「孔子」とは?思想である儒教や論語などを簡単に解説

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この記事では「孔子(こうし)」について解説しています。孔子は中国の思想家で、儒教の始祖とされる偉人です。ここでは孔子の生涯をはじめ孟子との関係性、論語と儒教など孔子の教えについて解説するとともに、論語の名言や孔子の英語表現も合わせて紹介いたします。

孔子とは

アンソロジーとは
孔子は儒教の創始者と伝えられる古代中国の思想家です。本名は「孔丘(こきゅう)」。字(あざな)は仲尼(ちゅうじ)。「孔子」という呼び名は尊称で、読みは漢音で「こうし」、呉音では「くじ」となっています。

孔子の生涯

孔子は紀元前552年(前551年とも)に山東省の魯(ろ)の国に生まれました。父は下級軍人で、孔子が3歳のときに没しました。17歳で母も失って孤児となり、貧窮にあえぎながらも学問に励み、礼法など幅広い知識を独学で習得した苦労人と伝えられています。

青年期の孔子は魯の国の下級仕官として倉庫や牧場の管理業務を歴任しました。やがてその人柄と学識が認められて多くの門弟を抱えるようになり、52歳で中都の代官にあたる宰(さい)に昇格。54歳で司法大臣の大司寇(だいしこう)に抜擢されて国政に深く関与しました

孔子は腐敗した魯の政治を改革しようと奔走しましたが、対立派の反撃もあって思うように進まず、紀元前497年に官を位を退いて弟子とともに諸国を遊説します。晩年は魯の国に戻り、3,000人もの門弟の教育と古典の編纂につとめて73歳でなくなりました

孔子と孟子の関係性

孟子は孔子の死から約100年後に魯国の鄒(すう)に生まれた思想家です。若いころに孔子の孫の子思(しし)の門人から儒学を学びました。孟子が諸国を遊説しながら諸侯や門弟たちと交わした問答は「孟子」という書に編纂され、儒学の主要な経典のひとつとなっています

孟子は孔子が道徳の根本理念とした「仁」の思想を発展させて「仁義」の重要性を説き、政道においても仁義にもとづく王道政治を提唱しました。また「人は天から仁・義・礼・智などの美点を授かって生まれる」という「性善説」を唱えたことでも知られています

孟子の思想は理想主義的な傾向が強く、その理念は独裁権力者からたびたび危険思想とみなされました。一方で、儒学者の朱熹(しゅき)が孟子を孔子に次ぐ重要な人物にあげるなど後世の評価は高く、そのため儒教は「孔孟の教え」とも呼ばれます

孔子の思想


孔子の思想は「仁(思いやりの心)」や「礼(人としての礼節)」を道徳的な規範として秩序ある社会の構築をめざす理念が基本です。孔子は特に「仁」を最高の道徳理念として重視しており、個人から国家まで「仁」を実践して礼節を重んじれば人の世の秩序が保たれると主張しました。

孔子の思想は弟子や論客との対話を記した「論語」に編纂され、後の儒教に発展しました。前述の朱熹が構築した朱子学は儒教の学問体系のひとつとして日本の歴史や文化にも大きな影響を与えています

論語

論語は孔子とその弟子たちの言葉や対話を20編にまとめた言行録で、儒教の最も重要な経典とされています。論語が成立した経緯については諸説ありますが、孔子の没後、弟子たちによってまず3系統の語録が編纂されるとともに多くの注釈が派生しました。

それらが孟子や何晏(かあん)など後世の学者によって統合され、現在の形にまとめられたものと考えられています。

儒教

儒教は孔子の教えを思想的な側面から宗教になぞらえた総称です。学問的な側面から「儒学」とも呼ばれます。一般に儒教の創始者は孔子とされますが、儒教の教理の大半は古代中国の神話や諸国の政治、儀礼制度や文化習俗などを包括的に編纂したものと言えるでしょう。

