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この記事では嗚咽について言葉の読み方と意味、使い方について解説いたします。
悲しい事件や出来事があった際、ニュース等で見聞きする言葉です。「泣く」ことをあらわす言葉は「号泣」や「慟哭」 等非常に多いですが、嗚咽は全く別の意味があります。
その言葉の意味を理解した上であらためて報道やニュースに触れることで、その想いの深さを知ることができるでしょう。
嗚咽の読み方と正しい意味
嗚咽は「おえつ」と読みます。
「声をおさえて泣くこと。むせび泣き」という意味があります。感情のままに大声を出すのではなく、体の底からおもわず漏れ出てくるように泣くことです。
後述する「すすり泣き」は「鼻で息をしながら泣くこと」です。嗚咽は「喉で息をしながら泣くこと」で、より強い感情表現だといえるでしょう。
また「号泣」は「大声をあげて泣くこと」で、「慟哭」は「声をあげて激しく嘆き泣くこと」という意味があります。
同じ「泣く」という行為でも、言葉一つでこれだけ意味が変わってきます。「嗚咽」という言葉も、意味を正確に理解した上で使いたいところです。
嗚咽の語源
「鳴」は「泣くこと」、「咽」は「むせぶ」ことです。「むせぶ」とは、涙やほこり、飲食物等で息がつまり咳が出ることを意味しています。
それぞれの漢字の意味から考えてみると、声を押し殺そうとしても、しゃっくりが出るかのようにむせび泣いてしまう様子が思い浮かびます。
嗚咽感という言葉はない
嗚咽の語尾に「感」をつけて「嗚咽感」という使われ方をしている場合がありますが、このような言葉はありません。
嗚咽の意味をふまえると「咽び泣く感覚」となるため、言葉として適切ではありません。嗚咽感と表現する方がいるとすれば、吐き気・嘔吐とと勘違いしている可能性が高いでしょう。
「おえつ」という読み方から、「嗚咽」を「オエッ」という吐き気を感じている状態であると誤解されている方が見受けられます。しかし、それは「嗚咽」ではなく「嘔吐く(えずく)」です。
「嗚咽」の音から「吐き気」を感じていると勘違いし、「嘔吐感」と同じような使い方がされだしたのではないかと考えられます。
嗚咽の類義語
嗚咽の類義語として、次のようなものがあげられます。
「むせびなく」と読みます。喉をつまらせるようにして泣くことです。
例文
咽び泣くような汽笛の音が聞こえてきた。
悲しみに耐えきれず、思わず咽び泣く。
読み方は「すすりなく」です。息を小刻みに吸い込むようにして、声を出さないで泣くことを意味しています。
例文
どこからか女性の啜り泣く声が聞こえた。
葬儀場では、啜り泣く様子が目に入ることが多い。
「欷」も「歔」もそれぞれ滅多に目にしない漢字ですが、「ききょ」と読みます。咽び泣く、啜り泣くどちらの意味も有しています。
例文
欷歔の声のみが辺りに響いていた。
その事件からしばらくは、誰も欷歔を止めることができなかった。
読み方は「しゃくりなき」です。「しゃくりあげて泣くこと」という意味です。なお、「しゃくりあげる」とは「息を急に吸い込むような声をし、肩をふるわせて泣く」ことです。
例文
どうしてもしゃくり泣きが止まらなかった。
ふとした時に、しゃくり泣きをしてしまう。
嗚咽の対義語
嗚咽の正式な対義語は存在しませんが、しいてあげるなら「笑みがこぼれる」だとする説があります。
「笑みがこぼれる」とは、「感情があふれ出て、思わず笑ってしまう」という意味です。
「泣く」の対義語は「笑う」、嗚咽は思わず涙と声が漏れ出てくることですから、意図せず笑顔が出てしまう「笑みがこぼれる」が対義語と考えられるでしょう。
「笑みがこぼれる」は、例えば以下のように使います。
赤ちゃんの寝顔を見ていると、つい笑みがこぼれる。
赤ちゃんは自分の意思を言葉によって伝えることができません。しかし、その可愛らしい姿によって周りの人を幸せな気分にすることがあります。
この場面は、赤ちゃんのそうした様子を見た人の自発的な反応だということが分かるでしょう。
笑みがこぼれるほどに、先程の出来事は嬉しかった。
平静を努めようとしても、ついつい顔が綻んでしまうくらい嬉しいことはあるものです。この例文での出来事は、自分の意思に反して感情が表に出てしまう程だったといっても過言ではありません。
例文
試験の合格発表のことを思い返すと、自然と笑みがこぼれる。
試験の合否を確認する直前というのは、ドキドキして強い緊張感を持ってしまうものです。この例文では直接の合否について明らかにしていませんが、笑みがこぼれるような結果だという背景を考えると合格だということが分かります。
嗚咽の例文とその解説
どうしても耐えきれず、ついには嗚咽を漏らした。
嗚咽とは思わず声が漏れ出てしまうことです。人前である等の理由で我慢していたものの、堪えきれずに咽び泣いてしまったわけです。
泣きたくないという自分の意思に反して涙や声が漏れ出てしまっている状況だと分かります。
悲しみのあまり、体の底から嗚咽を漏らす。
激しい悲しみから、体を震わせながら声や涙をかすかに漏らしている様子をあらわしています。
感情が極まると無意識に体が反応してしまうことがありますが、ここでは悲しみがきっかけとなって体に作用しています。
私の嗚咽は、周りの喧噪にかき消された。
嗚咽の音は、それ程大きくありません。むしろ耳をこらして初めて聞こえるくらい微かな音です。
周りがにぎやかで騒がしい場所では、例文のように嗚咽がかき消されてしまいます。がやがやとした場所で、ひっそりと泣いている様子が伝わってきます。
嗚咽が止まらないは間違った表現
大声で泣きわめく等と違って、嗚咽は長時間続くものではありません。自分の意思によって泣いているわけではなく、自然に収束するものだからです。
したがって「嗚咽が止まらない」という表現も誤った使い方だということが分かります。
もしかすると「吐き気が止まらない」という意味で使われている場合もあるかもしれませんが、これも誤用だということは先述の通りです。
音から意味を連想した、誤用としては「嗚咽」は好例といえるでしょう。
まとめ この記事のおさらい
- 「嗚咽」は「おえつ」と読み、「声をおさえて泣くこと。むせび泣き」という意味がある。
- 「嘔吐」に類する意味はなく、また「嗚咽感」や「嗚咽が止まらない」という使い方はしないということに留意する必要がある。
嗚咽を漏らすということは、堪えようがない程悲しい出来事があったということです。頭の中が整理できず、自分の意思とは裏腹に体が思わず反応してしまうからこそ嗚咽としてあらわれるといえます。
そのように考えると、人の感情とは理屈や理性でコントロールできないということが、この言葉から読み取れるでしょう。