粉骨砕身とは?|読み方・意味・使い方・英語表現などを解説

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ここでは「粉骨砕身」という言葉について解説いたします。「粉骨砕身」を訓読みすると「骨を粉にして身を砕く」となります。現代人の感覚では仰々しくさえ思える言葉ですが、逆に言えばその仰々しさゆえに日本人好みの精神論にマッチする言葉でもあります。

本項では「粉骨砕身」の意味や使い方について類義語や対義語、英語表現などを含めて多角的に掘り下げてゆきます。どうぞ最後までお読みください。

「粉骨砕身」の読み方・意味・使い方

したたか
「粉骨砕身」は「ふんこつさいしん」と読みます。意味は「骨がすり切れて粉になり、身(肉)は砕けてボロボロになるまで努力すること」をあらわします。

「粉骨砕身」の使い方には名詞と動詞の用法があります。名詞としての用法は「粉骨砕身の決意でのぞむ」「粉骨砕身努力する」という言い回しで用いるのが一般的です。

一方、動詞の用法はサ行変格活用の自動詞として「若い頃は粉骨砕身した」「日夜、粉骨砕身する」といった表現で用いられます。

「粉骨砕身」の言葉の由来

「粉骨砕身」という言葉は、古代中国の禅宗の教えに由来するとされています。出典の文献としては中国の禅僧が書いた「禅林類纂(ぜんりんるいさん)」や、唐の玄覚(げんかく)という僧が詠んだ「証道歌(しょうどうか)」などが知られています。

「禅林類纂」の場合「粉骨砕身するも此の徳に報い難し」という文言があります。その意味は「骨が粉になり身が砕けまで尽力しても御仏の功徳には報い難い」。現代語訳は「粉骨砕身の努力をしても、いまだ仏の徳に報いられない」となります。

「仏の功徳(くどく)」とは、仏の恵みや御利益(ごりやく)のはたらきをいいます。「粉骨砕身するも此の徳に報い難し」とは「どんなに努力しても御仏の功徳に報いるのは難しい(それほど御仏の功徳はありがたい)」という反語的な意味をあらわします。

一方、「証道歌」には「粉骨砕身未だ酬ゆるに足らず。一句了然として百億を超う」という文言があります。意味は「どんなに尽力しても(御仏の恩義には)報い足りない。御仏の教えは一句を聴くだけでも百億年を超える修行に匹敵する価値がある」となります。

「砕身粉骨」「砕骨粉身」「粉身砕骨」と表記することも

古い四字熟語にはよくあることですが、「粉骨砕身」には漢字の順序を入れ替えた「砕身粉骨」「粉身砕骨」「砕骨粉身」などの使用例もあります。いずれも古い文献に見られる言葉で、現在では「粉骨砕身」以外は使われていません。

「粉骨砕身」のビジネス上での使い方

仕事 続かない
一般に古代中国発祥の四字熟語は難解で比喩的な要素が強く、現代のビジネスシーンではあまり使われなくなっています。そんな中で「粉骨砕身」は日本人好みの努力至上主義や精神論にかなう言葉として今でもビジネスや教育現場などでよく使われています。

たとえば新任者が就任の挨拶で「粉骨砕身の決意で全力を尽くす所存でございます」と表明したり、職務に失敗した場合の釈明で「粉骨砕身したものの力及ばず」と涙ながらに語ったりするシーンがよく見られます。

「粉骨砕身」のビジネスシーンでの例文

経営陣一同、弊社の経営再建に粉骨砕身して取り組みましたが、遺憾ながら本日をもって業務を休止いたすこととなり、まことにもって慚愧に堪えぬ思いであります。

先生は30年の長きに渡り粉骨砕身の精進を重ねられ、このたびめでたく紫綬褒章を受章されました。

日本代表チームは2020年の東京オリンピックに向けて粉骨砕身の思いでトレーニングを重ねてきただけに、オリンピック延期をいまだ受け入れがたい気持ちは察するに余りある。

