「際して(さいして)」は、「ある行為や事態にあたって」という、時や機会を表す言葉です。 ビジネス文書や丁寧な連絡で頻出する一方で、「関して」や「あたって」など似た表現との使い分けに悩む人も多いでしょう。
「契約に際して」と「契約に関して」って、何が違うんだろう? どっちを使えばいいか分からない…。
確かに混同しやすい表現ですね。「際して」は「タイミング」、「関して」は「内容」に焦点があります。この違いを押さえられれば、迷わず使い分けられますよ。
この記事では、読者の方々が苦手意識を持ちがちな「際して」の文法、類語との明確な違い、ビジネスでの実践的な用例まで、具体例と共に紐解いていきます。正確な日本語を使いこなせれば、社会人としての信頼感も一段と高まります。ぜひ最後までお読みください。
「際して」の読み方と基本意味


「際して」の読み方は「さいして」です。基本的な意味は、「ある行為や出来事が行われる時(に当たって)」や、「~の折に」となります。例えば「出国に際して手続きが必要です」と言う場合、これは「出国」という行為が行われるその時に関連して、というニュアンスを含みます。
「際して」が意味するのは、物事の「内容」そのものではなく、それが起こる「時」や「場面」です。この「時・機会」という核心を押さえることが、類語との区別を理解する第一歩です。
漢字「際」の二つの読み方と意味
「際」という漢字自体にも意味の広がりがあります。読み方によって大きく2つの意味に分かれます。
| 読み方 | 主な意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| サイ | 時、場合、機会 | 実際(ジッサイ)、有事の際(ユウジノサイ)、「この際」 |
| キワ(ギワ) | 境目、端、物事がそうなろうとする瞬間 | 山際(ヤマギワ)、生え際(ハエギワ)、死に際(シニギワ) |
「際して」の「際」は、もちろん「サイ」の方の意味、つまり「時や機会」を表しています。この漢字の意味を知ることで、「際して」が「内容」ではなく「時」を表す理由がより腑に落ちるでしょう。
文法上の成り立ち(「連語」とは)
言葉の成り立ちからもう少し詳しく見てみましょう。「際して」は、文法上「連語」に分類されます。連語とは、複数の単語が結びついて、一つのまとまった意味を持つ言葉の単位です。
まず、「ある事態に出会う」という意味の動詞「際する」があります。
この動詞を「ます」に続ける形(連用形)にすると「際します」となります。この「ます」の前の部分「際し」が「連用形」です。
その連用形「際し」に、接続助詞「て」がついて、「際して」という一つの言葉が完成します。
このように、「際して」は元々は二つの要素から成り立つ言葉なのですが、現代では「際して」で一つの言葉として辞書にも載っており、覚えておけば問題ありません。
「関して」「あたって」との違いを比較
「際して」が最も混同されやすいのが、「関して」と「あたって」です。それぞれの意味と使い分けを明確に区別することが、正確な日本語を使うための鍵です。
| 表現 | 意味の核心 | 焦点 | 例文 | 言い換えられるか |
|---|---|---|---|---|
| 際して | 行為・事態がある時点で行われること | 時・機会 | 「出張に際しての注意点」 | 「出張する時に」 |
| 関して | 事柄に関連すること、その内容 | 内容・対象 | 「契約内容に関して質問」 | 「契約内容について」 |
| あたって | 節目となる時・機会にさしかかること | 節目の時・重要な時 | 「設立10周年にあたって」 | 「設立10周年を迎える時に」 |
「関して(ついて)」との違い
最大の混乱ポイントは、「関して」が「内容」を、「際して」が「タイミング」を表す点です。例えば、報告会で「先月のプロジェクトに関して報告します」と言えば、プロジェクトの詳細な内容について話すことになります。
「あたって」との違いと使い分けのポイント
「あたって」は「際して」とほぼ同義として辞書に載ることもありますが、ニュアンスには違いがあります。
- 「あたって」が持つ特別なニュアンス:より形式的で、節目となる重要な時を意識させる表現です。開会の挨拶や記念行事など、区切りの良い時によく使われます。
- 使い分けの目安:日常業務の個々の行為(出張・発注・接客)には「際して」。年度変わり、記念日、大きな決断時などには「あたって」が自然です。
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ビジネスでの「際して」の使い方


ビジネスシーン、特に社内連絡、マニュアル、顧客向けの案内文などで「際して」は頻繁に登場します。注意点や手順を、それが行われる「時」に関連付けて説明する際に重宝します。
- 「出張に際しては、必ず事前申請を済ませてください。」
- 「データ削除に際しては、バックアップの有無を必ず確認すること。」
- 「クレーム対応に際しては、まずお客様の話を最後までお聞きする姿勢が大切です。」
また、「際して」を含むバリエーションとして、「~の際」「~の際に」「~に際する」といった言い回しも一般的です。
- 「お帰りの際は、電気の消灯をお願いします。」
- 「契約の際に必要な書類を同封いたします。」
- 「システム利用に際する規約を改定いたしました。」
丁寧な表現「際しまして」の使い方
「際して」自体は敬語ではありません。上司や顧客など目上の相手に対して、また公式な文書で使う場合は、より丁寧な表現に言い換える必要があります。
注意:目上の方への連絡で「ご契約に際して注意点があります」と書くのは、ややぶっきらぼうな印象を与える可能性があります。
その場合に使うのが「際しまして」です。「際して」を「致しまして」のように、「~します」の丁寧語「~します」の形にした表現です。
- 「お申込みに際しましては、こちらの注意事項をご一読ください。」
- 「本サービスをご利用に際しましては、ユーザー登録が必要となります。」
- 「今回の不具合発生に際しましては、ご利用のお客様に大変ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。」
「際して」の類義語一覧


