検察官の仕事内容について|「検事」との違い・採用までの道のり・年収なども解説

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この記事では、「検察官」の仕事内容、資格、年収、勤務体系、将来性などについて考察します。

犯人を取り調べする「検察官」が主人公のテレビドラマがよくあります。事件の真実を見極める検察官は、まさにヒーローですが、実際の検察官の仕事はドラマのように取調室や裁判所だけでなく広範囲にわたっています。

では、「検察官」とは実際はどんな仕事をしているのでしょうか?この記事を通して、「検察官」の仕事内容や資格、将来性などを理解し、職業選択の参考にしてください。

検察官とは


「検察官」とは、法律に違反した犯罪や事件を調べ、被疑者の起訴、不起訴の判断を下す仕事をおこなう職業のことです。日本では、検察官だけが法を犯した者を刑事裁判にかけることができるのです。

検察官の仕事内容

「検察官」には、大きく以下の3つの仕事があります。

(1)被疑者を起訴するか判断する
警察から送致された事件や直接検察官に告訴や告発された事件、もしくは検察官が認知した事件に関して、捜査や取り調べをおこないます。提出された情報や自分で収集した資料を基に、被疑者を取り調べ、裁判所に起訴するかどうかを判断します。

被疑者の年齢や境遇、罪の軽重によっては起訴をしない場合もあります。また、裁判所の公判を開かずに、書類だけの審査で刑を言い渡す「略式命令請求」を選択する場合もあります。

(2)公判請求した裁判に立ち会う
担当して公判請求した事件の裁判に立ち会うのも、検察官の大切な仕事です。被疑者の犯罪を立証する証拠を提出し、証人尋問などで有罪であることを証明していきます。裁判員裁判では、裁判員にわかりやすく立証することも重要な仕事です。

証拠調べが終了したら、求刑などの論告をおこないます。また、判決内容によっては、上告するのも検察官の大切な役割です。

(3)判決が正当に執行されるように指揮する
裁判が終了しても、検察官の仕事は終わりではありません。判決による懲役刑や罰金刑などがきちんと執行されているかを確認し、滞っている場合は、関係機関に対して正当に執行されるよう指揮監督します。

被疑者を起訴して裁判所で立証することだけでなく、判決で下された刑がきちんと執行されているかをチェックすることも検察官の重要な仕事です。

「検察官」と「検事」の違い

ドラマなどの裁判シーンでは、被疑者側の「弁護士」に対して、検察側の「検事」という表現が使われます。では、裁判所に立ち会う「検察官」はどこにいるのでしょうか?実は、検察官は職業の総称です。

検察官は、正確には、「検事総長」「次長検事」「検事長」「検事及び副検事」に区分されます。つまり、「検事」は検察官の中の役職名なのです。この中で、検事総長,次長検事及び検事長は内閣が任命し、天皇が認証することになっています。

検察官になるには


では、検察官になるためには、どうすればよいのでしょうか?

検察官として採用されるまでの道のり

一般的に検察官になるためには、まず司法試験に合格しなければなりません。司法試験を受けるには、法科大学院課程を修了もしくは司法試験予備試験の合格が必須条件で、大きく3つのルートがあります。

(1)大学の法学部を卒業して2年間法科大学院で学ぶ
弁護士や検察官を目指す人は大学も当然法学部を選択するはずです。大学で法律を学び、法科大学院から法律基本科目を修得済みと認定された場合は、2年間の既修者コースに進むことができます。
(2)大学を卒業して3年間法科大学院で学ぶ
法学部以外の学部を卒業しても、法科大学院の標準コースで3年間学べば、司法試験が受けられます。また、法学部を卒業しても受験用のために3年間のコースを選択する学生もいるようです。
(3)司法試験の予備試験を受ける
高卒の人や大学在学中の人でも司法試験の予備試験に合格すれば、司法試験を受けることができます。実際、19歳で司法試験に合格した大学生も存在します。但し、法務省が発表した予備試験の合格率は過去最高の4.17%となっています。

過去最高値は言え、かなりの狭き門であることに変わりはありませんね。

以上の関門を乗り越えて初めて司法試験にチャレンジできます。

司法試験の難易度

法務省が発表した2020年の司法試験の合格者は、1450人で合格率39.16%となっています。約4割近い合格率なので、国家試験としてはそれほど難しくないと思われるかもしれませんが、司法試験の場合、上記のように難しい受験資格が必要です。

つまり、しっかり勉強した優秀な人たちが受験する試験なので、4割でも少ないと言えるでしょう。また、司法試験が難しいと言われる理由には、日程と試験内容の厳しさがあげられます。

司法試験は、毎年5月に論文式試験が3日間、短答式試験が1日、計4日間おこなわれます。論文式は1科目2時間(選択科目は3時間)で3日間合計8科目、短答式試験が1科目(50分もしくは75分)で3科目、最大で1日7時間の試験時間になります。

体力的にもかなりハードと言えます。また、内容が必須科目で憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法,刑事訴訟法、選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)から1科目選びます。

科目が多く、広い範囲から出題されるのも難度が高い理由です。さらに、論文式試験では文章力も問われます。

司法試験を合格してもすぐに検察官にはなれない

難関の司法試験が受かっても、すぐに検察官になれるわけではありません。法曹三者(弁護士・裁判官・検察官)の業務につくためには、1年間の「司法修習」を修習する必要があります

