「呉越同舟」とは|意味・読み方・使い方・類語・英語表現を解説

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ここでは「呉越同舟」という四字熟語について解説いたします。

呉越同舟は中国の故事に由来することわざですが、文字だけでは本来の意味が伝わりにくく、誤解しやすい言葉でもあります。

「呉越同舟はどう読むの?どんな意味だっけ?」と悩んだ方は、ぜひこの記事をお読みになり、誤った知識が頭に定着する前に、正しい読みと意味を覚えましょう。

呉越同舟の意味・読み方・使い方

「呉越同舟」は「ごえつどうしゅう」と読みます。意味は、仲が悪い者や敵対する者同士が、たまたま同じ場所や境遇で相席を迫られる状況をいいますが、ほんとうの意味はそれだけにとどまりません。

本来「呉越同舟」は、犬猿の仲の間柄でも同じ災難にあったり、利害が一致する状況になると進んで協力するようになる、という意味のことわざです。単に犬猿の仲の者同士が同じ舟に乗り合わせてムッとしているだけの意味ではありませんので、注意しましょう。

呉越同舟の言葉の由来

「呉越同舟」は紀元前五世紀ごろに中国で編纂された「孫子(そんし)」という兵法書に由来しています。「孫子」は春秋時代に中国で活躍した名将「孫武(そんぶ)」の著作とされています。

「呉越同舟」の語源は「孫子」の「九地篇」に書かれた以下の一節になります。

夫呉人与越人相悪也 当其同舟而済而遇風 其相救也 如左右手

『夫(それ)呉人と越人は相悪む(あいにくむ)も 同舟し済り(わたり)て風に遇ふに当たりては 其の相救ふこと 左右の手の如し。』

この文を現代の日本語に訳すと、以下のような意味になります。

呉の人と越の人は互いに憎み合っているが、偶然同じ渡し舟に乗り合わせて、川を渡るあいだ嵐にあって助け合う様子は、まるで左右の手のようだった。

ここでいう「呉(ご)」とは、春秋時代に中国の東部に存在していた国のことです。紀元前5世紀ごろに6代目の王、闔閭(こうりょ)の治世で呉は勢力を増し、当時超大国だった楚(そ)に攻め込んで首都を陥落させました。

ところが、あと一歩で楚を落とせるというときになって、隣国の越(えつ)が闔閭の留守をねらって呉に侵攻してきたのです。不意を突かれた闔閭は楚の制圧を目前にしながら、自国を守るために撤退せざるをえなくなりました。

呉に戻った闔閭は越に反撃を開始したものの返り討ちにあって深手を負ってしまい、子の夫差(ふさ)に復讐を命じて亡くなります。その後、両国は足かけ30年以上にわたり血で血を洗う争いをくり広げましたが、紀元前473年に呉は越に敗れて滅亡しました。

呉と越が泥沼の覇権争いを続けるあいだ、両国の人々も互いに憎み合いました。そんなときに両国の国境が接する川の小さな渡し舟に、両国の人々がたまたま乗り合わせてしまったのです。

小さく不安定な帆掛け舟の上で、けんかや言い争いはできません。おとなしくしないと舟は転覆してしまいます。かといって仲良くするわけにもいきません。双方とも険悪な雰囲気で、重苦しい沈黙を漂わせていたことは想像に難くありません。

こうして一触即発の両国民を乗せた舟が川の半ばにさしかかったころ、にわかに天候が悪化して、舟は激しい波風を受けて木の葉のように翻弄されます。中国特有の海のように広い大河の真ん中で舟が転覆すれば、命の保証はありません。

船頭がなすすべもなく途方に暮れていると、さっきまで目を背け合っていた呉と越の人たちが立ち上がります。彼らは敵同士とは思えない鉄壁のチームワークを発揮して、たちまちのうちに帆を下ろし、力を合わせて舟を操りながら無事対岸にたどり着きました。

