ブックデザイナー(装丁家)とは|装丁の意味や仕事内容などを解説

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この記事では、「ブックデザイナー(装丁家)」の仕事内容、なり方、年収、勤務体系、将来性などについて考察します。

「ブックデザイナー(装丁家)」という仕事をご存じですか?本に関する仕事という漠然なイメージは浮かんでも、具体的な仕事内容はなかなか言えないでしょう。しかし、ブックデザイナー(装丁家)は、本の売上げを左右する大切な仕事です。

なかなか知られていないブックデザイナー(装丁家)ですが、この記事を通して、「ブックデザイナー(装丁家)」の仕事内容やなり方、将来性などを理解し、職業選択の参考にしてください。

ブックデザイナー(装丁家)とは


ブックデザイナー(装丁家)は、本の表紙やカバーなどのデザインを具現化する仕事をする人のことです。「装丁(そうてい)」は、製本の仕上げとして、本を綴(と)じて、表紙などをつけて体裁を整えることですが、最近ではカバーや外箱など総合的なデザインの意味になっています。

厳密に言うと、「装丁家(そうていか)」は、本の表紙やカバーなどの外観を扱いますが、「ブックデザイナー」は、外観以外に本の中身のデザインも扱います。しかし、実際は、その差はなく、どちらも一般的にはブックデザイナーと呼ばれています。

書店で実際に本を手にするかは、表紙のデザインが大きく影響します。実際、表紙が気に入って購入するケースも少なくありません。つまり、ブックデザイナー(装丁家)の仕事は、本の売上げを左右する重要なものと言えます。

ブックデザイナー(装丁家)の仕事内容

ブックデザイナー(装丁家)は、会社に勤務する人やフリーランスの人などがいますが、仕事の内容に変わりはありません。一般的には、以下のような手順で仕事をおこないます。

  • 編集者との打ち合わせ
  • 本の著者から直接依頼されるケースもありますが、多くの場合、出版社の編集者から発注されます。まずは、編集者から本の内容や著者の意向、ターゲット層、納品スケジュールなどについて打ち合わせします。

  • デザイン案の作成
  • 原稿があれば、熟読し作品を理解します。最近では、パソコンのソフトでデザインを作成するのが主流で、紙の種類や配色の種類などいくつかのデザイン案を作成してプリントアウトします。

  • デザイン案の修正
  • 提出したデザイン案をもとに、編集者と検討します。著者の意見も参考にして、案デザイン案を絞り込み、なんどか修正を繰り返し、ブラッシュアップしていきます。ほとんどの仕事は1回のデザインで決まることはほとんどありません。

    編集者・著者・ブックデザイナーが納得できる最高のデザインが仕上がるまで、とことん話し合いがおこなわれます。

  • 納品
  • デザイン案が決定したら、データを編集者に納品します。印刷会社から試し刷りが上がったら、ブックデザイナー(装丁家)は、色校正をチェックして、修正があれば指示します。

日本の有名な装丁家

シェア
ブックデザイナー(装丁家)の中には、月に何冊ものデザインを担当している有名な人も少なくありません。ここでは、代表的な3人のブックデザイナー(装丁家)を紹介します。

鈴木成一(すずきせいいち)

月数十冊のペースで仕事を請け負っている超売れっ子ブックデザイナー(装丁家)。個性的で一度見たら忘れられないデザインが人気です。代表作には「金持ち父さん貧乏父さん」「疾走・上下巻」「白夜行」、「陰日向に咲く」などがあります。

祖父江慎(そふえしん)

独創的なデザインで話題を集めているブックデザイン界の巨匠と呼ばれているのが、祖父江慎氏です。吉田戦車の「伝染るんです。」や岩波書店の漱石「心」など、斬新で独創的な装丁を数多く世に送り出しています。

名久井直子(なくいなおこ)

武蔵野美術大学を卒業後、外資系広告代理店のアートディレクターとして在籍中に、手がけた装丁が注目を浴び、ブックデザイナー(装丁家)として独立。「坂道のアポロン」「あたしとあなた(谷川俊太郎)」などを担当し、女性らしい美しい仕上がりで人気になっています。

ブックデザイナー(装丁家)になるには

渾身
ブックデザイナー(装丁家)になるには、特別な資格はありません。しかし、デザインソフトを使うスキルや色彩感覚、書体やデザインに関する知識は必要です。

出版社やデザイン事務所で経験を積み、独立する

ブックデザイナー(装丁家)としてのスキルや知識を身につけるには、出版社やデザイン事務所で、経験を積むのが近道です。一流のブックデザイナー(装丁家)の仕事を見て、自分なりの装丁を考えたりするのも有効です。

そして、ある程度の装丁が任されるようになれば、ブックデザイナー(装丁家)として独立することも可能です。

美術系の大学や専門学校の出身者も多い

ブックデザイナー(装丁家)として活躍している方々には、美術系の大学や専門学校を卒業している人多くいます。デザインや編集、印刷などの知識を学んでいれば、就職する際にも有利になります。

