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ここでは「いみじくも」という言葉について解説いたします。
「いみじくも」は古くからある言葉です。現代の日常生活で使われることはめったにありません。ただしビジネス系のニュース記事や、年配者との会話では比較的接する機会が多く、意味を知らないと「いやしくも」と勘違いしてしまう場合があります。
そこで今回は「いみじくも」という言葉に着目。意味やくわしい使い方、類義語や英語表現などについて多角的に解説してゆきます。重要なシーンで「いみじくも」を見聞したときに恥ずかしい勘違いをしないためにも最後までお読みいただければ幸いです。
「いみじくも」の意味と使い方
「いみじくも」は、「実にうまく」「適切に」などの意味をあらわす言葉です。おもに他者の発言や文章について「要点や特徴を的確にとらえてうまく表現できている」と賞賛する際に使う言葉です。
具体的な使い方としては「社長がいみじくもおっしゃったように、新型ウイルスの感染拡大は世界経済に大打撃を与えております」といった形で用いられます。
「いみじくも」の語源
「いみじくも」の語源は「忌む(いむ)」とされています。これは「忌み嫌う」の「忌み」と同じです。「いみじ」は「忌む」の形容詞で、「忌まわしい」「不吉に感じるほど程度が甚だしい」という意味をあらわします。
やがてそれが転じて、悪い意味だけでなく、良い意味でも「程度が甚だしい」ことをあらわすようになり、ついには「素晴らしい、上手だ」という全く逆の意味に変化しました。
「いみじくも」は「いみじ」の連用形になります。「いみじく」+助詞の「も」ではなく、「いみじ」の連用形が「いみじくも」なので、品詞分解はできません。
「いみじくも」の意味に「忌む」のネガティブなニュアンスはなく、「まことにうまく」「適切に」という賞賛に近い肯定的な表現として用いられます。
「いみじくも」と「いやしくも」の違い
「いみじくも」とよく似た言葉に「いやしくも」があります。両者は字面と発音が似通っているために、ややもすると混同されがちですが、意味や語源は全く異なる言葉ですから、使い分けに注意が必要です。
「いやしくも」は、形容詞の「いやし」の連用形に助詞の「も」を連結した言葉です。もともと「卑下する」「見下す」というニュアンスの言葉でしたが、「卑下しながらも本心では高い自負心を抱いている」という裏腹な気持をあらわす用法もあります。
古代の日本語は漢字の意味とは無関係に読みで文字を当てていたので、「いやしくも」も「卑しくも」と読みが同じ「苟(いやしくも)」という漢字が当てられるようになりました。
その結果、「いやしくも」に「苟」本来の意味となる「かりそめに」「まことに」「もしも」「あるいは」などの意味合いが上乗せされ、「卑下する」というニュアンスが徐々に希薄化したものと考えられています。
現在では「いみじくも」も「いやしくも」も共にひらがなで用いられます。さらに「いみじくも」の現在の意味に「忌」という漢字のニュアンスがないのと同様に、「いやしくも」にも「卑」という漢字のニュアンスはなくなっています。
「いやしくも」の使用例をあげると、「いやしくも教師たる者が生徒にそのようなことをすべきではない」という言い回しで用いられます。この場合「いやしくも教師たる者」は「仮にも教師たる者」と同じ意味になります。「卑しい教師」ではありません。
「いみじくも」の誤用、注意点
「いみじくも」を日常生活で使う機会はそれほど多くありません。そのため誤った使い方をしても気づきにくい問題があります。「いみじくも」を使うときには誤用を避けるためにも以下の点に注意しましょう。
「いみじくも」は漢字で書かない
「いみじくも」の語源は前述したように「忌みじ」になります。
ただし現代では「忌みじくも」と漢字で表記せず、ひらがなで使うのが一般的です。意味的にも「忌」のニュアンスはなく、「実にうまく」「適切に」という意味で使われることに注意してください。
「偶然にも」という意味で使うのは誤用
最近、「いみじくも」を「偶然にも」の意味に誤用する例が少なからず見うけられるようになりました。一例をあげれば「いみじくも彼女の父と私の母が同じ日に亡くなった」というような使い方をされるケースです。
これは「偶然にも彼女の父と私の母が同じ日に亡くなった」という意味で言った誤用です。この「いみじくも」を、正しい意味の「実にうまく」に置き換えると、「実にうまいことに彼女の父と私の母が同じ日に亡くなった」という変な意味になってしまいます。
この場合は「いみじくも」ではなく「奇しくも」に置き換えて、「奇しくも彼女の父と私の母が同じ日に亡くなった」と表現すると意味の通る自然な文章になります。
「いみじくも」のビジネス上での使い方
「いみじくも」には相手の発言を肯定して持ち上げるニュアンスがあります。そのためビジネス上ではよく使われる傾向があります。
以下にビジネスシーンを想定した例文をふたつあげてみましょう。
このように「いみじくも」には肯定的なニュアンスがあること、文中で用いる際にはひらがなで表記することを心がけてください。
「いみじくも」の類義語と例文
「いみじくも」と同じような意味を持つ類義語としては、「うまく」「首尾良く」「巧みに」「的確に」「見事に」などをあげることができます。いずれも言葉通りの意味で、日常生活でもよく使われます。
「首尾良く」の例文
「いみじくも」の対義語と例文
「いみじくも」と逆の意味を持つ対義語はありません。対義語に近い言葉としては「迂闊(うかつ)」「おざなり」「ぞんざい」「なおざり」などがあげられます。「おざなり」と「なおざり」は意味を混同しやすいため使い分けに注意が必要です。
「おざなり」と「なおざり」の例文
「いみじくも」の英語表現
「いみじくも」に相当する英語表現としては、「みごとに」を意味する「admirably」、「適切に」の意味の「aptly」、「表現がうまい」「適切な」を意味する「felicitous」、「ふさわしい」を意味する「appropriately」などがあります。
また会話よりも文章でよく用いられる言葉で「非常に美しく」「絶妙に」という意味の「exquisitely」もあげられます。
「felicitous」の例文
慎重な社長と従順な部下の組み合わせは、ビジネスの成長に理想的とはいえない。
彼の適切な言い回しは、現在の状況を我々に理解させるのに役だった。
まとめ
・「いみじくも」は「実にうまく」「適切に」などの意味をあらわす言葉です。
・「いみじくも」の語源は「忌みじ」の連用形です。
・「いみじくも」と「いやしくも」はよく混同されますが、意味は全くちがいます。
・「いみじくも」の類義語には、「うまく」「首尾良く」「巧みに」「的確に」「見事に」などがあります。
・「いみじくも」の英語表現には「admirably」「aptly」「felicitous」「appropriately」「exquisitely」などがあります。