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この記事では、「潜水士」の仕事内容やなり方、勤務場所、年収、勤務体系、将来性などについて考察します。
「潜水士」と聞いて、どんな職業を思い浮かべますか?スキューバーダイビングのインストラクターをイメージする人もいるかもしれません。
しかし、「潜水士」とスキューバーダイビングのインストラクターは、資格や仕事内容などに大きな違いがあります。
この記事を通して、「潜水士」に関する知識を深め、仕事選びの参考にしてください。
潜水士とは
「潜水士」とは、「水中での工事や海難事故などに関するノウハウを身につけた潜水のスペシャリスト」のことです。
潜水士の仕事内容
潜水士の仕事は、「水中でなんらかの業務をおこなう」ことです。
当然、働く場所によって業務内容はさまざまですが、共通点は、「長時間水中で作業すること」と言えるでしょう。
海や川、ダムなどに潜り、水中の状態を調査したり、魚介類の採取や船舶の修理、海難救助など、仕事内容は多岐に渡ります。
また、作業内容によって、「ヘルメット潜水」「フーカー潜水」「スクーバ潜水」の3つの潜水様式があります。
ヘルメット潜水は、船上からホースで空気を送る方法で、浮力や体重を活かした作業や寒冷地での長時間の作業に適した方法です。
フーカー潜水は、ヘルメットではなくマスクを使用し、ヘルメット潜水の装備を軽量化したもので、近年では多く使われている方法です。
スクーバ潜水は、スポーツダイビングに近い装備で、動きやすいのが特徴ですが、空気ボンベから空気を供給するので長時間の作業には適していません。
潜水士の仕事は、決して楽なものではありません。空気漏れやロープなどに絡んだり常に危険と背中合わせと言えるでしょう。
また、減圧症など潜水士特有の病気も存在します。
潜水士の仕事をおこなうためには、安全管理だけでなく、健康面での管理も大切になります。
潜水士になるには
装備をつけて海中に潜るレジャーと言えば、スキューバーダイビングがあります。講習を受ければ、だれでもライセンスは取得できますが、これはあくまでも民間の資格であり、業務として潜るものではありません。
潜水を業務としておこなう場合には、「潜水士」という厚生労働省が認定する国家資格が必要になります。
つまり、潜水士になるには、「潜水士免許試験」に合格しなければなりません。
かつては、インストラクターの資格があれば、ダイビングショップでの講習をサポートする業務はできましたが、現在は非常勤でも日本国内での業務としてダイビングを行なう方すべてに潜水士免許が必要となっています。
「潜水士免許試験」に合格する
潜水士の試験と言うと、スキューバーダイビングの講習のように、実技と学科を学ぶ必要があると思うかもしれませんが、「潜水士免許試験」に実技はなく、学科だけの筆記試験でおこなわれます。
つまり、水中に入った経験がなくても資格は取得できるのです。
受験資格に制限はなく、本人か確認できる証明書があれば、だれでも受験することは可能です。
試験内容は、「潜水業務」「送気、潜降および浮上」「高気圧障害」「関係法令」の4つがあり、午前中に「潜水業務」と「送気、潜降および浮上」、午後に「高気圧障害」と「関係法令」が2時間ずつおこなわれます。
主に水中での圧力や浮力、潮流などの知識や潜水環境の危険性などに関する問題が出題されます。特に圧力に関する計算問題が多くなっています。
送気装置の仕組みや点検方法、潜降や浮上の方法、それに関する危険性などの問題が出題されます。
高気圧下でおこる減圧症や浮上時でおきる肺の過膨張障害等などの知識や障害の防ぎ方、事故時の対応方法などの問題が出題されます。また、人体の組織や神経系統、循環器系統などの問題もあります。
「労働安全衛生法令」と「高気圧作業安全衛生規則」の中から、主に潜水作業に関する問題が出題されます。
配点は、「潜水業務」10問(30点)、「送気、潜降および浮上」10問(25点)、「高気圧障害」10問(25点)、「関係法令」10問(30点)で、五択式のマークシート形式になっています。
合格の基準は、全ての科目で60%以上の得点です。たとえ合計得点が70%以上あっても1つでも40%以下の科目があれば不合格になります。
潜水士試験の合格率は80%前後で、難易度は高くはありません。真面目に勉強していれば、だれでもクリアできるレベルと言えるでしょう。
仕事をしていくためには潜水技術が必要
潜水士免許試験は学科だけですので、極端に言えば、泳げなくても潜水士の資格はとれます。
しかし、潜水を仕事にするためには、潜水技術は不可欠です。働く場所によって、装備や必要な知識は異なりますが、最低限水中で自由に動ける技術は身に着けておきたいですね。
水中という特殊な環境での作業は、常にリスクはつきものです。知識があってもいざという時に体が反応しなければ、重大な事故につながりかねません。
実際に、潜水士として仕事ができるようになるためには、現場での経験を積み潜水技術を磨くことが大切です。
潜水士がおもに勤める場所
潜水士が主に勤める場所としては、「海洋関連会社」「建設会社」「水産会社」「海洋調査をおこなう研究機関」などがあります。
海洋関連会社は、海洋土木やダム工事、海底ケーブルの敷設工事など、水中作業に関するさまざまな業務をおこなっています。比較的浅い場所での小規模工事や大規模な湾岸工事など、会社によって事業内容は異なります。
水中工事を請け負っている建設会社の中には、自社で潜水士を雇っているところもありますが、水中工事を請け負う会社はそれほど多くはありません。
