地方公務員になるには|仕事内容・試験の種類・概要・年収等を解説

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近年、公務員は人気の職業ランキングの上位に入り続けています。公務員は大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」があり、それぞれの中にもさまざまな役割の仕事があります。

この記事では「地方公務員」について解説します。ひとくちに地方公務員といっても、役所の事務職、警察官や消防官、保育士などさまざまな職業があります。この記事で、地方公務員の種類や活躍の場、地方公務員になるための試験、年収などをわかりやすく説明していきます。

地方公務員とは

地方公務員とは、地方公共団体で仕事をする職員のことです。地方公務員は特別職と一般職に分かれています。

特別職は都道府県知事、副知事、市町村長、副市長村長などの職に就く人です。特別職の地方公務員には、法律に特別の定がある場合を除いて、地方公務員法の適用を受けません。一般的に「地方公務員」と言った場合は、このような特別職ではなく、公務員法が適用される一般職の地方公務員のことを指している場合がほとんどです。

地方公務員の仕事内容

地方公務員は地方公共団体で働く職員ですが、勤務場所は多岐に渡ります。

都道府県庁や市区町村の役所に属して事務職として働く人もいれば、土木や建築などの技術職として働く人もいます。警察官、消防官も公務員です。また、公立学校の事務や福祉施設なども職場のひとつです。

「地方公務員」と「国家公務員」の違い

地方公務員と国家公務員は役割が違います。

国家公務員は国に勤務する公務員で、日本全体や国際社会を視野に入れた企画の立案、執行に関わるスケールの大きな仕事に携わります。主な勤務先としては、中央省庁や外局、国会、裁判所などの国家機関があげられます。

地方公務員は地方自治体(都道府県や市町村など)に勤務する公務員です。地域の住民に密着した業務に携わります。主な勤務先は県庁や市役所などをはじめとする公共団体です。

国家公務員になるためには国家公務員試験に合格する必要があり、地方公務員になるためには、それぞれの自治体の地方公務員試験を受けなければなりません。

地方公務員のおもな種類

地方公務員の職種としては大きく4つに分けられます。

事務系

事務系の職種の代表的なものは、都道府県庁や市区町村役所での事務職です。行政事務とも呼ばれ、都道府県庁や市区町村役所、その出先機関に事務職として勤務します。

自治体によって呼び名が異なりますが、基本的に地方公務員試験は「初級」「中級」「上級」に分かれています。

実際の業務では、初級は定型的な事務を担当することが多く、上級は新規事業に企画・立案、他部署との連携など比較的スケールの大きい仕事に関わることが多くなります。国との折衝に関わるなど、責任の重い仕事を任されることもあるでしょう。

事務系の仕事内容は配属される部署によって違ってきます。普段かかわりが深いところで言うと、市民課の窓口業務を担当する人や、観光課で地域のPRや観光客を増やす施策を考えたりする仕事があります。役所内の組織構成もそれぞれです。

行政課、市民課などの基本的な部署はどこの自治体にもありますが、弘前市のりんご課、松戸市のすぐやる課など、その市区町村独自の部署に配属されることもあるでしょう。

その他の事務系の仕事としては、学校事務や警察事務があります。

学校事務は公立の小学校、中学校、高等学校の事務室に配属され、会計や備品管理、行事の準備など、学内の事務を担当します。警察事務は、警察署内の事務を担当します。予算編成、給与計算、広報などが主な仕事です。

技術系

技術系の仕事には「土木」「建築」「電気」「機械」「化学」「農業・農学」などがあります。事務系と同じように、基本的に「初級」「中級」「上級」 に試験が分かれていて、上級は統括や企画、他部署との連携など幅広い仕事を担当するようになります。

■土木
土木職は土木課、道路課、河川課、公園課、水道局などに配属されます。道路や河川のメンテナンスをはじめとし、地域の環境整備やまちづくりに関わる業務を担当します。地域の景観や災害対策にも関係する仕事です。

■建築
建築職は建築課や営繕課、都市整備局などに配属されます。主な仕事には公共施設等の建設の計画、設計、管理があります。建設地の調査から設計、業者の選定、管理、メンテナンスなどを行います。

■電気
電気職は自治体の施設の管理や営繕などを担当します。公共施設の営繕には、電気職のほかに建設職や機械職も携わります。役割としては、建築職は建物本体を、機械職は空調や厨房などの設備を、電気職が照明やコンセント、配線などの電気設備を担当します。

公共施設には上下水道施設やゴミ処理場のように特殊な設備を有し、24時間体制で稼働している施設もあります。そのため電気職は夜勤が発生する場合もあります。

■農業・農学
農業・農学職は農林水産部や農林水産研究センーなどに配属されます。地域の農業推進や地元の農産物のPRなどを担当します。研究センターや試験場で試験研究を行うような仕事もあります。

公安系

公安系の仕事には、警察官や消防官が該当します。地方公務員の警察官は、各都道府県内の警察署、交番や派出所、運転免許センターなどに勤務します。消防官は各市町村内の消防署等が勤務先です。

資格免許職

資格免許職は自治体が発行した資格や免許を必要とする職業です。主なものには、「保健師」「看護師」「臨床検査技師」「栄養士」「幼稚園教諭」「保育士」などがあります。

■幼稚園教諭
幼稚園教諭として働くには幼稚園教諭免許を取得した後、各自治体の幼稚園教諭採用試験に合格する必要があります。主な勤務先は公立の幼稚園です。

■看護師
地方公務員の看護師になるには、国家資格を取得した後に各自治体の看護師採用試験に合格しなければなりません。勤務先は公立病院、保健所や保健センターのほか、公立の幼稚園や保育所に派遣されるケースもあります。

