「見る」「観る」「診る」「視る」「看る」|紛らわしい意味の違い、使い分け方を解説!

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この記事では漢字の「見る」「観る」「診る」「視る」「看る」の違いについて解説しています。ごらんのように動詞の「みる」は同音異字のバリエーションが多彩な言葉です。

そこで、ここでは「みる」の代表的な漢字5種に着目。それぞれの意味の違いや使い方についてまとめました。ビジネスなどの大事な場面で誤用や誤解を避けるためにもぜひ最後までお読みいただき、正しい日本語の知識を習得してください。

「見る」「観る」「診る」「視る」「看る」の違い


そもそもなぜ日本語には同音異字がこんなに多いのでしょうか。日本語の漢字の「読み」には、中国語の発音を日本語化した「音読み」と、古代日本の固有言語「大和言葉(やまとことば)」の発音をあてはめた「訓読み」があります

大和言葉にはもともと文字はなかったと考えられています。そこで中国から伝来した漢字を取り入れ、大和言葉に意味や発音が近いものを「訓読み」として体系化した結果、同音異字を意味の違いによって使い分けるという現在のスタイルが完成しました。

「みる」も同様に、大和言葉で「目で対象を捉える」ことをあらわす動詞にいくつもの漢字を後づけすることで、さまざまな意味の使い分けが可能になりました。

「見る」の意味と使い方

「見る」は一般的に「目の感覚で物事の存在や形態を確認する」という意味をあらわします。したがって今回ここで取り上げる「観る」「診る」「視る」「看る」は全て「見る」の同義語といえるでしょう

ほかにも「眺める」「調べる」「観覧する」なども「見る」同義語です。一方、「見る」には「事実だと考える」「物事の本質を察知する」「測定する」といった意味もあります。その場合は「決め込む」「推し量る」などが同義語です。

「見る」を英語で表現する場合、「視覚によって対象物を認識する」という意味では「look」「see」「watch」。「物事の本質を察知する」という意味では「see」や「understand」 が用いられます。

「look」と「watch」 には「意識して対象を見る」というニュアンスがあります。一方「see」は意識しなくてもふつうに見えるという意味の言葉です。また「see」には視覚とは無関係に「理解した」という意味で「I see.」というフレーズもあります。

「I see.」は「なるほど」「わかりました」という軽い相づちの意味で使うのが基本。「See? (わかった?)」という表現もあります。ただし「I can’t see.」は「わかりません」ではなく「見えません」の意味になるので注意しましょう。

「観る」の意味と使い方

「観る」を「みる」と読むのは常用漢字表にない「表外読み」になりますが、漢字の「観」そのものは「観光」「観察」「鑑賞」などの熟語で現代人にもおなじみです。旧字は「觀」。左偏の「雚」は「コウノトリ」の象形です。

コウノトリは目の周囲に露出した赤い皮膚がアイラインのように目立つ特徴があります。「觀」はそのコウノトリのように「目を見開いて見ること」「意識してしっかり見つめる」ことを意味します。

たとえば「徹夜でセミの羽化を観た」「ピカソの絵画を観た」というように「観る」は「観察する」「鑑賞する」ことを意味する言葉です。ただし「観る」という表記は常用漢字表外なのでマスコミの記事や公文書では「見る」と書きます。

英語で「観る」を表す場合は「watch」が一般的です。

「診る」の意味と使い方

「診」という字の成り立ちは「言う」を意味する「言」に「㐱」を合わせたもの。「㐱」は「人」に「彡」を加えた形で、肌の「発疹」や「髪」のこと。髪は「細かいもの」「細いもの」をびっしり束ねたものをあらわします。

「診」は「『発疹(病気)』や『髪(細かいもの)』をよく見て言う」ことをあらわし、「医者が患者の健康状態をよく調べて判断する」という意味の言葉になりました。「診」という字には「目」も「見」もないのに「みる」を意味するのはそのためです。

現在でも「医師が脈を診る」というように、医療従事者が診察することをあらわす場合に「診る」と表記します。それ以外の意味で「診る」という字を当てることはまずありません。

「診る」を英語で表す場合は「I’d like to see a doctor.(医師に診てもらいたい)」のように「医師に診てもらう」という意味では「see a doctor」というのが一般的です。

逆に「医師が患者を診察する」という意味では、「examine」という動詞を使うのが一般的です。「examine」は「調査する」「審査する」「試験をする」という意味もあります。

ちなみに「診察」は「medical examination」か「doctor’s examination」といいますが、日常会話では「examination」で通じます。

「視る」の意味と使い方

「視」の旧字は「視」。「示」+「見」という成り立ちで「指し示すほうを見る」ことをあらわします。現在では「注視」「視聴」「敵視」などの熟語を形成して「じっと見る」「見なす」といった意味で使われます

ただし「視」を「視る(みる)」と訓読する用法は常用漢字の表外になるため、現在では使われません。

「視る」を英語で表現する場合は、「watch」「gaze」などを使います。「gaze」は「凝視する」「熟視する」という意味の動詞です。

「看る」の意味と使い方

「看る」の「看」は、「太陽などの明るい光を手でさえぎりながら目で見る」ことをあらわします。そこから「注意深く見る」「見守る」「世話をする」という意味をあらわす文字になりました。現在では「看護」「看病」などの熟語で使われています。

「看る」という表記もまた常用漢字外になるため、一般には「見る」を用います。

「看る」を英語で表現する場合は「看護する」という意味の「nurse」、「見守る」という意味の「keep an eye on~」「be all eyes」「watch over」などを使います。

「keep an eye on~」「be all eyes」の例文

Can you keep an eye on my luggage for a minute while I go to the bathroom??
「ちょっとトイレに行きたいんですが、そのあいだ私の荷物を見ていてくれませんか」

Sure, I am all eyes at it.
「いいですよ。しっかり見張ってます」

解説:「Can you keep an eye」の「eye」が単数なのは、「eye」を「見る機能」の象徴としているからです。
一方、「I am all eyes at it.」は「私は全身を目にして見ています(全身全霊を込めて注視します)」という慣用的な表現により複数形にしています。

まとめ

  • 「見る」は目で物事の存在や形態を確認することを広く意味する動詞です。
  • 「観る」は意識してしっかり見つめることを意味します。
  • 「診る」は医者が患者の健康状態をよく調べて判断することを意味します。
  • 「視る」は「じっと見る」「見なす」といった意味の言葉です。
  • 「看る」は「注意深く見る」「見守る」「世話をする」という意味をあらわします。