、職業として認知されていますが、日本においてのポスドクは後ろ向きな意味でとらえられることが多くなっています。

博士課程を修了してポスドクになった後、助教として採用されることもなく、企業に研究職として就職もできず、ポスドクの契約を更新しながら年齢を重ねていく研究員が多く存在しはじめ、「ポスドク問題」といわれています。

ポスドク問題の発端は1990年代にさかのぼります。1990年代から国は大学院重点化を進め、各大学院の定員が大幅に拡大されました。それに伴い、博士課程に進み博士号を取得する人も急激に増加しました。しかし、博士号取得者の主な勤務先となる大学や研究機関のポストは増えることがなく、企業の研究職採用も活性化するという訳ではなかったのです。
ポスドクは博士課程を修了した人がとりあえず就くポジションのようになり、上のポストがあかないので、ポスドクであり続ける人が増えていることが問題視されています。

2015年の文部科学省の調査「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査」によると、ポスドクの人数は約16,000人で、男性が7割を締め、平均年齢は36.3歳です。
ポスドクの前職はポスドクだった人が3割以上を締め、ポスドクの契約を何回も繰り返している人が多いことがわかります。また、2015年度にポスドクだった人の2016年4月1日の仕事は、ポスドクが約7割を締めています。

国による就職支援「卓越研究員制度」

ポスドク問題は国も対策に乗り出しています。2016年からは「卓越研究員制度」が始まりました。卓越研究員制度とは、国が研究費を支援し研究員雇用を促進するというものです。ポスドクの中から卓越研究員候補を選出し、大学や研究機関、企業とのマッチングを図り、研究費が受け入れ機関に支給されます。

2020年1月には、国が新たな若手研究員支援策を発表しました。大きな柱は次の3つです。
1.博士課程の大学院生の処遇改善
2.ポスドク問題の解消
3.研究環境の拡充

「ポスドク問題の解消」としては、次の3つが打ち出されています。
・企業への就職者数で1000人増を目標に
・企業に長期有給インターンシップを推進
・40歳未満の若手大学教員を3割以上に

ポスドク問題は日本の優秀な研究者が日本を見切って海外留学を目指す人材流出の問題もはらんでおり、この施策はその防止の意味も含んでいると思われます。

ポスドクになるには

最終的には「教授」を目指している人が多い

博士課程を取得した人が「ポスドク」を最終目標のポジションとして考えているということはまずないでしょう。最終的には大学の教授、もしくは企業の研究職を目指していて、それまでの一時的なポジションとしてポスドクの仕事をしている人がほとんどといってよいでしょう。

①大学院で博士号を取得する

ポスドクになるには、まず大学院の博士課程を修了して博士号を所得しなければなりません。ポスドクから次のステップに進むにしても、博士号を取得していることは基本です。

②ポスドクの公募に応募、もしくは指導教員から紹介してもらう

ポスドクは、教授や指導教員からの紹介ではじめた人が多いようです。もしくは公募を見つけて応募することになります。JREC-IN(国立研究開発法人科学技術振興協会が運営する研究職に特化した求人サイト)などを利用して探すのもよいでしょう。

ポスドクの給料・年収

ポスドクの年収は200万円台後半~300万円台が主流で、他の職業と比較して決して高いとはいえないものとなっています。非正規で大学や研究機関の研究費の中から雇用されているので、ポスドクというポジションのまま給料アップを図るのはなかなか難しいかもしれません。

ポスドクの勤務体系と休日

ポスドクの主な勤務場所は大学や研究機関で、日中8時間程度の勤務時間で土日祝が休日になる場合がほとんどです。
ただ、研究の進捗によっては残業が長引いたり、休日も研究テーマについて調べたりすることが必要になってくることも考えられます。

ポスドクの将来性

ポスドクという働き方については「ポスドク問題」として取り上げられ、明るい話を聞くことはなかなかありません。しかしここ数年で国が支援策を打ち出しており、将来的には待遇が改善されたり研究機関や企業の研究職として採用される道が今よりも開けることが考えられます。
企業の動きとしては、2015年にヤフー株式会社が博士やポスドク採用枠を新設しています。また、製薬会社でも研究者のニーズが高まっています。

ポスドクがおもに勤める場所

ポスドクが主に勤務する場所は、大学や研究機関の研究室です。プロジェクトの一員として研究と論文の執筆に携わります。

ポスドクについてのまとめ

  • ポスドクとは、大学院で修士課程を修了した後に、教授、助教など正規のポストではなく任期付きの職に就いている研究員を指します。
  • ポスドクは大学や研究機関の研究室に所属して研究と論文執筆を行うのが主な仕事です。
  • 大学院の定員増加により博士号取得者が増え、助教など正規の職に長年就けない状況は「ポスドク問題」として取り上げられています。
  • 国はポスドク問題の対応策として2016年から「卓越研究員制度」を実施しています。
  • 2020年には企業の採用増などを目指す若手研究員支援策が発表されました。