この記事では「起死回生」という四字熟語について解説いたします。「起死回生」は野球中継などで「起死回生の一打」、囲碁や将棋の解説では「起死回生の一手」といった表現でよく使われます。この「起死回生」には、どのような意味があるのでしょうか。

ここでは「起死回生」の読み方や正しい意味、使い方をはじめ、類義語と対義語、英語表現などを含めて詳しく解説していきます。どうぞ最後までお読みください。

「起死回生」の読み方・意味・使い方

千載一遇
「起死回生」は「きしかいせい」と読みます。意味は「死にかかっていた人を生き返らせること」。元は医術の高さをあらわす言葉でしたが、それが転じて、敗北や崩壊寸前の危機的な状態から一気に形勢を逆転することを意味する言葉になりました。

たとえばテレビやラジオの野球中継で使われる「起死回生の一発」「起死回生の満塁ホームラン」。将棋や囲碁の解説で使われる「起死回生の一手」など、誰の目にも不利な状況を会心の一打(または一手)によって勝利へと導く大逆転のことをあらわします。

また「逆転」の意味での「起死回生」はビジネス上の交渉や法廷闘争などでもよく使われます。たとえば「大企業を相手に訴訟を起こした町工場が圧倒的に不利な状況の中で『起死回生』となる証拠を提示して全面勝訴の判決を得る」といった使い方ができます。

「起死回生」の語源

「起死回生」の出典は華北時代の中国で編纂された「太平広記」とされています。「太平広記」は前漢から北宋の初期にいたる時代に成立した奇談や伝説、おとぎ話など7千篇あまりを類書(古代の百科全書)として編纂した説話集です。

その「太平広記」の「女仙伝」の中に、「太玄女」という仙女が「起死回生」の医術によって多くの人命を救った、という記述があります。

「起死」と「回生」はどちらも「死にかかった(または死んだ)人を生き返らせること」をあらわす同義語であり、ともに華北時代以前から使われていました。それを「起死回生」という四字熟語に合体させたのは「太平広記」の「女仙伝」が最初とされています。

「起死回生」のビジネス上での使い方


「起死回生」は前述のように「背水の陣」、つまり敗北濃厚な危機的状況から一転して勝利につなげる会心の大逆転を意味する慣用句です。ビジネスでも売り上げ不振に苦しむ企業が画期的な新製品のヒットで業績を急回復させた場合などによく使われます。

ビジネスの場で「起死回生」が「死にかかった者を生き返らせる」という原義のままで用いられることは医療現場でもほとんどありません。医療関係の現場で「死にかかった者を生き返らせる」という状況をあらわす場合、一般には「蘇生」といいます。

ビジネス上での「起死回生」の例文

不況に苦しむ会社が社運をかけて売り出した「映える」新商品が起死回生のヒットとなった。

事実上の倒産状態にあった会社が背水の陣で立ち上げた部門がわずか半年の間に起死回生の事業に成長した。

「起死回生」の類義語と例文

cf.
「起死回生」と同じ意味の類義語としては「捲土重来(けんどちょうらい・けんどじゅうらい)」「反転攻勢」「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」などをあげることができます。

「捲土重来」は、戦いに敗れた者がいったんは退却したものの急激に勢力を増強して全力で巻き返しにかかること。「捲土」は土煙が巻き上がること。馬や歩兵の軍隊が土煙を上げて猛然と襲ってくる様子をたとえた言葉です。

厳密には「起死回生」は敗北寸前からの逆転勝利を含みますが、「捲土重来」は一度敗北したあとのリターンマッチをあらわす、という違いがあります。

「反転攻勢」は相手の勢いに押され続けて防戦一方だった人やチームが攻撃に転じること。野球のようにルールで攻守を交代するのではなく、じりじりと追い詰められていた人やチームが勢いを転じて攻撃に出る、というニュアンスで用いられます。

「臥薪嘗胆」は仇討ちなどの復讐を成し遂げるために苦心を重ねること。語源は「薪の上に寝て苦いきもをなめる」という意味で、「仇討ちなどの目的を成し遂げるために苦しくつらい生活に耐えること」をあらわします。

現代では仇討ちや復讐のニュアンスが失われ、ビジネスで成功するまでに長いあいだ苦労や努力を重ねることをあらわします。逆に言えば「臥薪嘗胆」は「苦しみに耐え努力すること」を意味する言葉で、「その結果、成功する」というニュアンスはありません。

ほかにも「起死回生」の同義語として「再建する」「立て直す」などもあげられます。

「捲土重来」の例文

前回の選挙で次点となった候補者が、次の選挙で捲土重来の初当選をねらっている。

「起死回生」の対義語と例文

建築士
「起死回生」と逆の意味を持つ対義語としては「再起不能(さいきふのう)」「失速」「腰折れ」などをあげることができます。

「再起不能」とは病気やけが、没落などの程度がひどく、健康や勢力の回復はもはや望めない状況をあらわします。

「失速」は飛行機が空中で急激に速度を失う現象のこと。または「人気や活気、景気などが急激に失われること」をあらわす言葉です。

「腰折れ」は「年をとって腰が曲がること」「経済が前向きな状態から悪化に転じること」「活気が急速に失われること」などを意味します。

「失速」の例文

コロナウイルスの感染拡大を防止するために多くの国々が急激かつ大幅な景気の失速を余儀なくされた。

「起死回生」の英語表現

KJ法
「起死回生」にぴったり当てはまる英語のイディオムはありません。そこで意味が近い英語表現を紹介します。

まず文字通り「死の淵からよみがえる」という意味では「reviving the dead」「resuscitation」があります。

「reviving the dead」は死者をよみがえらせること。「resuscitation」は「蘇生」「生き返り」のこと。ちなみに「心肺蘇生法」を意味する「CPR」は「CardioPulmonary Resuscitation」の略語です。

「劇的に復活する」という意味では、「epic recovery」「dramatic recovery」というフレーズがあげられます。

一方、「不利な形勢から大逆転する」という意味では、「崖っぷちからの(復活)」を意味する「~from the(またはa) brink」。「火の中から(救い出す)」という意味の「out of fire」などがあげられます。

「out of fire」の例文

Shohei Ohtani hits his 12th home run of the season to pull the team out of the fire.

大谷翔平、追い込まれたチームを救う12号ホームランを放つ。

まとめ

  • 「起死回生」は「死にかかっていた人を生き返らせること」「敗北寸前の危機的な状態から一気に形勢を逆転すること」を意味する言葉です。
  • 「起死回生」は「起死」と「回生」という同じ意味の言葉を合わせた熟語で、出典は華北時代の中国で編纂された「太平広記」です。
  • 「起死回生」の類義語には「「捲土重来」「反転攻勢」「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」があります。
  • 「起死回生」の対義語には「再起不能」「失速」「腰折れ」などがあります。
  • 「起死回生」の英語表現は「reviving the dead」「resuscitation」「resuscitation」「epic recovery」などがあります。