■臨床検査技師
臨床検査技師は、生体検査や検体検査を行う専門職です。国家資格の臨床検査技師試験の合格した後、各自治体や機関の採用試験に合格する必要があります。主な勤務先は、公立の病院や保健所、研究所などです。

地方公務員になるには

地方公務員試験に合格する

地方公務員になるには、地方公務員試験に合格し採用される必要があります。地方公務員試験は各自治体が独自で行っていて試験内容それぞれ異なりますが、多くの自治体で、呼び名は少し違っても「上級(大卒程度)」「中級(短大卒程度)」「初級(高校卒程度)」と分けて行っています。

この「~卒程度」というのは実際の学歴を問うものではなく、その程度のレベルが求められるということで、ほとんどの自治体の受験資格に学歴を問うものはありません。

次に「初級」「中級」「上級」にいて、東京都を例に説明します。

①初級(高卒程度)

東京都では「Ⅲ類」の名称で実施されます。18歳~21歳を対象としたもので、出題の程度は高校卒業程度です。初級試験合格者は、一般的に役所の窓口業務などの定型的な仕事を担当することが多いようです。

平成30年度のⅢ類試験の倍率は8.0倍、中でも事務職は12.8倍と高い倍率となりました。試験問題は高卒程度ということでさほど難しいものではありませんが、受験可能な年齢が21歳までですので、大学を卒業した人は実質的に受験することはできません。

②中級(短大卒程度)

東京都では「Ⅱ類」の名称で実施されます。20歳~25歳を対象としたもので、試験区分(職種)によっては必要な資格・免許を持っている人を対象としています。出題の程度は短大卒業程度です。

平成30年度は司書と栄養士の試験が実施され、平成30年度のⅡ類試験の倍率は全体で6.6倍、司書は18.5倍と高い倍率でした。
試験問題は上級と比べるとやや易しいといえ、上級と併願で受験する人も多くなっています。

③上級(大卒程度)

東京都では「Ⅰ類A」「Ⅰ類B」の名称で実施されます。Ⅰ類Aは24歳~31歳を対象としていて、出題の程度は大学院修了程度(教養は大卒程度)です。Ⅰ類Bは22歳~29歳を対象としていて、出題の程度は大卒程度です。

平成30年度の倍率は、Ⅰ類Aが6.2倍、Ⅰ類Bは5.2倍でした。倍率の高いものとしては、Ⅰ類B・栄養士が12.2倍、Ⅰ類B・畜産が11.5倍でした。

上級試験は国家公務員の一般職と同程度のレベルといわれていて、予備校などに通って対策する人も珍しくありません。しっかりとした試験対策が必要といえるでしょう。
上級試験合格者は将来的に政策の企画立案に関わるような立場に立つ幹部候補といえます。各部署を移動しながら経験と知識を積み、昇進していくのがモデルです。

地方公務員の年収

地方公務員の給料は給与表によって定められています。そこに各種手当を加えたものが給料となります。
東京都を例にとると、平成31年度の行政職の初任給と給与モデルは次の通りです。

■初任給
Ⅰ類A:240,240円
Ⅰ類B:220,440円
Ⅱ 類:188,520円
Ⅲ 類:174,720円

■例月給与モデル
25歳係員「給与月給 184,100円」「その他手当 36,820円」「例月月給 220,920円」
35歳課長代理「給与月給 307,300円」「その他手当 61,460円」「例月月給 368,760円」
45歳課長「給与月給 415,900円」「その他手当 190,700円」「例月月給 606,600円」
50歳部長「給与月給 508,900円」「その他手当 254,060円」「例月月給 762,960円」

年収モデルではこれに期末手当と勤勉手当が加わり、25歳係員で「3,667,000円」、45歳課長で「10,206,000円」となっています。

地方公務員の勤務体系と休日

地方公務員の勤務条件は、各自治体の条例で定められています。ほとんどの自治体で「1日7時間45分、週38時間45分勤務」を勤務時間と設定しています。休日は基本的に土日祝です。もちろん警察官や消防士をはじめとし、交代制で勤務する職種もあります。事務職でも部署によって仕事量が異なり、残業の多い部署に配属される覚悟も必要です。

地方公務員の将来性

地方公務員は公の機関に勤務しているため、経済情勢や経営状況が変わることによる急な倒産やリストラにあうことはありません。民間企業に比べると不安定な要素は少ないといってよいでしょう。しかし、近年は公務員の数を縮小する動きもあります。とはいえ、地方公務員は住みやすい地域を創り維持するために欠かせない存在であり、地方公務員の仕事が全くなくなることはまずありません。

これからますます社会の動きが速くなっていく中、地方公務員も高い志を持ち、自ら学び行動する姿勢が求められるでしょう。

まとめ 地方公務員についてのおさらい

  • 地方公務員とは、地方公共団体で仕事をする職員のことです。
  • 地方公務員になるためには、それぞれの自治体の地方公務員試験を受けなければなりません。
  • 地方公務員の種類は、大きく「事務系」(高卒程度)」「中級(短大卒程度)」「上級(大卒程度)」別に実施されています。
  • 地方公務員は基本的に1日7時間45分で土日祝が休日ですが、職種によっては交代制勤務になったり残業の多い部署もあります。