「粉骨砕身」の類義語と例文

おおよそ
粉骨砕身と同じ意味を持つ類義語は数多くあります。ここでは四字熟語とそれ以外に分けて解説いたします。

四字熟語の類語

「粉骨砕身」と同じ意味の四字熟語には「刻苦勉励(こっくべんれい)」「刻苦精励(こっくせいれい)」「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」「一生懸命(いっしょうけんめい)」「精励恪勤(せいれいかっきん)」「粒粒辛苦(りゅうりゅうしんく)」などがあります。

「刻苦勉励」は「心身を苦しめるほど勉学や仕事に励むこと」。「刻苦精励」は「仕事や勉学に全精力を傾けて励むこと」を意味します。ほかにも「勉励」を「勉学」に変えた「刻苦勉学」や「刻苦精励」を前後逆にした「精励刻苦」という同義語もあります。

「不惜身命」は仏教用語が由来です。意味は「仏道に身も命もささげて惜しまないこと」。この言葉は平成6年に力士の貴乃花光司が横綱昇進に際し「相撲道に『不惜身命』を貫く所存でございます」と口上したことで流行語になりました。

「一生懸命」は「命をかけるつもりで物事に打ち込むこと」。「精励恪勤」は「力の限り学業や仕事に励むこと」を意味する言葉です。

「粒粒辛苦」は「一粒一粒の穀物は農民の努力と苦労のたまものである」という意味の言葉です。それが転じて「努力や苦労を重ねること」「小さな努力と苦労の積み重ねがあってこそ仕事は成し遂げられる」などをあらわす言葉になりました。

「粒粒辛苦」の例文

春の水害では多くの田畑が冠水したが、粒々辛苦の結果、無事に収穫の秋を迎えることができた。

その他の類語

「粉骨砕身」は四字熟語ならではの仰々しい意味をあらわす言葉です。二字熟語では言葉としてのニュアンスは希薄になりますが、「専心」「専念」「鋭意」などを類義語としてあげることができます。

「専心」は気持ちを集中してものごとに打ち込むこと。「専念」も「専心」と同じ意味になります。「鋭意」も同様に「気持ちを集中して懸命に努力すること」を意味する言葉です。「鋭意」は単独ではあまり使わず、「鋭意努力する」という表現で用いられます。

「粉骨砕身」の対義語と例文

「粉骨砕身」と逆の意味を持つ対義語としては、「放縦懶惰(ほうしょうらんだ)」「放逸遊惰(ほういつゆうだ)」「惰気満々(だきまんまん)」などをあげることができます。

「放縦懶惰」は「わがまま勝手にふるまい、仕事も勉学もせず遊興にふけること」という意味です。同じ意味のバリエーションに「放逸遊惰」「遊惰放逸(ゆうだほういつ)」があります。

「放逸」と「放縦」は「好き勝手にふるまうこと」を意味する言葉です。「遊惰」は「やらねばならぬことをせずにダラけて遊びほうけること」をいいます。「惰気満々」は「何もする気がなくダラけた気分に満ちあふれていること」を意味します。

「放縦懶惰」の例文

彼は優秀な男だったが、不運な事故で家族を失ってからは放縦懶惰の限りを尽くすようになった。

「粉骨砕身」の英語表現

ビジネスホン
「粉骨砕身」の英語表現としては、「commit」「do one’s best」「do the best 」「make every effort to」などをあげることができます。

「commit」は「罪を犯す」「悪事をはたらく」など悪い意味の多い言葉ですが、ほかにも「委任する」「責任を持つ」「表明する「全力を傾ける」「最大限の努力をする」などの意味があります。

「do one’s best」や「do the best 」は文字通り「ベストをつくす」意味ですが、実は「やれるだけのことはやる」というニュアンスが強く、決意表明としては消極的です。そのため「がんばれよ」という意味で「Do your best!」と誰かに言うことはありません。

他の人に「がんばれ!」と言いたいときは「Good luck!」が良いでしょう。「最大限の努力をする」という場合は「make every effort to」がよく用いられます。

まとめ この記事のおさらい

  • 「粉骨砕身」は「骨が粉になり身が砕けるまで努力すること」をあらわします。
  • 「粉骨砕身」の類義語には「粒粒辛苦」「専心」などがあります。
  • 「粉骨砕身」の対義語には「放縦懶惰」などがあります。
  • 「粉骨砕身」の英語表現には「commit」「do one’s best」「make every effort to」などがあります。