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ここでは「固定概念」という言葉について解説いたします。
「固定概念」はさまざまなシーンでよく使われる言葉です。意味は聞かなくてもわかる、という人も多いはず。でも、「固定概念」が実は誤用だということはご存じでしょうか。
実際、「固定」と「概念」という2つの熟語の意味を組み合わせると「凝り固まったおおまかな考え」という不思議な意味になってしまいます。では、正しい表現は何でしょうか。
ここでは誤用の「固定概念」の元となった正しい言葉を含めて、くわしく解説いたします。どうぞ最後までお読みください。
「固定概念」の読み方・意味・使い方
「固定概念」は「こていがいねん」と読みます。
よく「概念」の「概」を「既読」の「既」とまちがえて「こていきねん」と誤読する人もいますが、木偏の「概」は「き」とは読めません。「概」の音読みは「がい」。訓読みでは「概ね」と書いて「おおむね」と読みます。
次に固定概念の意味は、前述したように2つの熟語の意味にしたがうと「凝り固まったおおまかな考え」になってしまいます。でも、一般には「心の中に潜在して、他人の意見や外界の状況によっても変化しない強固な考え」という意味で用いられています。
「固定概念」は「固定観念」の誤用
もともと「固定概念」という言葉は、「固定観念」の誤字が広まったもの。したがって「固定概念」の意味は文字通りの「凝り固まったおおまかな考え」ではなく、「固定観念」と同じ意味の言葉として流布しています。
「固定概念」と「固定観念」の意味の違い
「固定観念」の「観念(かんねん)」という言葉は、もともと華厳経などの仏教用語として広まりました。意味は「精神を集中して極楽浄土や仏教の真理について心に思い描くこと」をあらわします。
この「観念」という言葉を、明治時代の思想家、西周(にしあまね)が、西洋哲学のイデア(idea)の訳語に当てました。それ以後「観念」の意味は「事物に対して抱く意識の内容」「目に見える形や映像のない、主観としての意識」などをあらわすようになりました。
「観念」と「概念」は類義語のように感じられますが、厳密には「概念」は「事物や論理の一般的な性質」「ある事物のおおまかな内容」ということを意味します。一方、「観念」は「事物に関する心の中の意識や思考の内容」をあらわす言葉です。
ただし「固定概念」と「固定観念」に限っていえば、意味の違いはありません。前述したように「固定概念」は、もともと「固定観念」の誤字から生まれた言葉です。そのため意味的には「固定観念」と同じ言葉として用いられます。
おそらく「固定概念」は、「固定観念」と「既成概念」の混同から生まれたものでしょう。ちなみに「既成概念」とは「世の中に広く浸透している考え方や事柄」をあらわします。その意味では「既成概念」にとらわれることを「固定概念」ということもできます。
「固定概念」のよくある使われ方
「固定概念」は本来「固定観念」の誤字ですが、それにもかかわらず正しいほうの「固定観念」よりも「固定概念」のほうが広く使われているのが現状です。
そこで本来は誤用ではありますが、ここでは固定概念の一般的な使い方について解説いたします。大切なことなので何度もいいますが、ほんとうは「固定観念」が正しい言葉です。したがって以下に示す用例は、本来は「固定観念」の使い方だとお考えください。
固定概念が強い
「固定概念が強い」とは、「意識や考えが非常に強く凝り固まっていること」をあらわします。固定概念が強い人は思い込みがはげしく、他人が何を言っても全く聞き入れようとしません。そのようなネガティブな意味合いで使われる表現です。
固定概念を捨てる、固定概念を壊す
「固定概念を捨てる」とは、「凝り固まった意識や考えをなくすこと」を意味します。自分の考えにこだわらず、発想を柔軟に転換することをあらわすときに用いられます。
一方、「固定概念を壊す」とは、自分の考えや先入観を「捨てる」よりもさらに積極的に全否定して、既存の意識を180度転換することを意味します。同じ意味で、「固定概念を覆す」という言い方もよく用いられます。
固定概念にとらわれる
「固定観念にとらわれる」は、「意識や考えが凝り固まっていて自由な発想や行動ができない」という意味で使われます。「とらわれる」とは「つかまること」「とらえられること」をあらわす言葉です。
「固定観念にとらわれる」とは「古い考えに固執する」と同時に「古い考えを捨てられない」というニュアンスもあります。反対に「固定概念にとらわれない」とは「常識や先入観にこだわらず、自由な発想や考え方ができること」を意味します。
「固定概念」の類義語と例文
「固定概念」と同じ意味の類義語としては、本来の正しい言葉である「固定観念」があげられます。ほかには「固着観念」「思い込み」「先入観」などもあげることができます。
「固着観念」は心理学の用語で、意味は「固定観念」と同じです。従って「固定概念」とも同じ意味になります。
「思い込み」は「深く信じること」「固く心に決めること」などをあらわします。
「先入観」は何かを評価したり認識したりするときに、誤った判断の原因になる知識や意識のことをいいます。固定観念とは少し意味が違いますが、見方を変えれば「何かを評価したり認識したりするときに、誤った判断の原因になる固定観念のこと」ともいえます。
「思い込み」の例文
「先入観」の例文
「固定概念」の英語表現
「固定概念(固定観念)」を意味する英語表現としては、「fixed idea」「stereotyped」「idee fixe」などをあげることができます。
「fixed idea」の「idea」は日本語でも「アイディア」というカタカナ英語で使われますが、英語の「idea」には「考え方・思想」という意味もあります。先述した西周が「観念」という訳語を当てたイデア(idea)は「アイディア」の語源です。
「stereotyped」も「固定観念」をあらわす言葉です。語源は印刷用の「stereotype」という鉛の活版のこと。1ページ分を1枚の鉛板で印刷し、個別の文字は変更できないことから、定型や典型、月並みな考え方を意味するようになりました。
「idee fixe」 は、「fixed idea」のフランス語が語源です。英語では学術用語に近い言葉で、一般にはあまり使われません。
まとめ
「固定概念」は「心の中に潜在して、他人の意見や外界の状況によっても変化しない考え」という意味でよく用いられる言葉です。
「固定概念」は「固定観念」の誤字から生まれた言葉です。
「固定概念」の意味は「固定観念」と同じです。
「固定概念」の類義語としては「固定観念」のほかに「固着観念」「思い込み」「先入観」などをあげることができます。
「固定概念」の英語表現には、「fixed idea」「stereotyped」「idee fixe」などがあります。