ブックデザイナー(装丁家)に向いている人

晴耕雨読
ブックデザイナー(装丁家)には、illustratorなどの専門ソフトのスキルや色彩感覚などが必要ですが、それ以前に装丁という仕事に向いているかどうかを判断することも大切です。ブックデザイナー(装丁家)になるには、以下のような人が向いています。

本を読むのが好き

ブックデザイナー(装丁家)の仕事は、本の表紙などをつくることですから、本の内容をきちんと理解することが必要です。日頃から本を読んでいないと読解力も身につきません。ブックデザイナー(装丁家)にとって、「本を読むことが好き」は最低条件です。

本を読むことが好きであれば、編集者とのイメージも共有しやすくなり、仕事もスムーズに進められます。

臨機応変に対応できる

ブックデザイナー(装丁家)は、作家が書いた本を魅力的なビジュアルで表現することで、絵画のように自分の作品づくりではありません。編集者や著者の要望などを取り入れながら仕事を進めていきます。

そのためには、自分の意見を通すのではなく臨機応変な対応が必要です。我の強い人には向いていません。

向上心がある

本の表紙に魅力を与えるには、ただ見栄えが良いだけではインパクトがありません。本の内容をどうビジュアル化するか、常に新しい表現方法を模索し、情報を集める努力を怠らない向上心が求められます。

ブックデザイナー(装丁家)が主に勤める場所

おざなり
ブックデザイナー(装丁家)が勤める場所は、主に出版社・デザイン会社・広告代理店です。このような職場で経験を積み、ブックデザイナー(装丁家)として独立する人が多いようです。

また、独立したブックデザイナー(装丁家)に弟子入りして、プロを目指す人もいます。

ブックデザイナー(装丁家)の年収

吝嗇
本の装丁は、編集者やデザイナー、イラストレーターなどが担当することも少なくありません。ですから、ブックデザイナー(装丁家)として収入を得るのは容易ではなく、一部の人気ブックデザイナー(装丁家)に仕事が集中する傾向にあります。

ブックデザイナー(装丁家)の平均年収のデータは算出するのは難しいのが現状です。一般的に本の装丁は、1冊あたり数万円~20万円ぐらいです。1冊20万円のギャラの人気ブックデザイナー(装丁家)なら、月 10本で月収200万円ですから、年収2400万円になります。

超売れっ子では、1億円近い年収を稼いでいる人もいますが、逆に、200万円にも達しないブックデザイナー(装丁家)もいるのが現実です。

ちなみに、厚生労働省の職業提供サイトでは、ブックデザイナー(装丁家)の年収は、デザイナーの職業分類に含まれて以下のように紹介されています。

職業分類(デザイナー)
年収 460.9万円
年齢 39.2歳

ブックデザイナー(装丁家)の勤務体系と休日

雌伏
出版社やデザイン会社に勤務するブックデザイナー(装丁家)の勤務体系や休日は、それぞれの会社の規定によって異なります。基本的には、週休2日1日8時間労働ですが納期のある仕事なので、納期に間に合わせるために残業や休日出勤は多くなります。

フリーランスの場合は、あくまでも仕事次第です。人気のブックデザイナー(装丁家)は、同時に何冊もの装丁を請け負うことも多く、ハードなスケジュールをこなす人も少なくありません。

ブックデザイナー(装丁家)の将来性

静謐
出版科学研究所の調査によると令和2年の紙の市場は16年連続で減少し、電子出版の市場規模が全体の約25%を占めるほど増加しています。この傾向は、今後も継続すると思われ、必然的に従来のブックデザイナー(装丁家)は少なくなると予想されます。

将来性を考えるとブックデザイナー(装丁家)の未来は、そう明るくはありません。但し、電子書籍は確実に増加が予想されるので、電子書籍をアピールするビジュアルは必要です。これからのブックデザイナー(装丁家)には、スマホやタブレットなどの効果を考えた新しいスキルが求められるでしょう。

まとめ この記事のおさらい

  • ブックデザイナー(装丁家)は、本の表紙やカバーなどのデザインを具現化する仕事をする人のこと。
  • ブックデザイナー(装丁家)の仕事は、「編集者との打ち合わせ」「デザイン案の作成」「デザイン案の修正」「納品」。
  • 有名なブックデザイナー(装丁家)は、「鈴木成一」「祖父江慎」「名久井直子」など。
  • ブックデザイナー(装丁家)になるには、出版社やデザイン事務所で経験を積み、独立するのが近道。
  • ブックデザイナー(装丁家)には、美術系の大学や専門学校の出身者も多い。
  • ブックデザイナー(装丁家)には、「本を読むのが好き」「臨機応変に対応できる」「向上心がある」人が向いている。
  • ブックデザイナー(装丁家)が勤める場所は、主に出版社・デザイン会社・広告代理店。
  • ブックデザイナー(装丁家)だけで収入を得ている人は少なく、一部の人に集中しているので、平均収入を算出するのは難しい。
  • あくまでも納品のスケジュールが主体なので、残業や休日出勤も多い。
  • 将来を考えると、電子出版に対応したスキルが求められる。