海上保安学校とは|カリキュラムや採用試験の受験資格・内容について解説

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海を守る頼れる存在の海上自衛官。その海上保安官を育てるのが海上保安学校です。

この記事では、海上保安学校とは何か、海上保安学校ではどんなことを学ぶのかを解説します。また、海上保安学校へ入学するための試験についても、受験資格や試験内容などを紹介していきます。

海上保安学校とは

大学教授
海上保安学校は、海上保安庁の各分野における専門の職員を養成する教育機関です。キャンパスは京都府舞鶴市の海に囲まれた美しい環境に位置します。

海上保安学校の学生は、入学と同時に国家公務員として採用されること、在学中にも給料が支給されることが一般の学校とは違う特徴でしょう。
学生として授業や訓練を受けますが、それらは海上保安庁の職員としての業務の一環という位置づけです。

海上保安学校には5つの課程があり、1年もしくは2年をかけて海上保安官として必要な知識と、各課程・コースごとの専門科目を学びます。

敷地内には学生寮があり、学生は全員がこの寮で生活を共にします。「規律、責任感、礼儀」を重要視する職務のため、寮生活を通じて、海上保安官に相応しい人間性を身につける目的があります。
また寮内の生活では、洋上、船上の実務にすぐ慣れるように、ポケットハンドをしない、口笛を吹かない、自分の居場所を札で示すなど、海上保安学校ならではの生活規則が設けられています。

在学中は給料が支給される

海上保安学校の学生は入学時から国家公務員として採用されるので、在学中も月額約14万円の給料が支給されます。このほか、民間企業のボーナスにあたる期末・勤勉手当が年2回支給されます。
また、入学金や授業料も無料です。

「海上保安学校」と「海上保安大学校」の違い

海上保安官を養成する学校には「海上保安学校」「海上保安大学校」があります。
この2つの学校は、分かりやすくいうと、幹部職員を養成する目的か一般職員を養成する目的かの違いです。

「海上保安大学校」は海上保安庁の幹部職員を養成することを目的としていて、本科4年、専攻科6ヶ月および研修科国際業務課程6ヶ月の計5年間をかけ、海上保安業務に必要な高度な学術や技能を学びます。所在地は広島県呉市です。

「海上保安学校」は海上保安庁の一般職員を養成することを目的としていて、課程により1年もしくは2年をかけて、海上保安業務に必要な学術や技能を学びます。所在地は京都府舞鶴市です。

海上保安学校の5つの課程

放送作家
海上保安学校には「船舶運航システム」「航空」「情報システム」「管制」「海洋科学」の5つの過程があり、採用試験時にいずれかを選択します。
教育期間は、情報システムと管制が2年、その他3課程は1年となっています。

船舶運航システム(航海・機関・主計の3コース)

船舶運航システムは、巡視船艇の運航や海上犯罪取締り等に必要な知識・技能を習得する課程で、教育期間は1年間です。
「航海」「機関」「主計」の3つのコースに分かれていて、採用試験時にいずれか1コースを選択します。

卒業後は巡視船等に乗組み、航海コースの出身者は船舶の運航や整備、機関コースの出身者は機関の運転や整備、主計コースの出身者は経理・補給・庶務・調理の業務に従事します。

【航海】
巡視船艇等の運航を担当する海上保安官を養成するコースで、船舶の運航に必要な知識を中心に学びます。
卒業後の将来は、巡視船艇等の航海士や船長になることもできます。また卒業生は、必要な乗船履歴を満たせば五級海技士(航海)を筆記試験免除で取得することもできます。
【機関】
巡視船艇等の機関の運転や整備を担当する海上保安官を養成するコースで、船舶の機関、電気機器等に関する知識を中心に学びます。
卒業後は船舶の運航・整備の業務に従事し、将来は巡視船艇等の機関士や機関長になることもできます。また卒業生は、必要な乗船履歴を満たせば、内燃機関五級海技(機関)を筆記試験免除で取得することができます。
【主計】
巡視船艇等での船内給食や経理補給等の事務を担当する海上保安官を養成するコースで、船内給食に必要な知識を中心とした調理実習のほかに、総務、経理補給、船舶衛生などについて学びます。
卒業後は機関の運転・整備の業務に従事し、将来は巡視船の主計士や主計長になることもできます。また卒業生は、必要な乗船履歴を満たせば、船舶料理士の免状を取得できます。

航空

航空機のパイロットになるための基礎教養や海上犯罪取締り等に必要な知識・技能を習得する課程で、教育期間は1年間です。
航空機を操縦するのに必要な基礎知識及び海上犯罪取締等の海上保安官として必要な知識を修得し、卒業後は飛行機又はヘリコプターの操縦士として、領海警備、海難救助、海上犯罪の取締りなどの業務に従事します。

情報システム

通信機器の運用管理や航行安全、海上犯罪取締り等に必要な知識・技能を習得する課程で、教育期間は2年間です。
巡視船艇・航空機及び陸上の通信機器の運用・管理、船舶の安全運航に必要な情報提供や灯台などの航路標識の保守・運用、航行の安全業務についての知識・技能を修得します。
卒業後は、海上保安部等に勤務し、航路標識の管理運営等の業務に従事します。

管制

運用管制官を育てる課程で、教育期間は2年間です。
運用管制官とは、船舶の動きを把握し、船舶の安全な航行に必要な情報を提供したり、大型船舶の航路入航間隔の調整、航路をふさぐなど不適切な航行をする船舶への指導等を行い、船舶が安全に航行できるように保つ役割です。
卒業後は全国の海上交通センターに配置され、運用管制業務に従事します。