その故事から、「たとえ犬猿の仲でも同じ危機に直面すれば団結して対処する」ことを「呉越同舟」ということわざが生まれたといわれています。

現在でも「呉越同舟」に通じるシーンはいくらでもあります。たとえば離婚寸前の不仲だった夫婦が、災害復興で協力するうちに助け合うことの尊さを再認識して、よりを戻したといった話は枚挙にいとまがありません。それが「呉越同舟」本来の意味になります。

呉越同舟のビジネス上での使い方

「敵同士が偶然同じ空間に居合わせて、互いに居心地の悪い思いをする」という深刻でコミカルでもあるシーンは映画やドラマでよく見られますし、現実にもよくある状況といえます。

ただし前述のように「呉越同舟」は本来、「敵同士がたまたま同じ空間で顔をつきあわせるはめになる」だけではなく、「両者が同じ危機に直面し、一時的に休戦して互いに協力し合うようになる」ことを意味する言葉です。

それでは「呉越同舟」の例文を、意味ごとに掲載しましょう。
まず「呉越同舟」を「宿敵同士がたまたま同じ場所にいる」という意味で使った例文です。

次期社長をねらう専務と副社長がたまたまエレベーターで呉越同舟して、互いに腹の内を探り合った。

次は「呉越同舟」を本来の意味で用いた例文です。

わが社の労組と経営陣は賃金交渉をめぐって激しく対立していたが、わが社が外資から敵対的買収のターゲットにされたことがわかると、たちまち関係を修復し、呉越同舟で買収への防衛策に乗り出した。

呉越同舟の類義語と例文

呉越同舟の類義語としては、「同舟相救う」があります。意味も出典も「呉越同舟」と同じです。また、「大同団結」も、複数の人や団体が主義主張の違いを超えて力を合わせるという意味で、呉越同舟の同義語と言えます。

「同舟相救う」の例文

「昨夜の台風でライバル企業の材料倉庫が水没したそうですが、『同舟相救う』です。うちの在庫を提供しましょう

「大同団結」の例文

政治資金をめぐる与党のスキャンダルは政権転覆のまたとないチャンスだと、各野党は大同団結して気勢をあげた。

「呉越同舟」の英語表現

呉越同舟の英語表現は意味によってちがってきます。

まず、敵同士が同じ小舟に乗り合わせる状況だけを表現する場合、「bitter enemies in the same boat」とあらわすことができます。

「in the same boat」はまさに「同舟」の直訳ですが、英語でも「in the same boat」「all in one boat」というと「みな同じ舟に乗る」という意味だけでなく、「運命,や危険などを共にする」という比喩にもなります。

ほかにも「strange bedfellows」という言葉で「敵同士なのに行動を共にすることになった人々や団体」というイディオムになります。

「bedfellow」は「寝床をともにするほど親密な人」「親しい同僚」「不倫の相手」「政治的な同志」などを意味する言葉です。「strange bedfellows」は直訳すると「奇妙な同居人」の意味になりますが、「呉越同舟」の英訳にも使えます。

次に、敵同士が状況によって団結を迫られるという「呉越同舟」の本来の意味を英語で表
現する場合は、「Woes unite foes」「While the thunder lasted, two bad men were friends」などが使われます。

「Woes unite foes」は古いことわざで、「災いは敵同士を団結させる」という意味になります。「While the thunder lasted, two bad men were friends」は「雷が鳴り響いているあいだ、二人の悪人は友達になっていた」という意味をあらわします。

まとめ 呉越同舟についてのおさらい

  • 呉越同舟は「犬猿の仲の間柄でも同じ災難にあうと進んで協力する」という意味のことわざです。
  • 呉越同舟には語源も意味も同じ「同舟相救う」という類義語もあります。
  • 呉越同舟の英語表現には「bitter enemies in the same boat」「strange bedfellows」「Woes unite foes」などがあります。