社会人として職場に立つと、顧客や上司、先輩から敬語の使い方を厳しく見られる場面が増えてきます。学生時代の感覚で敬語を使ってしまうと、相手に不快な印象を与え、評価を下げてしまうことにもつながりかねません。
とくに「行く」という言葉は日常会話でもビジネスシーンでも頻繁に登場するため、正しい敬語表現を身につけておくことが欠かせません。この記事では、「行く」の尊敬語・謙譲語・丁寧語をそれぞれ整理し、実際の場面でどう使い分ければよいのかを例文とともに解説していきます。
「行く」の尊敬語は「いらっしゃる」
敬語には尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語の五種類があります。このうち尊敬語は、自分よりも相手を立て、目上の人間として扱う際に使う敬語です。
「行く」の尊敬語には「いらっしゃる」「おいでになる」「行かれる」の三つがあります。この中で「行かれる」は尊敬の度合いがやや低いとされ、職場の先輩など、あらたまった関係ではない目上の相手に使うのが適当です。
ビジネスマナーでは、相手が顧客であれば役職や年齢に関係なく目上として扱うのが一般的です。たとえ二十歳以上年下の顧客であっても、「どこに行きますか」とそのまま話してしまえば失礼にあたります。「どちらにいらっしゃいますか」「どこに行かれますか」といった言い回しを使うように心がけましょう。
「いらっしゃる」は「行く」の尊敬語としてもっとも一般的に使われますが、二重敬語には注意が必要です。丁寧にしようとするあまり「いらっしゃられる」と言ってしまう人を見かけますが、これは誤った表現です。
「いらっしゃる」「行かれる」は「来る」の尊敬語としても使われます。「会議にいらっしゃいますか」は「会議に行きますか」とも「会議に来ますか」とも解釈できるため、どちらの意味かは状況や文脈で判断する必要があります。
| 敬語の種類 | 「行く」の表現 | 敬意の対象 |
|---|---|---|
| 尊敬語 | いらっしゃる・おいでになる・行かれる | 相手(動作主) |
| 謙譲語Ⅰ | 伺う | 向かう先 |
| 謙譲語Ⅱ(丁重語) | 参る | 聞き手 |
| 丁寧語 | 行きます | 特になし(言葉全体を丁寧にする) |
以下の記事では、ビジネスで使う敬語の使い方を一覧表でおさらいできるほか、実際に尊敬語を使う場面で注意すべき点や具体例を紹介しています。疑問があれば併せて確認し、実務に役立ててください。
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「行く」の謙譲語Ⅰは「伺う」謙譲語Ⅱは「参る」
2007年より謙譲語は謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ(丁重語)に分けられるようになりました。謙譲語Ⅰは「向かう先に対する敬語」です。「行く」の謙譲語Ⅰは「伺う」で、「先生(向かう先)の家へ伺う」という表現は、向かう先である「先生」を立てているため謙譲語Ⅰに分類されます。
一方、謙譲語Ⅱは「相手(聞き手)に対する敬語」です。「行く」の謙譲語Ⅱ(丁重語)は「参る」となります。
顧客との会話であれば、「3時に伺います」「3時に参ります」のどちらを使っても問題ありません。これは、聞き手である顧客と向かう先である顧客の所在地の両方に敬意を表せるためです。
謙譲語は混同しやすいため、謙譲語Ⅰは「向かう先」への敬意、謙譲語Ⅱ(丁重語)は「相手(聞き手)」への敬意を表す表現だと整理して覚えておくとよいでしょう。
「行く」の丁寧語は「行きます」
丁寧語は、言葉を丁寧に柔らかく伝えたいときに使う敬語です。誰に対して使うという制限はなく、相手が目下の人間であっても丁寧に接したい場面で使用できます。普通の話し方よりも人間関係を和らげ、社内の緊張感を緩める効果もあります。
丁寧語のポイントは、語尾に「です」「ます」を付けることです。そのため「行く」の丁寧語は「行きます」となります。
注意したいのは、丁寧語は言葉を丁寧にしているだけで、相手との上下関係を示す言葉ではないという点です。年齢や役職が大きく離れた相手に対して丁寧語だけを使うと、身内間であっても失礼になる場面があります。「丁寧語を使っているから敬語はきちんとできている」と思い込まないよう注意しましょう。
あらたまった場面で先輩や上司に話をするときは、尊敬語や謙譲語を正しく使うことを心がけてください。
「行く」の敬語表現 それぞれの例文
ここまで解説した内容を踏まえ、実際の会話でどのように使われるのか、種類別に例文で確認していきましょう。
尊敬語
謙譲語Ⅰ
謙譲語Ⅱ(丁重語)
丁寧語
「行く」の正しい敬語表現と例文についてのまとめ
ビジネスマナーにおける「行く」の使い方で注意したいのは、咄嗟の場面で間違ってしまうことです。
多忙な状況で話しかけられたとき、「ただいま伺います」と言うべきところを「今行きます」と口にしてしまうことがあります。「行く」は日常的に使う頻度が高い言葉であるうえ、相手によって適切な表現が変わるため、意識していないと咄嗟に誤った敬語が出てしまうのです。
迷ったときは、次の四つを思い出してください。
「いらっしゃる」「おいでになる」「行かれる」
「伺う」
「参る」
「行きます」
相手が誰であるか、敬意を向けるべき対象がどちらなのかを一瞬で判断できるようになれば、咄嗟の場面でも適切な敬語が自然に出てくるようになります。敬語表現の違いをよく理解し、どのような場面にも対応できる状態を目指しましょう。