司法修習は、まず全国の配属地で民事裁判・刑事裁判・検察・弁護の4科目を各2か月ずつ学びます。その後、司法研修所で法律解釈学に関する「集合修習」と実際の仕事場で学ぶ「実務修習」の2つがおこなわれます。

司法修習の最後には「二回試験」が待っています。これは、司法試験に続く二回目の試験なので「二回試験」と呼ばれますが、正式には「司法修習生考試」です。試験は、民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5教科を1日1科目5日間おこなわれます。

解答はすべて筆記式で、1日7時間半の解答時間が与えられます。学力だけでなく、気力も体力も必要になります。合格率は9割以上ですが、万が一試験に落ちても翌年に受験することは可能ですが、3回落ちるとまた司法試験から始めなければなりません。

このように、いくつもの難関を乗り越えて初めて、検察官としての職務に就けるのです。

検察官の年収


検察官の給与は、「検察官の俸給等に関する法律」によって以下のように等級ごとに定められています。
 

区分 俸給月額
検事総長 1,466,000円
次長検事 1,199,000円
東京高等検察庁検事長 1,302,000円
その他の検事長 1,199,000円
検事 1号 1,175,000円
2号 1,035,000円
3号 965,000円
4号 818,000円
5号 706,000円
6号 634,000円
7号 574,000円
8号 516,000円
9号 421,500円
10号 387,800円
11号 364,900円
12号 341,600円
13号 319,800円
14号 304,700円
15号 287,500円
16号 277,600円
17号 256,300円
18号 247,400円
19号 240,800円
20号 234,900円

 
この報酬月額に、「地域手当」「扶養手当」「初任給調整手当」などがついたのが、月額の合計になります。

検事20号で、地域手当が50,280円、扶養手当16,500円、初任給調整手当87,800円が加算され、月合計389,480円です。(令和1年の1月現在)

公務員の場合、民間のボーナスに該当するのが「期末手当」と「勤勉手当」です。期末手当は在職期間に応じて定率で支払われるもので、勤勉手当は勤務成績に準じたものです。民間と同様に6月と12月の年二回支給されます。

月合計の12か月分と期末手当・勤務手当の合計が年収になります。令和2年1月現在の実績では、検事20号の年収は、6,057,122円と報告されています。検事の場合、新任で平均27歳ぐらいですから、一般企業の新人よりは年齢が高いとは言え、高額と言えるでしょう。

検事8号以上になれば、年収は1,000万円を超え、検事2号以上では2,000万円を超え、トップの検事総長は3,000万円に近い年収になります。

検察官の勤務体系と休日


検察官の勤務体系は、基本的には公務員ですから、平日は9~17時、土日祝日は休日となります。但し、検察官の仕事は事件や裁判の進捗状況に大きく左右されます。当然、残業や休日出勤も少なくありません。

配属される検察庁や部署によって事情は異なりますが、都市部の検察庁は仕事量が多く、1日8案件を処理するようなことも少なくありません。これは、案件の増加による慢性的な人材不足が原因で、今後改善すべき問題になっています。

また、検察官は2~3年に1度転勤があるのも大きな特徴です。移動がある場合は、1月ごろに打診があり、2月末ないし3月初めころに正式な「内示」がされます。転勤先は日本全国に及び、個人の希望に関係なく通達されるのが一般的です。

検察官が主に勤める場所

おざなり
検察官が、主に勤める場所は全国各地の検察庁になります。検察庁には、東京1カ所にしかない「最高検察庁」、全国8カ所の「高等検察庁」、各県庁所在地に設置されている「地方検察庁」、家庭裁判所に対応した「区検察庁」があります。

また、検察庁以外にも法務省をはじめとした各省庁、国連機関や在外公館、民間企業などの就職先があります。法律の専門家として幅広い需要があり、幅広い分野で働けるのは大きなメリットです。

検察官の将来性

静謐
検察官は、被疑者を起訴できる唯一の権限を持った職業です。国際化やインターネットの普及により犯罪件数も増加して、検察官の仕事は今後ますます必要になることは明白です。つまり、検察官の需要は増えることはあっても減ることはありません。

検察官は将来性のある仕事ですが、現在のような過酷な労働条件の中では、明るい将来とは言えません。人材不足の問題を早急に解決する必要があるのも事実です。

まとめ この記事のおさらい

  • 「検察官」とは、法律に違反した犯罪や事件を調べ、被疑者の起訴、不起訴の判断を下す仕事をおこなう職業のこと。
  • 検察官の仕事内容は主に、「被疑者を起訴するか判断する」「公判請求した裁判に立ち会う」「判決が正当に執行されるように指揮する」の3つ。
  • 「検察官」は総称で、「検事」は検察官の中の役職名です。
  • 検察官になるには、司法試験の合格が必須で、さらに1年間の「司法修習」を受けた後「二回試験」に合格しなければなりません。
  • 検察官の給与は、「検察官の俸給等に関する法律」によって決められています。
  • 検察官の勤務体系は公務員規定に準じていますが、残業や休日出勤、定期的な転勤などがあり、かなり忙しい。
  • 主な勤務場所は、全国の検察庁。国連機関や在外公館、民間企業などの就職先も。
  • 検察官の需要は増加し、将来性も高いですが、人材不足の解消が急務。