敬語「伺う」の意味&各場面での使い方| 類語や意味別の例文なども紹介

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「伺う」という表現は、「明日、御社にお伺いします」「ご意見を伺いたいのですが」など、ビジネスシーンでは欠かせない敬語表現ですね。日常的によく使われる言葉ですが、この「伺う」には、「聞く」や「尋ねる」、「訪問する」などの複数の意味があり、実は意外に見落としがちな注意点もあります。

「伺う」の意味と注意すべき点を確認して、自信をもって使いこなせるようにしましょう。

「伺う」の意味


「伺う」は、次の2つの意味を持つ謙譲語です。
① 「聞く/尋ねる」の意味


先生にお話を伺いました。

② 「訪問する」の意味


明日、御社に伺います

「伺う」の使い方

「聞く/尋ねる」の意味

目上の人に対して、話を聞いたり、意見などを尋ねる場合に使います。

〇 先生に伺いました
× 弊社の部長に伺いました。

「訪問する」の意味

訪問する先に敬意を払うべき人がいる場合に使います。

〇 明日、御社に伺います
× 明日、兄の家に伺います

「伺います」は自分が行くときに使う

「訪問する」という意味で「伺います」を使う場合、主語が誰であるのかがポイントです。

「伺う」というのは目上の人に対して自分の動作をへりくだらせる謙譲語なので、主語が自分(もしくは身内)でなければなりません。

なぜなら目上の人を主語にして謙譲語を使うと、その人の動作を下げることによって自分の方が立場を上にすることになってしまうからです。

もし目上の人の「訪問する」という動作に敬意を払うなら、尊敬語の「訪問される」や「訪問なさる」などが適当でしょう。

また「訪問する」という意味で「伺います」を使う場合の例文としては、次のようなものが挙げられます。

先日打ち合わせた通り、明日は10時に御社へ伺います。

「伺います」は自分(もしくは身内)が目上の人のところに行く際の、「訪問する」という動作をへりくだらせた表現です。

この例では、自分が取引先などの元へ行くということに対してへりくだって「伺います」という表現が用いられています。

「伺っています」は「すでに聞いている」という意味

「伺っています」という表現が使われることがありますが、これは「すでに訪問している」ではなく「すでに聞いている」という意味があります。

なぜなら「すでに訪問している」ということはその場にいれば分かることであるからです。

「すでに聞いている」という意味を持つ「伺っています」を使った例文としては、以下のようなものが考えられるでしょう。

明日の会議が延期になったことは、伺っています。

「明日の会議が延期になったことは、既に知っています」という言い方をするよりも謙虚な姿勢を示すことができる表現です。

「そんなことはすでに知っているよ」というようなニュアンスを感じさせないように、「伺っています」という言い回しは知っておいた方が良いかもしれません。

「伺いたく存じます」は「行きたい」という意味

「伺いたく存じます」は、「行きたい」という意味の謙譲表現です。

目上の人の元に行きたい、あるいは目上の人からの誘いに対して行きたい、といった場面で用いられます。

ストレートに「行きたい」という言葉を使うよりも、謙虚で礼儀正しいビジネスマンであることを印象付けることができるでしょう。

また「伺いたく存じます」を使うと、下記のような例文を作ることが可能です。

メールと電話だけではなく、ぜひ一度御社に伺いたく存じます。

近年では対面ではなく、メールや電話だけでビジネスが進んでいくということが多くなってきました。

しかしながら、そんな中だからこそ対面することで先方に自分のことを覚えてもらい、よりビジネス関係が強固になるということはあり得ることです。

今回の例ではそのような効果を狙い、メールと電話だけでなく、直接会社へ行きたいということを謙虚に伝えているのかもしれません。

「伺う」を使う際の注意点

二重敬語に注意する

「伺う」を使う場合には、二重敬語に関して注意が必要です。「お伺いします」「お伺いいたします」などは、謙譲語の「伺う」に、敬語表現「お」をつけた二重敬語。よく耳にする表現です。

文化庁の「敬語の指針」によると、二重敬語は一般に適切ではないとしながらも「ただし、語によっては、習慣として定着しているものがある」と記述され、その事例として「お伺いする、お伺いいたす、お伺い申し上げる」が挙げられています。つまり、「伺う」については二重敬語であっても例外的に許容され、使ってよい表現といえるでしょう。

次の使用例を参考に、二重敬語を使う場合には、敬意と丁寧さの度合いを意識しながら使うようにしましょう。
例文

明日10時に御社に伺います。
(シンプルに敬意を示す、推奨される表現)
明日10時に御社にお伺いします。
(敬意と丁寧さを強調、使ってよい表現)
ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。担当の者とすぐにお伺いいたします。
(謝罪時など最大限の敬意と丁寧さを示す、使ってよい表現)

ビジネスメール・口頭でも使い方は同じ

「伺う」は、ビジネスメールでも口頭でも効果は同じです。

その文脈によって「聞く/尋ねる」の意味なのか「訪問する」という意味なのか判断する必要はありますが、どちらの意味でも用いることができます。

ただし取引先などの会社に対して敬意を払う場合、ビジネスメール(書き言葉)では「貴社」、口頭(話し言葉)では「御社」と使い分けることが必要です。

これらを混同しているケースが散見されるので、この際に覚えておくと良いかもしれません。

「伺う」と「参る」の違い


「訪問する」の意味での謙譲語「伺う」と「行く」の意味の謙譲語「参る」は、次の例のように類似の意味で使われることがあります。

A  明日は、先生の家に伺います
B  明日は、先生の家に参ります

謙譲語の中でも「伺う」は、「謙譲語Ⅰ」(行為の向かう先の人を高める表現)、「参る」は「謙譲語Ⅱ」(自分の行為を丁重に述べる表現)に分類されます。

つまり、Aは訪問先である先生を立てる敬語で、Bは自分の行為を丁重に表現している敬語。A、Bともに正しい表現ですが、Aの方が先生に対して敬意を表す表現になり、推奨されます。

