中小企業診断士になるには|試験の難易度や仕事内容などを解説

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中小企業診断士は取得したい資格ランキングの上位に入る人気の資格です。

この記事では、中小企業診断士とはどんな仕事なのか、どんな人が中小企業診断士に向いているのか、活躍の場所や年収はどれくらいかなどの、中小企業診断士を目指そうと考えている人には気になる情報を解説します。

さらに、中小企業診断士試験の受験資格や試験内容といった試験についての情報も紹介していきます。

中小企業診断士とは


中小企業診断士は、経営コンサルタントを認定する日本で唯一の国家資格です。

中小企業診断士の資格はビジネスパーソンからも人気が高く、2016年に日本経済新聞社と日経HRがビジネスパーソンを対象に行った新たに取得したい資格の調査では、中小企業診断士が第1位となりました。
また、資格の学校TACの2021年度人気資格ランキングにおいても、中小企業診断士は第5位となっています。

中小企業診断士の仕事内容

中小企業診断士の仕事は、ひとことでいえば経営コンサルタントです。企業が抱えている課題や問題点を分析し、経営の改善に向けて助言、支援を行います。

財務、会計、法律、経済の動き、情報システム、人材の活用など、幅広い知識を必要とする仕事です。

名称からも分かる通り、中小企業診断士がコンサルティングに関わるのは「中小企業」です。こう聞くと活動範囲が狭いように思うかも知れませんが、日本の企業のうち99.7%は中小企業が占めています。中小企業診断士は多くの日本の企業にとって必要とされている存在といえるでしょう。

中小企業診断士になるには

千載一遇
中小企業診断士は独占業務のない「名称独占資格」です。
資格がなければ経営コンサルタントの仕事をしてはいけないということはないのですが、中小企業診断士を名乗って働くには資格の取得が必要です。

中小企業診断士試験の合格が必須

中小企業診断士試験に合格した後に、15日以上の実務補習を修了するか、診断実務に従事する、または第1次試験合格後に決められた養成課程を修了し、経済産業大臣登録をすることで、中小企業診断士となることができます。

中小企業診断士試験は年1回、全国の主要都市で実施されます。受験資格は特に設定されておらず、年齢、学歴に関わらずだれでも受験することができます。10代~70代まで、幅広い年代の人が受験しています。

試験は第1次試験と第2次試験に分かれ、第1次試験は多肢選択式による筆記試験7科目が、2日をかけて実施されます。

<第1次試験 試験科目>
・経済学・経済政策
・財務・会計
・企業経営理論
・運営管理(オペレーション・マネジメント)
・経営法務
・経営情報システム
・中小企業経営・中小企業政策

第1次試験は科目合格の制度があり、合格した科目は3年間、試験が免除されます。また、ほかの資格を保有していることにより科目が免除される制度もあります。

第2次試験は第1次試験合格者に対して実施されます。試験内容は筆記と口述で、筆記試験は中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅰ~Ⅳの4科目、口述試験は筆記試験の合格者に対して行われるもので、試験時間は約10分間です。

中小企業診断士の資格には5年の有効期限があり、登録更新にあたっては、「専門知識補充要件」「実務要件」を満たす必要があります。

(1)専門知識補充要件
以下のいずれかを合計して5回以上の実績を有すること。
1)理論政策更新(理論政策)研修を修了したこと。
2)論文審査に合格したこと。
3)理論政策更新(理論政策)研修講師を務め指導したこと。

(2)実務要件
以下のいずれかを合計して30日以上行ったこと。
1)診断助言業務等に従事したこと。
2)実務補習を受講したこと。
3)実習、実務補習を指導したこと。

第1次試験の科目に合格すると履歴書に書ける

中小企業庁は2021年3月、次の発表をしました。

中小企業庁としましては、上記7つの科目の一部でも科目合格することは、その当該科目の知識を修得していると評価されるべきと考えております。
そのため、今後、履歴書の資格欄などに記載する場合には、第一次試験合格者(科目合格者含む)の方は、下記のように記載下さい。

記載例
第一次試験一部科目合格者:▲▲年度中小企業支援科目合格者(科目名)
第一次試験全科目合格者 :■■年度中小企業診断修得者

今までは合格科目だけを履歴書等に書くのは相応しくありませんでしたが、この発表により、1科目だけでも合格していれば、資格欄に記載することができるようになりました。

中小企業診断士試験の難易度や必要な勉強時間

2018年度から2020年度の中小企業診断士試験の結果は次の通りでした。

第1次試験

編集
受験者数 合格者数 合格率
2018年 13,773 3,236 23.5%
2019年 14,691 4,444 30.2%
2020年 11,785 5,005 42.5%
※受験者数は欠席した科目がひとつもない人の人数
第2次試験結果

編集
受験者数 合格者数 合格率
2018年 4,812 905 18.8%
2019年 5,954 1,088 18.3%
2020年 6,388 1,174 18.4%
※受験者数は欠席した科目がひとつもない人の人数

参考:中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移 

第2次試験までの合格率は、2020年度が7.8%、2019年度が5.5%、2018年度が4.4%となります。

試験科目が多く、第1次、第2次を突破しなければ合格できないことも含め合わせると、中小企業診断士試験は難関の部類に入ると考えてよいでしょう。

中小企業診断士試験に合格するまでに必要な勉強時間はおよそ1,000時間程度といわれています。仮に1年間を勉強にあてたとすると、1週間に約20時間、1日に3時間弱の時間が必要ということになります。

