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気象大学校は一般の大学とは異なる特殊な機関です。日常生活では見聞きすることが少ないため、ここで初めて名前を知ったという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、気象大学校で学ぶ内容や卒業後の進路などを解説します。また、あわせて気象大学校に入るための試験についても、受験資格や難易度、合格率などを紹介していきます。
この記事を通して、気象大学校とはどんなところで、どんな人が何のために学んでいるのかを理解することができるでしょう。
気象大学校とは
気象大学校は千葉県柏市にある、気象庁の幹部候補生を養成するための機関です。
大学校と名前がついていますが気象庁の研究機関であって、気象大学校で学ぶ学生は、気象庁の職員という位置づけの国家公務員です。気象庁の機関であること、学生は国家公務員の扱いであること、在学中も給料が支給されることが大きな特徴です。
このように一般の大学と違うところが多いですが、気象大学校の教育課程は大学設置基準に沿っていますので、卒業生には学士(理学)の学位が授与されます。また、一般の大学と同じように、気象大学校でも体育祭や学校祭などの年間行事、部活動なども行われています。
学生数は全体で60名と一般の大学と比較すると大変少人数で、専任教官26名、非常勤講師13名が指導にあたっています。
気象大学校で4年間学んだ後は、気象庁本庁や全国各地の気象台などに配属され、幹部候補として活躍します。
※気象大学校には、気象庁の幹部候補養成するための大学部(4年)と、一般職員を育成する研修部(1年)がありますが、この記事では大学部に関する情報について解説していきます。
気象大学校で学ぶ内容
気象大学校は4年制で、カリキュラムは「教育課程」と「特修課程」で構成されます。
教育課程は「教養」「基礎」「専門」の3つに分かれており、教養では人文科学、社会科学、外国語などの一般教養を、基礎では数学、物理学、化学、情報科学などの基礎学術を、専門では気象学、自身・火山学、海洋学などを学習します。
特修課程は防災行政に関する科目や業務演習、観測実習など、実践を中心としたカリキュラムとなっています。
■教育課程■
-必修科目-
【教養】
1年:英語A・B
2年:英語C
3年:英語E
4年:英語E
-必修科目-
【基礎】
1年:微分積分学Ⅰ・Ⅱ、線形代数学、力学、力学演習、熱学Ⅰ、情報処理演習Ⅰ
2年:物理数学A~C、振動波動論、電磁気学、液体力学、弾性体力学、物理学実験、科学実験、物理統計学、データ解析、化学通論
3年:情報通信、数値モデル入門
4年:-
【専門】
1年:気象学概論、気象学基礎演習Ⅰ、自身火山学概論
2年:気象学基礎演習Ⅱ、気象力学Ⅰ、大気物理学Ⅰ・Ⅱ
3年:気象力学Ⅱ、大気物理学Ⅱ、気象観測ネットワーク、地球物理学実験、総観気象学、メソ気象学Ⅰ、気象解析予測論Ⅰ、地震学Ⅰ、気候システムⅠ、海洋物理学
4年:メソ気象学Ⅱ、気象解析予測論Ⅱ、気象学演習、火山学、地震学演習、卒業研究
-選択科目-
【教養】
1年/2年:科学史、哲学、論理学、法学、社会学、外国語(中国語か仏語)
3年/4年:心理学、文学、地理学、政治学、経済学、公共経営学
【基礎】
1年/2年:数学演習、物理学演習、物理数学D、熱学Ⅱ、物理学特論、情報処理演習Ⅱ
3年/4年:電子工学、情報科学実験、情報処理演習Ⅲ、データ解析演習、データベース技法
【専門】
1年:個体地球科学入門
2年:-
3年/4年:地球電磁気学、地球科学、データ同化、地震学Ⅱ、気候システムⅡ、数値予報論
■特修過程■
-必修科目-
1年:気象業務概論、情報リテラシー、気象台実習、地上気象観測実習
2年:気象防災概論、気象台実習、地震科損観測実習
3年:防災行政論、気象庁本庁職場実習
4年:気象業務論、防災社会学、コミュニケーション演習、防災気象業務演習、防災機関見学、地方気象台職場実習
卒業後の進路
気象大学校の卒業生の大半は、各地の地方気象台で技術系職員として勤務します。勤務地は、北は北海道の稚内から南は石垣島まで、全国各地の気象台が対象です。
地方で数年勤務の後、気象庁本庁、管区気象台等で企画立案、各省庁との協議・調整、より高度な調査あるいは研究業務に従事しながらキャリアアップしていきます。
中には、世界気象機関(WMO)、南極観測隊で活躍する人もいます。
気象庁では、おもに次のような仕事に携わります。
[観測]気象衛星・アメダス・レーダーなどを使った観測・監視
[地震・火山]津波警報の発表・地震や火山の監視
[地球環境・海洋]季節予報の発表、海水温暖化の解析・監視
[研究・開発]気象・地震・火山の研究、モデル化技術等の開発
