宵の明星とは|読み方・意味・使い方・「明けの明星」との違い・英語表現までを解説

※本サイトはプロモーションを含んでいます。

ここでは「宵の明星」について解説いたします。

日没前後の西空にひときわ明るく光る「宵の明星」は、天気さえ良ければ大都会でも目視できる数少ない星のひとつ。毎日をあわただしく過ごす中で、夕暮れの空にポツンと輝く明星に気づいてしみじみと見上げた経験のある方も多いのではないでしょうか。

ここでは言葉としての「宵の明星」の読み方や意味、語源などを中心に解説いたします。また「宵の明星」と「明けの明星」の違いについてもくわしく紹介していますので、どうぞ最後までお読みください。

「宵の明星」の読み方・意味・使い方

MBA
「宵の明星」は「よいのみょうじょう」と読みます。意味としては金星のことですが、「宵の」とあるように、金星が日没前後の時間帯に西空に輝いて見えることをあらわす言葉です。

「宵の明星」の「宵」とは、日が暮れて間もない夕暮れ時を意味します。古くは、夜を3つに区分した呼び名のひとつで、日暮れから夜中にかけての時間帯をいいます。「明星」は「明るく光り輝く星」の意味ですが、一般には金星の意味で用いられます。

「宵の明星」の語源

「明星」が意味する金星は、太陽系で地球の内側を公転する数少ない星のひとつ。公転周期は225日です。軌道が太陽に近いため地球からは深夜に見ることはできません。昼間も日光がまぶしすぎて肉眼で見ることは不可能です。

金星が見える時間帯は明け方の日の出前後か、夕方の日没前後のわずかな時間に限られます。そこで明け方に見える金星を「明けの明星」、夕刻に見える金星を「宵の明星」と呼んで区別しています。

古代中国では「宵の明星」を「長庚(ちょうこう)」または「太白(たいはく)」と呼び、「明けの明星」のことは「啓明(けいめい)」と呼びました。それらが「金星」と呼ばれるようになったのは、五行説(ごぎょうせつ)に由来します。

五行説(ごぎょうせつ)とは、古代中国で生まれた自然哲学の理論。万物は「火・水・木・金・土」の5元素で形成されるという理論です。五行説では「金」にあたる星に「太白」を配しました。そこから「金星」という名前が定着したといわれています。

一方、九星術などの呪術的な民間信仰では、金星(太白)は「太白神」や「金神(こんじん)」、大将軍などの軍事をつかさどる星神の象徴とされました。

五行説はやがて日本にも伝わり、陰陽道として独自の発展を遂げました。陰陽道は呪術や占術を中心とした学問思想で、五行説や九星術といった中国伝来の民間信仰や天文学なども広く取り入れられています。

陰陽道では金星の金気(ごんき)は刃物に通じるとされ、金星の星神である太白神、金神(こんじん)、大将軍(たいしょうぐん)は「荒ぶる神」として恐れられました。そのため暦や包囲で金星に配された時節や包囲は「万事に凶」とされました。

一方で、大将軍は鎌倉時代から江戸時代まで武家政権のトップをあらわす偉大な肩書きにもなりました。「明星」もまた日本の仏教では「日天」「月天」「明星天」の三天を守護神とされ、現在でもあがめています。

このように金星は古くから信仰の対象としてあがめられた星であり、日本や中国のみならず世界中で多くの伝承を残しています。

FXチャートにおける「宵の明星」の意味

「宵の明星」という言葉が「夕刻に見える金星」以外の意味で用いられることはほとんどありません。数少ない例外としては、株やFXなどの投資用語で、「明けの明星」とともに相場の動向を示す意味で使われることがあります。

株やFXの相場における「宵の明星」は売り圧力が高まっているサインのひとつ。投資相場の動向を示すグラフをチャートといいます。「宵の明星」は相場の変化を示すチャートのパターンのひとつで、上昇相場が天井を打って下落に転じた状況をいいます。

「宵の明星」は株やFXの買い注文が続かず、売り注文に押された場合にあらわれます。チャートでは下落を示すシグナルとされています。逆に「明けの明星」は相場が暴落した後でやや値を戻し、その後急反発する状況をいいます。

「宵の明星」と「明けの明星」の違い

鏡花水月
「宵の明星」と「明けの明星」の違いは、金星が見える方角と時間帯にあります。見える時期も「宵の明星」と「明けの明星」とでは違いがあります。

地球から見える金星の軌道は太陽を中心として東西方向に扁平な楕円を描いています。金星の公転周期は225日。つまり金星は太陽の周りを225日かけて一周しています。

金星が地球から見えるのは、金星の軌道上の位置が太陽の東か西にあるときに限られます。それ以外の時期は太陽の裏か太陽の中を通過するため、肉眼で見ることはできません。

金星の位置が地球から見て太陽の東側に回り込んでくると、太陽光が日没で弱まる夕暮れ時に金星が西の空に見えるようになります。これが「宵の明星」です。

逆に金星が太陽の西側に回り込んでくると、金星が日の出よりも早く東の空に昇るようになります。これが「明けの明星」です。

宵の明星は最も明るい時で1等星の150倍の明るさがあると言われています。太陽と月以外では最も明るく、しかも夕暮れ時に他の星に先立って見えはじめるため、「一番星」という呼び名でも親しまれています。

ちなみに「宵の明星」と「明けの明星」は金星の公転軌道上の位置が正反対になるので、同じ日の朝夕に「宵の明星」と「明けの明星」を見ることはできません。また地球と金星の公転周期が違うので、見える時期も周期的に変動します。

直近では「宵の明星」は2020年6月ごろまで見ることができます。次は2021年7月から2021年12月ごろまで見られることになります。一方、「明けの明星」は2020年7月ごろから2021年2月にかけて見ることができます。

「宵の明星」の英語表現

論旨
英語で「宵の明星」は「Hesper」「Hesperus」「the evening star」などと表現します。「Hesper」と「Hesperus」はギリシア語やラテン語に由来する言葉で、「宵の明星」と「金星」の意味があります。

「宵」の意味をはっきり伝える場合は「the evening star」になります。ただし、この名称には格式ばったニュアンスがあるため、一般には「金星」意味する「Venus」や「Vesper」が使われます。

ちなみに「the evening star」の代わりに「the evening Venus」や「Evening Vesper」などというのはまちがいです。「evening」を使う場合は「Venus in the evening sky」というのが良いでしょう。

一方、「明けの明星」は英語で「Daystar」「Lucifer」「the morning star」などと呼ばれます。こちらも「Venus」や「Vesper」が一般的ですが、「明けの明星」には「morning sky」という口語表現もあります。

まとめ

「宵の明星」は金星が日没前後の時間帯に西空に輝いて見えることをあらわす言葉です。
株やFXの投資用語では「宵の明星」はチャートに現れる下落のサインのひとつとされています。
「宵の明星」と「明けの明星」は同じ金星でも見える方角や時間帯・時期が違います。
「宵の明星」は英語で「Hesper」「Hesperus」「the evening star」などと表現します。