儒教の経書は「大学」「中庸」「論語」「孟子」の四書と、「詩(詩経)」「書(書経)」「礼(礼記)」「易(易経)」「春秋」の四書五経(ししょごきょう)とされています。孔子の死後、儒教は経書の解釈を行う学問および社会倫理の規範として広まりました。

「仁」とは他者への情けや愛情、思いやりなどを意味する言葉です。儒教では「仁」を社会倫理の最も重要な徳目と考え、「仁」を万人に広めることで思いやりや親愛の情に満ちた共生社会が実現できるとして国家運営の実践的な目標にも位置づけられています

論語の名言


論語の発生は紀元前500年前後にまで遡りますが、その内容は現代にも通じる訓戒と名言の宝庫でもあります。ここでは論語を代表する名言をご紹介します。

巧言令色鮮仁(こうげんれいしょくすくなしじん)

「巧言令色鮮仁」は「言葉が巧みで上辺(うわべ)が良い者は「仁」が乏しい」「思いやりのある人はお追従を言わず無愛想なことが多い」という意味の格言です。「巧言」は「お追従」のこと。「令色」は「上辺を繕うこと」。「鮮」は「めったにない」という意味です。

温故而知新(ふるきをあたためてあたらしきをしる)

論語で最も有名な格言のひとつ。「ふるきをたずねてあたらしきをしる」とも読みます。意味は「古くからの教えを大切にして、新たな知識を得ることが大切である」「温故知新」という故事成語の由来となった格言です

有朋自遠方来 不亦樂乎(ともありえんぽうよりきたるまたたのしからずや)

論語の冒頭の有名な一節です。「朋」は単なる友人ではなく「同じ志を持つ仲間」を意味します。「有朋自遠方来 不亦樂乎」は「同じ志をもつ友人が遠方からはるばる来て共に学業に励む。なんと楽しいことだろう」という意味です。

日本における孔子


儒教は4世紀後半〜5世紀初頭ごろの応神天皇時代に日本に伝来し、十七条憲法や律令制の理念に大きな影響を与えました。日本では仏教が国家統治思想として受容されたこともあり、論語は宗教ではなく漢詞文や礼法などの教科書として仏教の僧侶に伝わりました。

江戸時代になると儒教は仏教から独立し、帝王学的な学問として武家社会を中心に修学する動きが広まります。特に朱子学は幕府の封建支配を支える基底的な倫理思想として官学化され、新井白石や室鳩巣など近世を代表する朱子学者を輩出しました

幕末には朱子学のほかに陽明学の反体制的な理論も広まり、渡辺崋山や佐久間象山ら幕藩体制に批判的な思想家や幕末の志士に大きな影響を与えています。明治維新の立役者となった志士の多くは水戸学や陽明学を信奉し、明治以後も修学や研究が行われました

現代においても孔子の論語は教養書や処世術として学生やビジネスマンを中心に広く愛読されています。

孔子の英語表現


「孔子」の英語表記は「Confucius」です。語源は孔子の「孔」に尊称の「夫子」を加えた「孔夫子」のラテン語読みで、発音は「kənˈfju.ʃəs(コンフューシャス)」となります。

「論語」の英語名は「The Analects of Confucius(孔子の語録)」。または単に「The Analects」とするのが一般的です。ちなみに論語の「子曰く」は「Confucius said,」または「The Master said,」と訳されます。

まとめ

  • 孔子は儒教の創始者と伝えられる古代中国の思想家です。
  • 孔子の思想は「仁」を道徳の最高理念としています。
  • 論語は孔子とその弟子たちの言行録で、儒教の最も重要な経典です。
  • 論語には「巧言令色鮮」や「有朋自遠方来」など有名な格言が数多く掲載されています。
  • 儒教は4世紀後半〜5世紀初頭ごろ日本に伝来し、江戸時代には朱子学や陽明学が広まりました。
  • 「孔子」の英語表記は「Confucius」です。