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この記事では、「なし崩し」の意味や使い方、類語、対義語、英語表現について解説します。
「なし崩しになって、計画は水の泡さ」など「なし崩し」という言葉はよく耳にしますが、ほとんどの場合、間違った意味で使われているのをご存じでしょうか?
「なし崩し」はビジネス上でも使うことのある言葉です。この記事を通して、「なし崩し」の正しい意味や使い方を理解して、社会人としてスキルアップにつなげてください。
「なし崩し」の読み方・意味・使い方
「なし崩し」とは、「物事を少しずつかたづけていくこと」の意味で、「なしくずし」と読みます。
「なし崩し」の語源
「なし崩し」の「なし」は「無し」ではありません。漢字では「済し」と書き、借金を「返済」する意味で、「崩す」は、少しずつ崩していくイメージです。
つまり、「済し崩し」とは、本来は「借金を少しずつ返済する」という意味でした。
そこから、借金に限らず、「物事を少しずつ片付けていくこと」の意味が派生したようです。
ところで、「なし崩し」の正しい意味を知って、どう思いますか?全く違う意味で解釈していた人も、多いのではないでしょうか。
「なし崩し」は、誤用の多い言葉のひとつで、日本人の約20%の人しか正しい意味を知らないという結果が報告されています。
「なし崩し」をネガティブな意味で使うのは誤用
平成29年度に文化庁が実施した「国語に関する世論調査」の中で、「なし崩し」に関して以下のような質問がありました。
質問:どちらの意味だと思いますか?
・なし崩し(例文:借金をなし崩しにする)
(ア):なかったことにすること | 65.6% |
(イ):少しずつ返していくこと | 19.5% |
(ウ):(ア)と(イ)の両方 | 1.3% |
(エ):(ア)と(イ)とは、全く別の意味 | 5% |
わからない | 8.5% |
このように、「なし崩し」を「なかったことにすること」の意味で理解している人が、約65%で、両方の意味や別の意味で使っている人も約6%いるのです。
また、年代別では「なかったことにすること」と解釈している人がもっとも多いのが50代で、72.8%にも達していました。
このように、「なし崩し」を「なかったことにすること」の意味で使うのは誤りで、同様に、「うやむやにする」「曖昧にする」「悪い方へ進む」などネガティブな意味での使い方も誤用になります。
・担当者の責任が問われないまま、どうやら会議はなし崩しになりそうです。
・結婚の約束が、いつのまにかなし崩しにされてしまいました。
・借金返済の約束はなし崩しになり、今は音信不通の状態です。
「なし崩し」をネガティブな意味で解釈していた人には、上記の文章には違和感がないかもしれません。しかし、「なし崩し」の正しい意味は、「物事を少しずつかたづけていくこと」や「借金を少しずつ返済すること」です。
・一度に変えるのではなく、なし崩しに変更するのが得策です。
・憲法を改正するのはハードルが高いので、解釈をなし崩しにするのが賢いやり方です。
・地道に働いて借金をなし崩しにしました。
正しい表現の方が誤用のように感じる人もいると思いますが、これを契機に「なし崩し」の意味をきちんとリセットしてください。
「なし崩し」のビジネス上での使い方
ビジネス上においても、「なし崩し」を誤用しているケースは少なくありません。「例の企画、なし崩しになったみたいだよ」と言っている人も多いはずです。
ビジネス上では「なし崩し」を、以下のように使います。
・新商品の売れ行きは上々ですから、このままなし崩しで進めてください。
・銀行からの借入金は、なし崩しに返済していきましょう。
「なし崩し的に」の意味と例文
「なし崩し」は、「なし崩し的に」という表現で使われることが多くあります。
「なし崩し的に」とは、徐々に勢いが増す中で物事を推し進めるさまの意味です。
この場合、新規事業が軌道に乗ったら、最終の目標に向かって少しずつ着実に進んでいくような意味になります。
この場合の「なし崩し的に」は、少しずつ既成事実を重ねていく意味になります。
「なし崩し」の類義語と例文
「なし崩し」の類語としては、「徐々に」「じっくり」「じわじわ」「少しずつ」「一歩ずつ」などがあります。
少しずつ進行したり変化するさま。
例文
・新しいシステムへの移行は、来月から徐々におこないます。
落ち着いてゆっくり物事をおこなうさま。
例文
・性急に答えを出すのではなく、じっくりと課題を分析する必要があります。
物事がゆっくりと確実に進行するさま。
例文
・経済が発展する一方で、環境破壊がじわじわ進んでいきました。
1回の分量は少ないが、複数回にわたって進行していくこと。
例文
・苦手な英語も、生活していくなかで少しずつ話せるようになるものです。
少しずつではあるが、着実に進めていくさま。
例文
・失敗を恐れずに、一歩ずつ先に進むことが大切です。
また、「鼠が塩を引く(ねずみがしおをひく)」という故事も、「なし崩し」の言い換えとして考えられます。
この意味は、ネズミが塩を引いていくのは少量ずつだが、度重なれば多量になることから、小さなことも積もれば大きなものになるたとえです。
・「鼠が塩を引く」というように、何事も小さな努力の積み重ねが大切です。
「なし崩し」の対義語と例文
「なし崩し」の対義語としては、「急速に」「一気に」「手っ取り早く」などがあります。
変化が素速くおこなわれるさま。
例文
・デジタル技術が急速に進み、私たちの暮らしは大きく変わっています。
途中で休まず物事をおこなうさま。
例文
・彼の会社は画期的な商品で、一気に業界のシェアを拡大しました。
煩雑な手間がかからず、すぐに実施できるさま。
例文
・あれこれ心配するよりも、まずは手っ取り早く状況を把握することです。
「なし崩し」の英語表現
「なし崩し」の英語表現には、「少しずつ」という意味の「little by little」や「徐々に」という意味の「gradually」があります。
なし崩し的ですが、彼は自分の技術を確実に磨いています。
・The number of staff gradually increased over these years.
ここ数年でスタッフの数がなし崩しに増えています。
まとめ この記事のおさらい
・「なし崩し」は、「物事を少しずつかたづけていくこと」の意味。
・「なかったことにすること」の意味で理解している人が、約65%。
・「なし崩し」をネガティブな意味で使うのは誤用。
・「なし崩し的に」とは、徐々に勢いが増す中で物事を推し進めるさまの意味です。
・「なし崩し」の類語には、「徐々に」「じっくり」「じわじわ」「少しずつ」「一歩ずつ」「鼠が塩を引く」などがあります。
・「なし崩し」の対義語は、「急速に」「一気に」「手っ取り早く」など。
・「なし崩し」の英語表現には、「little by little」や「gradually」があります。