| 類義語 | 意味と特徴 | 例文 |
|---|---|---|
| において | 「場所」「時」「分野」など、広く状況を示す。「際して」より範囲が広い。 | 「過去において同様の事例はない。」 |
| にあって | 特定の「状況」「状態」の中にいることを強調する表現。 | 「経済的不安定な状況にあって、慎重な投資が求められる。」 |
| ついて(について) | 「関して」と同様、話題の対象や内容を指す。「際して」とは方向性が異なる。 | 「明日の会議の議題について、事前に資料を配布します。」 |
| 折に(おりに) | 「機会」「時」を表す。改まった表現で、ビジネスレター等で使用。 | 「お近くにお越しの折には、ぜひお立ち寄りください。」 |
これらの類義語は、どれも「ある場面に関連して」という点で共通しますが、焦点を当てる部分(時、状況、内容)がそれぞれ異なります。「際して」の特徴である「時の直前」という限定性を理解すれば、これらの使い分けも自ずと見えてくるはずです。
「際して」の英語表現


英語で「際して」を表現する場合、文脈によって最も自然な前置詞や表現が変わってきます。日本語の持つニュアンスを正しく伝えるための選択肢を紹介します。
- when ~ing / when you ~(~する時)
最も汎用的。口語・文語両方で使える。
When submitting the form, please ensure all fields are filled.
(書類提出に際しては、すべての項目に記入ください。) - in ~ing / in case of ~(~する場合には)
手続きや条件を示す場合に適す。
In using this software, the license agreement must be accepted.
(本ソフト使用に際しては、ライセンス契約への同意が必要です。) - on the occasion of ~(~の機会に)
格式ばった表現。式典や記念日など特別な時。
On the occasion of our company's 20th anniversary, we will hold a celebration.
(会社創立20周年に際して、記念式典を開催します。) - at the time of ~(~の時に)
特定の瞬間や時点を明確に指す。
Please confirm the checklist at the time of departure.
(出発に際しては、チェックリストをご確認ください。)
まとめ:もう「際して」で悩まないために
- 意味:「さいして」と読み、「ある行為や事態が行われる時・機会」を表す。
- 「関して」との違い:内容ではなく、タイミングに着目する。「契約内容に関して」(内容) vs 「契約に際して」(契約する時)。
- 「あたって」との違い:より節目となる重要な時を意識させる表現として使い分ける(例:年度初め、記念日)。
- ビジネス敬語:目上の相手や公式文書では「際しまして」を使うのが礼儀正しい。
- 英語表現:状況に応じて「when」「in」「on the occasion of」「at the time of」を使い分ける。
「際して」の本質は「時」を指すこと。この一言を念頭に置いておけば、類語との混乱は大きく減るはずです。正確な言葉遣いは、ビジネスパーソンとしての信頼を築く大切な礎です。
- 「際して」と「にあたって」は完全に同じ意味ですか?
-
ほぼ同義ですが、厳密にはニュアンスの違いがあります。「際して」は、ある行為が行われる「時」全般を指すのに対し、「にあたって」は節目となるような重要な時、「~を迎えるにあたり」という改まった感じを伴うことが多いです。例えば、「ご入社にあたって」は自然ですが、「書類を提出にあたって」は少し大げさに聞こえることがあります。
- 「お越しの際は…」と「お越しになりましたら…」どちらが正しい?
-
どちらも正しい敬語ですが、使う場面が異なります。「お越しの際は」は、相手が来る前に、事前の連絡や注意事項を伝える場合に使います。一方、「お越しになりましたら」は、相手が来た後の行動を促す表現(例:受付までお越しください)として使います。場面を間違えると不自然になるので注意が必要です。
- 「際して」は話し言葉ではあまり使わないのですか?
-
日常会話では、「~する時」や「~の時に」と言い換えることが多く、堅い印象を与えがちな「際して」は控えめです。しかし、フォーマルな会議での発言や、改まった発表、電話でのマニュアル的な説明など、ビジネスシーンの公式な場面では適切に使われます。文書では非常に一般的なので、理解しておくことは必須です。
- メールで「ご確認の際は…」と書くのは失礼ですか?
-
失礼には当たりませんが、状況によっては少し事務的な印象を与えるかもしれません。社内連絡や定型連絡としては十分使えます。より丁寧に、あるいは柔らかく表現したい場合は、「ご確認の際には」、「ご確認いただく際には」、または 「ご確認の上、~くださいませ」 などと言い換える選択肢もあります。