海洋科学

航海の安全に役立てるさまざまな海洋データや情報を収集、解析し、提供する海上保安官を育成する課程で、教育期間は1年間です。
海洋の科学的資料の収集・解析等に必要な知識・技能を習得します。
卒業後は、本庁、管区本部等に勤務し、海洋観測、測量、海図の作成等の業務に従事します。

海上保安学校の採用試験について

建築士
海上保安学校、2022年4月入学の採用試験は、第1次試験が9月26日(日)に実施され、7月20日(火)から受付が始まります。
受験資格や試験内容を確認しておきましょう。

受験資格

受験資格は次の通りです。

(1)試験年度4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して12年を経過していない者及び試験年度3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者
(2)高等専門学校の第3学年の課程を修了した者であって、試験年度4月1日において当該課程を修了した日の翌日から起算して12年を経過していない等人事院が(1)に揚げる者と同等の資格があるとみとめる者

高校卒業から12年と、およそ30歳まで受験が可能です。

試験内容

試験は第一次試験と第二次試験(航空は第三次試験もあり)に分かれて実施されます。
第一次の基礎能力試験は全過程共通ですが、その他は課程によって試験内容が変わってきます。特に航空課程は第三次試験まで実施され、身体検査もほかの過程と比べて細かなものとなっています。

【船舶運航システム】
-第一次試験-
基礎能力試験(多肢選択式):知能分野及び知識分野
作文試験:文章による表現力、課題に対する理解力など
-第二次試験-
人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接
身体検査:胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査
身体測定:身長、体重、視力、色覚、聴力
体力検査:反復横跳び・上体起こし・鉄棒両手ぶら下がり

【航空】
-第一次試験-
基礎能力試験(多肢選択式):知能分野及び知識分野
学科試験(多肢選択式):数学、英語
-第二次試験-
人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接
身体検査:一般検査、呼吸器系検査、循環器系検査、消化器系検査(口腔及び歯牙を除く)、血液及び造血臓器検査、腎臓、泌尿器系及び生殖器系検査、運動器系検査、眼検査、視機能検査、耳鼻咽喉検査、口腔及び歯牙検査、総合検査
身体測定:身長、体重、視力、色覚、聴力
体力検査:反復横跳び・上体起こし・鉄棒両手ぶら下がり
-第三次試験-
人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接
適性検査:模擬飛行装置を使用しての操縦検査
身体測定:精神及び神経系検査

【管制】
-第一次試験-
基礎能力試験(多肢選択式):知能分野及び知識分野
学科試験(多肢選択式):数学、英語
-第二次試験-
人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接
身体検査:胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査
身体測定:身長、体重、視力、色覚、聴力
体力検査:反復横跳び・上体起こし・鉄棒両手ぶら下がり

【情報システム】
-第一次試験-
基礎能力試験(多肢選択式):知能分野及び知識分野
学科試験(多肢選択式):数学、英語
-第二次試験-
人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接
身体検査:胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査
身体測定:身長、体重、視力、色覚、聴力
体力検査:反復横跳び・上体起こし・鉄棒両手ぶら下がり

【海洋科学】
-第一次試験-
基礎能力試験(多肢選択式):知能分野及び知識分野
学科試験(多肢選択式):数学、英語、物理
-第二次試験-
人物試験:人柄、対人的能力などについての個別面接
身体検査:胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査
身体測定:視力、色覚、聴力
体力検査:鉄棒両手ぶら下がり

試験の難易度はどれくらい?

採用試験の倍率は一般的な大学と同じ程度といえます。ただ、課程によっては採用人数がかなり少ないところもあります。

ここ3年間の海上保安学校学生採用試験の結果は次の通りです。

2020年 申込者数 3,983人 合格者数 695人 合格率 17.4%
2019年 申込者数 2,822人 合格者数 556人 合格率 19.7%
2018年 申込者数 3,650人 合格者数 592人 合格率 16.2%

※()内は女性の内数

各課程ごとの合格率は次の通りです。

【船舶運航システム】
2020年 申込者数3,310人 556人 16.8%
2019年 申込者数2,255人 433人 19.2%
2018年 申込者数3,130人 444人 14.2%

【航空】
2020年 申込者数309人 32人 10.4%
2019年 申込者数188人 34人 18.1%
2018年 申込者数168人 30人 17.9%

【管制】
2020年 申込者数83人 26人 31.3%
2019年 申込者数98人 23人 23.5%
2018年 申込者数70人 16人 22.9%

【情報システム】
2020年 申込者数195人 63人 32.3%
2019年 申込者数220人 54人 24.5%
2018年 申込者数183人 81人 44.3%

【海洋科学】
2020年 申込者数86人 18人 20.9%
2019年 申込者数61人 12人 19.7%
2018年 申込者数99人 21人 21.2%

まとめ この記事のおさらい

  • 海上保安学校は、海上保安庁の各分野における専門の職員を養成する教育機関です。
  • 海上保安学校の学生は入学時から国家公務員として採用されるので、在学中も給料が支給されます。
  • 海上保安学校には「船舶運航システム(航海・機関・主計の3コース)」「航空」「情報システム」「管制」「海洋科学」の5つの課程があります。
  • 採用試験は第一次試験(筆記)と第二次試験(面接・身体検査・体力測定)に分かれて実施されます(航空は第三次試験まで)。
  • 採用試験の直近3年の合格率は16%~20%程度です。