ビジネスパーソンに人気の資格ということもあり、仕事をしながら試験勉強に取り組む人も多いと思います。通勤時間や休日を利用して効率的に勉強する仕組みを考える必要があるでしょう。

また、中小企業診断士は科目合格の制度があり、1度合格した科目は3年間試験が免除されます。一発合格を目指すのではなく、2~3年をかけて合格するつもりで取り組むのも、作戦のひとつではないでしょうか。

中小企業診断士に向いている人


中小企業診断士試験を受けようと考えたときに、はたして自分は中小企業診断士としてやっていく適性があるのかどうか気になる人もいるでしょう。
中小企業診断士に向いているのはどんな人なのかを考えていきましょう。

コミュニケーション能力に長けている人
中小企業診断士の仕事の中心はコンサルタント業務です。相手から話を引き出す話力、相手の求めていることを理解する力が必要です。
企業の経営者や重役と話をすることも多い仕事ですから、どの年代、どの立場の人ともコミュニケーションがとれることが重要でしょう。

論理的思考ができる人
コンサルタントには論理的思考が必要です。感情やその場だけの情報で判断するのではなく、ものごとを多面的かつ俯瞰的に見て論理的に判断していく力が、中小企業診断士には必須といえるでしょう。

人の役に立つのが好きな人
中小企業診断士の仕事は企業の経営を支える経営コンサルタントです。主役は企業とその経営者で、自分は黒子役になります。自分が動いたことで企業が大いに発展しても、表立って称賛される立場ではありません。
自分の活躍を世に知らしめるよりも、人が幸せになったことに喜びを感じるというような、人の役に立つのが好きな性格の人が向いているといえるでしょう。

勉強を怠らない人
まず、中小企業診断士の試験に合格するには1,000時間程度の勉強時間が必要といわれています。これは毎日3時間程度の勉強時間を確保してもまるまる1年かかる計算です。モチベーションを高く持ち続けて勉強に励むことができなければ合格は難しいといえます。

さらに、中小企業診断士は世の中の情勢を常に知っておくことが大事ですから、資格を取った後も常にアンテナを張って勉強を続けなければなりません。努力と勉強を怠らない人でないと務まらないでしょう。

中小企業診断士の年収


中小企業診断士の年収は、500万円~800万円がボリュームゾーンといわれ、中には1,000万円を超える人もいるようです。企業に所属して働くか独立してやっているかなど雇用形態によっても変わってくるでしょう。

中小企業診断士の勤務体系と休日


中小企業診断士は、企業に所属しては働く人のほか、独立して仕事をしている人も多い職業です。

企業に勤務している場合は会社の規定に沿うことになりますので、土日祝が休みで9:00~18:00くらいの勤務時間のところが多いでしょう。

独立している場合の勤務時間は自分の裁量で決められますが、打ち合わせはクライアントの希望に合わせる形になります。信頼と実績が物をいいますから、実際の活動時間以外にも調べ事や勉強などに時間を割かれることが多いでしょう。

中小企業診断士の将来性

渾身
職業の将来性を考える場合、AIに取って代わられる可能性があるかどうかというのが一つの視点になりますが、コンサルタント業務は多角的な判断が必要な仕事ですから、中小企業診断士の仕事がAIの影響を受けることは少ないと考えてよいでしょう。

また、ビジネスパーソンが所得したい資格の上位に入っていることからも、市場での需要が高いことが見てとれます。

中小企業診断士は独占業務がない反面、活動の幅を広く持てるという特徴があります。企業に所属して自社の経営に手腕を発揮する、独立開業する、司法書士などほかの資格保持者と協力し合って仕事を広げる、またセミナー開催、コラムや書籍の執筆などさまざまな可能性があります。

世界情勢が不安定な中、経営に悩みを抱える中小企業も少なくないでしょう。中小企業診断士のニーズは今後もなくなることはないのではないでしょうか。

中小企業診断士がおもに勤める場所


中小企業診断士の働き方は、大きく「企業内診断士」と「独立診断士」に分けられます。
企業内診断士は、企業に所属して自社の経営診断に関わります。独立診断士は企業とコンサルタント契約をして、その企業の経営コンサルタントとして活躍します。

独立する場合は顧客の獲得が課題となります。個人で仕事を探してくるというよりは、中小企業診断協会に登録して斡旋を受ける、中小企業を支援する機関や商工団体などから紹介を受けるというケースが多いようです。

まとめ この記事のおさらい

  • 中小企業診断士は経営コンサルタントを認定する日本で唯一の国家資格で、中小企業診断士の経営支援を行う仕事です。
  • 中小企業診断士になるには中小企業診断士試験に合格することが必要です。その後に実務補習を修了し経済産業大臣登録することで、中小企業診断士として働くことができます。
  • 中小企業診断士試験は、学歴や年齢に関係なく誰でも受験することができます。
  • 試験は、筆記7科目の第1次試験と、筆記と口述の第2次試験があり、最終合格率は4~7%の難関です。
  • 中小企業診断士には、コミュニケーン力や論理的思考力が高いく、人の役に立ちたいと思う気持ちのある人が向いています。
  • 中小企業診断士の働き方は大きくわけて、企業内で自社の経営診断をする企業内診断士と、他社の経営コンサルティングをする独立診断士があります。