実際の現場では、潜水作業は海洋関連会社に外注しているケースが多いようです。
水産会社では、魚介類の採取などの他に、養殖の生け簀に入って魚の生育状態をチェックするなどの仕事を潜水士がおこなっています。
海洋調査の内容には、海中の流れや温度、海水の成分、生物、海底の地形や地質、地震や磁気などさまざまなものがあります。
大学の研究機関や民間の調査機関などで、それぞれのテーマに合わせた調査がおこなわれています。潜水士の資格を持った研究員も数多く活躍しています。
さらに、海上自衛隊や海上保安庁などでは、海難救助をおこなう潜水士は不可欠です。海上保安庁の通称である「海猿」は、映画のタイトルにもなり、過酷な潜水士の仕事が描かれていました。
しかし、海上保安庁で潜水士になれるのは、ごくわずかのエリートだけです。非常に「狭き門」と言えるでしょう。
スキューバーダイビングのインストラクターも潜水士の資格が活かせる仕事です。「PADI」などの民間機関でインストラクターの資格を取得して、ダイビングショップやダイビングスクールで働きます。常勤ではなく、他の仕事をしながら非常勤でインストラクターをしている人も少なくありません。
潜水士の年収
潜水士の年収は、大きく「民間企業」「海上自衛隊や海上保安庁」「フリーランス」の3つの業態で考えられます。
民間企業で働く潜水士の年収は、企業の規定によって異なりますが、一般的には400万円~600万円が平均年収と言われています。
大手の水産会社の場合、平均年収が800万円以上の会社もあり、海洋開発関連では、900万円以上の平均年収になっている企業も存在します。
海上自衛隊員の給料は、「佐官級」「尉官級」「下級士官」など細かく階級ごとに決められています。また、さまざまな手当がつくので、一般的な公務員より給料は高く、潜水士ではさらに特殊勤務手当も加算されます。
年収も階級によって、330万円~1000万円以上と幅広く、平均では640万円になっています。
海上保安庁の場合も、給料は1級~9級の階級によって決めら、海上自衛隊員と同様に年収の差も大きくなります。基本的には海上自衛隊と同じような平均年収になります。
フリーランスの場合は、多くの場合は日当で計算されます。平均的な日当は2万5千円ぐらいだそうです。月平均20日で年間の稼働日が250日とすると、年収は625万円になります。
当然、日当は潜水士のレベルによって異なります。有能な潜水士の中には、800万円から1000万円以上の年収を稼ぎだす人もいます。
しかし、年間に250日稼働できるとは限りません。定期的に仕事を受注するには、技術や知識を磨き、さらに必要な資格や語学などを身につけることも必要です。
潜水士の勤務体系と休日
潜水士の勤務体系や休日に関しても、勤務する会社や組織によって異なります。
一般の企業の場合は、会社の勤務時間に準じます。潜水士の場合は、基本的には現場仕事なので、一度会社に出勤から現場に行くことが多くなります。一般的には、7時間半から8時間の勤務になりますが、月20時間から40時間の時間外労働もあります。
また、日本国内だけでなく海外での作業もあり、企業によっては長期間出張になる仕事もめずらしくありません。
基本的に日曜祭日は休みですが、現場の状況次第では休みを返上して働くこともあるでしょう。特に、研究機関などでは長期の滞在もよくあることですから、カレンダー通りの休みはなかなか取れないのが実情です。
海上自衛隊や海上保安庁の場合は、さらに厳しくなります。事故や災害はいつおこるか限りません。そのため、潜水士は24時間365日いつでも出動できるよう、シフト制でスタンバイしています。
事故や災害はおきた場合、終息するまで現場を離れることは不可能です。長時間作業もあり、かなりハードな仕事になることも少なくありません。
基本的に船が出港している間は勤務時間になりますから、出航中は土日も祝日もありません。船が停泊している期間は土日が休みで、就航中に取れなかった休みはまとめて取得できます。
仕事は大変ですが、まとまった休みが多く取れるのは魅力と言えるでしょう。
潜水士の将来性
日本は海に囲まれた海洋立国です。港湾や漁港などの海洋インフラの整備は、国家的な課題で、さらに海洋エネルギーや資源などの海洋調査も海洋立国には欠かせない事業になっています。
このような、整備や調査などの水中作業をおこなうのが潜水士で、その将来性は高いと言えるでしょう。しかし、高齢化により潜水士の離職とともに若手の潜水士が不足しつつありあります。
そのため、業界団体では潜水士の育成や技術の伝承をサポートする取り組みもおこなっています。これから潜水士を目指す人には、良い環境が整いつつあると言えるでしょう。
まとめ この記事のおさらい
・「潜水士」は、「水中での工事や海難事故などに関するノウハウを身につけた潜水のスペシャリスト」。
・潜水士になるには、厚生労働省が認定する国家資格が必要です。
・潜水士が主に勤める場所は、「海洋関連会社」「建設会社」「水産会社」「海洋調査をおこなう研究機関」など。
・潜水士の年数は、一般企業で400万円~600万円、海上自衛隊で330万円~1000万円以上となっています。
・勤務体制や休日は作業の状況によって異なり、海上自衛隊や海上保安庁では基本的には航海中が勤務期間になります。
・海洋立国である日本にとって海洋インフラの整備は、国家的な課題で、潜水士の将来性は高いと言えます。
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