[国際協力]世界気象機関を通じた気象情報の交換、発展途上国への支援
在学中は給料が支給される
気象大学校の学生は、入学時から国家公務員の気象庁職員として採用されます。そのため、在学中も給料が支給されます(2020年4月1日の給与例:159,636円)。加えて期末勤勉手当(民間企業のボーナスにあたるもの)も支給されます。
一般の国家公務員と同様に休暇も支給され、1年に20日の年次休暇のほか、夏季休暇、忌引などの特別休暇もあります。
気象大学校の入学金や授業料は無料です。
学生は原則として気象大学校の敷地内にある「智名寮」という寮に入って学生生活を過ごしますが、寮費の負担はありません。ただし、教科書代や食事代は自己負担です。
気象大学校の採用試験について
気象大学校の学生は気象庁の職員として位置づけられています。そのため、入学試験は「国家公務員 気象大学校採用試験」です。
試験の申込は毎年8月、第1次試験は10月と、一般の大学とは異なった日程となっています。受験を考えている人は注意してください。
受験資格
気象大学校採用試験の受験資格は次の通りです。
1.試験実施年の4月1日時点において、高等学校または中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過していない者、および翌3月までに高等学校または中等教育学校を卒業する見込みの者
2.高等専門学校の第3学年の課程を修了した者であって、試験実施年の4月1日時点において、当該課程を修了した日の翌日 から起算して2年を経過していない者および翌3月までに当該課程を修了する見込みの者など、人事院が上記に掲げる者と同等の資格があると認める者
※日本国籍を有しないなど受験資格がない人の規定があります。
受験できる期間が卒業3年目までと非常に短いところに注意が必要です。
試験内容
気象大学校の試験は1次と2次に分けて実施されます。
■基礎能力試験(多肢選択式)40題1時間30分
公務員として必要な基礎的な能力(知能及び知識)についての筆記試験
・知能分野20題(文章理解、課題処理、数的処理、資料解釈)
・知識分野20題(自然科学、人文科学、社会科学)
■学科試験(多肢選択式)39題3時間
数学、物理及び英語についての筆記試験
・数学I、数学II、数学A、数学B、物理基礎、物理、コミュニケーション英語Ⅰ、コミュニケーション英語Ⅱ
■学科試験(記述式)
数学 2~5題1時間20分
・数学I、数学II、数学III、数学A、数学B
物理 2~5題1時間20分
・物理基礎、物理
英語 2~3題1時間20分
・コミュニケーション英語I、コミュニケーション英語II
■作文試験 1題50分
文章による表現力、課題に関する理解力などについての筆記試験
-第2次試験-
■人物試験
人柄、対人的能力などについての個別面接
■身体検査
主として胸部疾患、その他一般内科系検査
試験地は第1次試験は11都市、第2次試験は6都市から選択することができます。
2次試験:札幌市、仙台市、東京都、大阪市、福岡市、那覇市
※受験資格、試験内容は「2020年度 気象大学校採用試験 受験案内」より
試験の難易度はどれくらい?
ここ3年間の気象大学校採用試験の申込者数、合格者数は次の通りです。
2019年 申込者数 330人(76人) 合格者数 31人(4人) 合格率 9.4%
2018年 申込者数 418人(87人) 合格者数 32人(2人) 合格率 7.7%※()内は女性の内数
合格率は年によってばらつきがあるものの、おおよそ10%前後で難関であると考えてよいでしょう。
合格者は採用候補者名簿に得点順に記載され、上位の人から入学の意向を聞かれたうえで採用が決定されます。したがって、試験に合格しても最終的に採用されないケースもあります。
定員は全学年で60名、1学年15名程度と非常に少ないこともあり、気象大学校への入学はかなりの狭き門となっています。
まとめ この記事のおさらい
- 気象大学校は、気象庁の幹部候補生を養成するための機関です。
- 気象大学校の学生は国家公務員である気象庁の職員の位置づけです。
- 在学中は約16万円の給料とボーナスにあたる期末勤勉手当が支給され、授業料や寮費は無料です。
- 気象大学校に入学するには採用試験に合格する必要があります。受験資格は高校卒業後3年目までの人です。
- 採用試験は選択式・記述式・作文の第1次試験と、人物試験・身体検査の第2次試験に分かれています。
- 採用試験の合格率はおおよそ10%程度と難関です。また、合格者のうち成績上位の人から順に採用されるため、合格しても最終的に採用されない可能性もあります。
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