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ここでは「はなむけ」という言葉について解説します。「はなむけ」は卒業式や送別会などのシーンでよく使われる言葉です。一方で、最近は誤った意味で使われるケースも増えてきています。
そこで本項では「はなむけ」の正しい意味や語源、類義語や英語表現をはじめ、使用上の注意点について詳しく解説していきます。どうぞ最後までお読みください。
「はなむけ」の意味とは
「はなむけ」とは、親しい人の門出や遠方の地への旅立ちを祝福して激励の言葉や金品などを贈ること。または贈る言葉や品物のことをいいます。
「はなむけ」の漢字表現
「はなむけ」は漢字で「餞」または「贐」と書きます。「餞」と「贐」はいずれも訓読みで「はなむけ」と読みます。ただし漢字の成り立ちや意味は違います。そのため「餞」と「贐」は状況によって使い分けるべきだという意見もあります。
まず「餞」という字の成り立ちは「酒や料理でもてなす」という意味の「食」と、「少量」を意味する「戔」という字の組み合わせになります。そのため「餞」には「ささやかな宴席を設けてお祝いをする」という謙遜に近いニュアンスがあります。
一方、「贐」という字の成り立ちは「お金や宝」を意味する「貝」と、「尽(つきる)」の旧字体の「盡」とを組み合わせた文字になります。「贐」の意味は「餞」とは逆で「お金が尽きるまで出して、人の門出を盛大に祝うこと」をあらわします。
「餞」と「贐」は読み方も意味も「はなむけ」ですが、たとえば結婚式ではご祝儀に多額のお金を贈るので「はなむけ」の漢字は「餞」よりも「贐」のほうがふさわしいとされます。
「はなむけ」の語源
「はなむけ」の語源は「馬の鼻向け」という日本古来の習慣に由来します。日本では平安時代より以前の時代から、遠方に旅立つ人を見送る際に道中の無事を祈って、旅人が乗る馬の鼻を目的地の方角に向ける習慣があったといわれています。
この習慣を「馬の鼻向け」といいました。そこから人の門出や旅立ちを祝って金品や激励の言葉を贈ることを「はなむけ」と称するようになったといわれています。
古い文献では「うまのはなむけ」を「馬鼻向」「馬餞」「馬贐」などと表記しています。現代では「はなむけ」を漢字で「餞」か「贐」と書きますが、いずれも常用漢字表にない「表外字」になるため、公的な文書では「はなむけ」と表記されます。
ただし文学作品などには常用漢字表の制約はありません。小説や私的なブログなどに「餞」や「贐」を含む表外字を使っても差し支えはありません。
「はなむけ」の使い方
前述のように「餞」と「贐」は常用漢字表にないので公文書や報道記事では「はなむけ」とひらがなで表記されます。そのため「はなむけ」を「花向け」と誤解する人もいます。また使うシーンを間違えないように注意することも必要です。
「はなむけ」はどんなシーンで使われる?
「はなむけ」は卒業や離退職、遠方への転勤や転居などで地元を離れる人や別れる人に餞別を贈ることをいいます。この「餞別」の「餞」が「はなむけ」の漢字のひとつです。そこからもわかるように「はなむけ」は親しい人を見送るシーンで使うのが基本です。
先述のように「はなむけ」は「馬の鼻向け」という安全祈願の慣習から生まれた言葉です。現在では旅の安全祈願よりも卒業式や結婚式などの晴れやかな門出や、進学や就職などで人生の新たなステップに踏み出す人を送り出すシーンで使うのが一般的です。
お葬式では「たむけ」を使う
「はなむけ」は親しい人の門出を見送る言葉です。「見送る」といっても死別のことではありません。お葬式の供え物などは「はなむけ」とは言わず「たむけ」というのが正しいマナーです。
「たむけ」は漢字で「手向け」と書きます。意味は「神仏や死者の霊前にものを供えること」。またはお供えもの自体をいう言葉です。ただし「手向け」は葬式専用の言葉ではなく、「はなむけ」と同様に、門出や転出を祝う餞別の意味もあります。
つまり「はなむけ」を「手向け」の意味で使うのは誤用ですが、逆に「はなむけ」の意味で「手向け」といっても誤用にはなりません。たとえば「先生が卒業生一人一人にに手向けの言葉を贈った」という使い方も可能です。
もっとも「手向け」はお葬式用語というイメージを持つ人も少なくないので、ビジネスシーンでは、あらぬ誤解を避けるためにも「手向け」は葬式の場合に使い、門出を祝うときは「はなむけ」にするという使い分けをするのが良いでしょう。
迎える場面で「はなむけ」は使わない
送別会や結婚式の挨拶を「はなむけの言葉」といいます。最近では歓迎会や入社・入学式などの挨拶も「はなむけの言葉」と呼ぶことがありますが、それは誤用になります。人を迎える場面で「はなむけの言葉」とは言えませんので、注意してください。
「はなむけ」を使った例文
「はなむけ」の類義語と例文
「はなむけ」の類義語としては「餞別」「手向け」「送辞(そうじ)」などをあげることができます。「餞別」は「はなむけ」の「餞」に「別れ」の「別」をつけた言葉で、意味は「はなむけ」と同じです。
「送辞」は 「送別の言葉や挨拶」「卒業式で在校生が卒業生に贈る『お別れの言葉』」などを意味します。「送辞」は別れの「言葉」のみをあらわします。「はなむけ」と違って贈る金品の意味はありません。
「餞別」の例文
「手向け」の例文
「はなむけ」の英語表現
「はなむけ」の英語表現は、何を「はなむけ」にするかで変わってきます。まず「はなむけの言葉」は「words of parting」「goodbye speech」「farewell speech」などということができます。
「words of parting」は「別れの言葉」を意味します。「goodbye speech」と「farewell speech」はいスピーチなので「words」よりも話が長い「お別れのスピーチ」というニュアンスになります。
逆に「words of goodbye」という言い方もできますが、その場合は「はなむけ」というよりも、恋の終わりを告げる「別れの言葉」というニュアンスになります。
次に「はなむけ」を「餞別」の意味で英語にすると「a goodbye present」「farewell gift」などということができます。
これらの英語表現はいずれも「餞別」の言葉や贈り物の意味になります。「はなむけ」という言葉の由来に通じる「遠方に旅立つ人の無事を祈って言葉や金品を贈る」というニュアンスはありません。