次の例では、「伺う」は誤りで「参る」は正しい表現です。

C × 明日は、妹の家に伺います
D 〇 明日は、妹の家に参ります

Cは、訪問先である妹を立てる敬語になってしまうので誤りです。
一方、Dは、妹を立てるわけではなく、話し相手に対して自分の行為を謙譲しているため正しい表現です。

「伺う」と「窺う」の違い


「伺う」と似た言葉として「窺う」が挙げられます。

どちらも「うかがう」と読みますが、その意味は全く別個のものです。

これまで解説したように、「伺う」は「聞く/尋ねる」や「訪問する」の謙譲表現として使われています。

その一方、「窺う」は「そっと様子を見る」「密かに探り調べる」、あるいは「状況を見ながら好機を狙う」といった意味です。

持っている意味自体も違いますが、これらを区別する一番のポイントはそれが謙譲語がどうかという点でしょう。

「伺う」は敬意の対象がいてへりくだった場面で使われるのに対し、「窺う」には謙譲語としてのニュアンスはありません

「窺う」の具体的な使い方を確認するため、以下に「窺う」の例文を用意しました。

しばらく取引がなかったので、様子を窺うべく取引先にメールすることにした。

しばらく取引がなかった場合、その取引先とはそのまま疎遠になってしまう恐れがあります。

この例ではそのような事態を避けるべく、取引先の様子をそっと見るためにメールをすることにしたということです。

「伺う」のビジネスメールで使える例文集


ビジネスメールで使えそうな「伺う」の例文を挙げます。

「聞く/尋ねる」の意味

先日の講演では、大変有意義なお話を伺うことができ、ありがとうございました。
この件につきまして、御社のご意向を伺いたいのですがよろしいでしょうか。

「訪問する」の意味

明朝9時に、弊社の部長と私の2名で御社に伺います。
申し訳ございません、あいにく明日は予定があり、お伺いすることができません。

「伺う」の類義語と例文


「伺う」の類義語としては、「聞く/尋ねる」の意味での「拝聴する」「訪問する」の意味での「参る」などが該当するでしょう。

「拝聴する」は「はいちょうする」と読み、「聞く」の謙譲語です。

「参る」は「訪問する」の謙譲語なので、「拝聴する」も「参る」も「伺う」の類義語だといえます。

またそれらの類義語を使った例文としては、次のようなものが考えられるでしょう。

今朝社長からのお話を拝聴する機会があり、その内容にとても感銘を受けた。

会社の規模や組織体制などによりますが、朝礼などの場面で社長の挨拶やスピーチなどの時間が設けられていることがあります。

この例では、今朝社長からのお話を拝聴する(伺う)機会があり、その内容にとても感銘を受けたということです。

上司からのアドバイスは、謹んで拝聴するという姿勢が重要だ。

上司や先輩など目上の人からのアドバイスは、これまで培ってきた知識や経験に基づいて有益であるものが多々あるものです。

したがってこの例にもあるように、上司からのアドバイスは謹んで謙虚に拝聴する姿勢が重要だといえます。

そのように謙虚な姿勢でいれば、今後もまたアドバイスをしてもらいやすくなることでしょう。

先日取引先にお越しいただいたので、今回は私が参ることにした。

「参る」は「訪問する」の謙譲語で、自分が目上の人の元に訪問する際に使われる表現です。

今回の例では、先日取引先に自分の会社まで来てもらったので、今回は自分が取引先に訪問することにしたということをへりくだって表しています。

先輩のお宅に参る前に、百貨店で手土産を買っておくことにした。

人の家に行く際には、その人の好物など何かしらの手土産を持参するのがマナーだとされています。

もしホームパーティーなど複数人で訪ねる場合は、それぞれで食べ物や飲み物が被らないように分担するのも良いかもしれません。

この例だと、先輩は目上の存在なので「訪問する」ではなく「参る」という謙譲表現が使われているということが読み取れるでしょう。

「伺う」の英語表現


英語は日本ほど敬語表現が多彩ではないということから、残念ながら「伺う」に直接相当する英語表現はありません。

敬語としてのニュアンスはありませんが、意味が合致しているという点では「ask」や「visit」などが「伺う」の英語表現だと言えるでしょう。

「ask」は「尋ねる」や「質問する」、その他には「聞く」や「求める」といった意味があります。

また「visit」は「訪ねる」や「訪問する」といった意味です。

どちらも中学校で習う英単語ですが、汎用性が高く非常によく使われています。

多様な場面で使うことができる英単語なので、この際に復習がてら覚え直しておくと良いかもしれません。

まとめ

(1)「伺う」は、「聞く/尋ねる」「訪問する」の2つの意味をもつ謙譲語。
目上の人に聞くとき、目上の人を訪問するときに使います。
(2)「お伺いします」は二重敬語ですが、使ってよい表現。
(3)「伺う」は訪問先の人に敬意を払う表現、「参る」は自分の行為を丁重に述べる表現。
(4)「伺う」は「聞く/尋ねる」や「訪問する」という意味の表現、「窺う」は「そっと様子を見る」や「密かに探り調べる」などを意味する表現。
(5)「伺う」の類義語としては、「聞く/尋ねる」の意味での「拝聴する」や「訪問する」の意味での「参る」などが該当します。
(6)「伺う」の英語表現は「ask」や「visit」などが合致します。

敬意を示す時には「伺う」が適切です。
二重敬語や「参る」との違いなどを意識して「伺う」を使い分けましょう。