先見の明とは|意味と読み方・使い方、英語表現や類語についても解説

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「先見の明」という慣用句があります。

意味をご存じの方も多いと思いますが、漢字をまちがいやすい言葉でもあります。

ここではビジネスシーンでも使用頻度の高い「先見の明」に焦点を当てて解説していきます。
皆さんも意味や漢字を勘違いしていないかどうか、一度おさらいをしてみてください。

先見の明の読み方・正しい意味・使い方

先見の明は「せんけんのめい」と読みます。

「せんけんのみょう」や「さきみのめい」とは読みません。

先見の明の意味

「先見の明」は将来おこり得ることを予測できる能力を意味します。

この「明」は単に「あかるさ」を意味するのではなく、「賢明」や「聡明」と同じように「かしこさ」を意味する言葉です。

先見の名の使い方

「先見の明」は、先を見通せる優秀な素質や才能を意味する言葉です。

そのため肯定的なニュアンスで使われるのが一般的です。
具体的な用例としては、以下のような表現があります。

「彼にはたぐいまれな先見の明がある。」
「彼女は先見の明に優れている。」
「彼は先見の明に長けて(たけて)いる。」
「彼女は先見の明に秀でている。」
「彼は先見の明を持っている。」

「先見の目」は間違い

先にも説明したように、「先見の明」は、先を見通す能力を意味します。

そのため漢字では、つい「先見の目」と書いてしまいがちですが、そのような言葉はありません。
同じように「先見の妙」「先賢の明」もよくあるまちがいです。

日頃からスマホやPCの文字変換にばかり頼っていると、漢字を忘れてしまいがちになります。
手書きで文章を書きながら漢字に不安を感じたときは、面倒でもネットや辞書で確認することをおすすめします。

先見の明の語源

先見の明の語源は、映画やシミュレーションゲームでおなじみの三国志の時代にさかのぼります。

西暦200年前後。中国の後漢に曹操(そうそう)という武将がいました。
曹操はのちの魏王朝の基礎を築いた英傑でしたが、三国志では狡猾で残虐なヒールでもあります。

曹操は多くの有能な部下に恵まれながらも他人を信頼することができず、あるとき楊修(ようしゅう)という部下の才能を警戒するあまり、無実の罪で処刑してしまいます。

しかもそれだけでは飽き足らず、曹操はかねてから疑念を抱いていた楊修の父の楊彪(ようひょう)に、息子を処刑したことを直接知らせて反応を確かめようとしました。

そのとき楊彪はひどく落胆した様子で曹操に向き合い、「私に金日磾(きんじつてい)のような先見の明がなかったことが恥ずかしい。老いた親牛が子牛を舐めて慈しんだ日々を懐かしむように、老いた親として死んだ子を懐かしむことしかできない自分が恥ずかしい」と嘆き悔やんだと伝えられています。

ここでいう金日磾とは前漢時代の政治家で、宮中に勤める2人の子息の悪行を見かねて殺してしまった人物です。

楊彪は愛する息子を主君に処刑されるという最悪の事態を防げなかった無念さを曹操に伝えるために、金日磾の故事を引き合いに出したのですが、彼の息子の楊修は金日磾の不出来な息子たちとちがって自他共に認めた英明な人物でしたから、楊彪と金日磾ではそもそも比較になりません。

それでも楊彪は父親として息子の命を守れなかったことを悔やんで、「私に金日磾のような先見の明がなかったことが恥ずかしい」と言ったのです。
このエピソードは曹操の残虐さと、楊彪の謙虚で愛情深い人柄を伝える逸話として後世に広く伝わり、「先見の明」という故事成語の由来となりました。

先見の明のビジネス上での使い方

ビジネスシーンで「先見の明」といえば、経済や市場の動向をいち早く察知したり、トレンドやニーズを正確に予測したりすることのできる優れた洞察力を意味します。
たとえばApple社を創設したスープティーブ・ジョブズは、パソコンのマッキントッシュや携帯音楽プレーヤーのiPod、スマホのiPhoneといったメガヒット商品を次々と生み出し、音楽業界や情報化社会に革命をもたらしたカリスマ的存在でした。

2011年10月にジョブズが亡くなったとき、 Apple社が発表した以下の追悼文は「先見の明」の使い方を示す模範的な例文といえるでしょう。

Apple has lost a visionary and creative genius, and the world has lost an amazing human being.
(Appleは先見の明と創造力をあわせ持った天才を失い、世界はすばらしい人間を失った。)

先見の明の類義語

「先見の明」の類義語としては、未来のことを見通すことができるという意味の「見通しがきく」や、遠い先のことまで深く考えることを意味する「遠謀深慮」などがあります。

ほかにも「洞察力」や「慧眼(けいがん)」「達見(たっけん)」なども似たような意味になりますが、それらは他人の本心や物事の本質などを見抜く力の意味が強く、未来を予見する力としての意味合いはやや弱いという点で、「先見の明」とは少しちがいます。

「見通しがきく」の例文

祖父はずいぶんと見通しがきく人で、田舎が過疎化する前に田畑を売り払い、今は都心のマンションで優雅に老後を過ごしている。

「遠謀深慮」の例文

彼には迅速な決断力と実行力はあるが、遠謀深慮に欠けているのが玉に瑕だ。

先見の明の対義語

「先見の明」の対義語としては、対応が遅れることを意味する「後手に回る」、資料が浅いことを意味する「浅慮(せんりょ)」などがあります。

「後手に回る」の例文

政府の景気浮揚対策は、やることなすこと付け焼き刃的で、すべてが後手に回っている。

「浅慮」の例文

いくら急いでいたからといって、信号無視を重ねたあげくに事故を起こしたのは浅慮に過ぎる。

先見の明の英語表現

「先見の明がある」を意味する英語表現としては「foresight」、「vision」「visionary」などがあります。

「vision」は基本的には「視力」の意味ですが、「先見の明」の意味もあります。

「visionary」は「vision」よりさらに意味が強く、「とても実現できそうにない夢のような計画」という意味がある一方で、「あり得ないほど素晴らしい先見性の持ち主」という意味もあります。

先述のスティーブ・ジョブズの死に寄せたApple社のコメントで「visionary」が使われているのも、ジョブズに対する最大限の敬意のあらわれです。

「foresight」の例文

If I had more foresight and assets, I might have been a President of the United States.
(私に先見の明と財産がもっとあったら、アメリカ大統領にだってなれただろう。)

「vision」の例文

He has great vision and talent in his work, and is consummate professional at all times.
職業人としての彼は素晴らしい先見性と才能を持ち、常に完璧なプロフェッショナルです。

まとめ

  • 「先見の明」は、将来おこり得ることを予測できる能力をいいます。
  • 「先見の目」や「先見の妙」は誤字になります。
  • 「先見の明」は三国時代の政治家、楊彪の言葉に由来します。