雇用保険とは|加入条件・失業給付金の目安・再就職手当などについて解説

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失業したときに給付金がもらえる雇用保険制度は、転職活動が長引いたときなどに心強いものです。しかし、転職経験がない人などは、制度について詳しく理解していないことが多いのではないでしょうか。
この記事では、雇用保険の概要や加入条件、失業したときにもらえる給付金の目安などを解説します。

雇用保険とは

失業時に「失業給付金」がもらえる保険制度

雇用保険は、労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業した人や教育訓練を受けられる人等に対して、失業等給付を支給する制度です。

柱となっている制度は「失業等給付」の「基本手当」です。一般的に「失業手当をもらう」というような呼び方をされているのがこれにあたります。
基本手当は、職を失った人が一定の条件のもとで決まった期間給付金を受給することができる制度です。給付金が支給されるための条件や給付額の目安については、後の章で詳しく説明します。

雇用保険には、基本手当のほかにも、高年齢雇用継続給付、育児休業給付金、介護休業給付金といった給付金を受けることができる制度があります。

役割①:失業者の生活を安定させる

一人暮しで自分で生計を立てている人、家庭の中心として家族の生計を担っている人などが職を失った場合、自分自身や家族の生活が立ち行かなくなります。
雇用保険は失業中の人やその家族の基本的な生活を安定させる役割を持っています。

役割②:失業者の再就職を促進させる

転職活動には、書類作成や服装、備品の準備、説明会や面接場所へ移動する交通費など、なにかとお金がかかります。転職に必要な資格をとるにしても、勉強のための書籍や受験料などがかかります。

すぐに収入を得ることを優先して本意ではないところに就職をしてしまったり、満足な就職活動ができないということがないように、再就職のためのサポートとしての役割も雇用保険は持っています。

基本手当以外の給付金

いわゆる失業手当と言われる基本手当のほかにも、雇用保険から給付金が支給される制度があります。代表的なものには「高年齢雇用継続給付」「育児休業給付金」「介護休業給付金」があります。

▼高年齢雇用継続給付金
60歳到達時点に比べて賃金が75%未満で働き続ける人が、一定の受給要件を満たすと受けられる給付です。高年齢者の就業意欲を維持、喚起し、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的としています。
高年齢雇用継続給付についてのリーフレット
※給付を受けるには一定の受給要件を満たす必要があります。

▼育児休業給付金
1歳(一定の場合は1歳2か月。さらに保育所等における保育の実施が行われないなどの場合は1歳6か月又は2歳。)未満の子を養育するために育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすと育児給付金の支給を受けることができます。
育児休業給付についてのリーフレット

▼介護休業給付金
対象家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の要件を満たすと介護休業給付金の支給を受けることができます。
介護休業給付についてのリーフレット

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は保険料率によって決められます。保険料率は毎年見直しが行われ、平成31年度の雇用保険料率は次の通りです。

労働者負担 事業者負担 保険料率合計
一般事業 3/1,000 6/1,000 9/1,000
農林水産・清酒製造の事業 4/1,000 7/1,000 11/1,000
建設の事業 4/1,000 8/1,000 12/1,000

これに当てはめると、一般事業に勤務して給与が20万円の場合、労働者の負担額は「20万円×0.003=600円」となります。

雇用保険の基本的な加入条件

「正規雇用」の雇用保険の加入条件

企業は、労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要です。したがって正規雇用をされているなら、雇用保険の加入対象になります。

「非正規雇用」の雇用保険の加入条件

パートやアルバイトなどの非正規雇用でも、「31日以上働く見込みであること」「1週間に20時間以上働いていること」に該当すれば、雇用保険の加入対象です。

適用基準

(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。
期間の定めがなく雇用される場合
雇用期間が31日以上である場合
雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 ( 注 )
[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。

(2)1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。

厚生労働省ホームページ

会社が雇用保険に加入してくれないときは

雇用保険に加入しているか確かめるには

前出の通り、パートやアルバイトなど、フルタイム以外の働き方をしている人でも雇用保険の加入対象になっています。雇用保険は労働者負担分が給与から天引きされるのが一般的ですので、給与明細に雇用保険の項目がない場合は雇用保険に加入していない可能性があります。給与明細を確認して雇用保険が引かれていない場合には、会社の人事担当者などに確認することをお勧めします。

会社が雇用保険に加入していないときはどうするか

加入条件を満たす労働者を一人でも雇用していれば、企業は雇用保険に加入する義務があります。義務を果たさない企業には罰則もあります。

勤務先の会社が雇用保険に加入しているがどうかは、一般的に給与明細を見て雇用保険料が引かれているかどうかを確認すればわかります。しかし、最悪の場合、給料から引いているにも関わらず会社が費用保険を納めていなかったということも考えられます。正確に調べるには、ハローワークの窓口で調べてもらうのが一番です。

また、労災保険と雇用保険の加入事業場をインターネットで調べることもできます。

労働保険適用事業場検索

もし、会社が雇用保険に加入していないことが分かったら、まずはハローワークに相談するのがよいでしょう。弁護士に相談するのも一案です。まずは無料法律相談などを利用して相談するのがお勧めです。

雇用保険の失業給付金はどのくらいもらえる?

雇用保険(基本手当)のおおよその受給額

雇用保険は、離職前の給与の総支給額に基づいて決まります。正確な額は離職票に基づいて計算されますが、おおよその額は次の通りです。

・平均して月額15 万円程度の場合支給額は月額11万円程度
・平均して月額20 万円程度の場合支給額は月額13.5万円程度(離職時の年齢が60歳以上65歳未満の方は月額13万円程度)
・平均して月額30 万円程度の場合支給額は月額16.5万円程度(離職時の年齢が60歳以上65歳未満の方は月額13.5万円程度)※ およその計算式は、(離職前6か月の給与の総支給額の合計÷180)×給付率です。なお、給付率は、離職時の年齢、賃金により、45%~80%になります。
※ 給付額には上限・下限があります。

給付開始時期や給付期間は条件によって違う

申請手続きをしてから7日間は「待期期間」といって失業手当は支給されません。また、転職理由が自己都合の場合は、待期期間満了後3ヶ月間の給付制限があり、この期間は失業手当を受給できません。倒産や解雇など会社都合の退職では、3ヶ月間の給付制限はなく受給することができます。

雇用保険の基本手当を受給することができる日数は、受給資格に係る離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間及び離職の理由などによって決定され、90日~360日の間でそれぞれ決められます。

基本手当の所定給付日数

就職先が早く決まれば「再就職手当」がもらえる

失業手当の受給中に就職が決まった場合は失業手当がもらえなくなって損なのではないかと考えがちですが、一定の要件に該当する場合は「再就職手当」が支給されます。

・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の人は、所定給付日数の支給残日数×70%
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の人は、所定給付日数の支給残日数×60%

雇用保険についてのまとめ

  • 雇用保険は失業時に「失業給付金(失業等給付の基本手当)」がもらえる保険制度です。
  • 雇用保険には、基本手当のほかにも、高年齢雇用継続給付、育児休業給付金、介護休業給付金といった制度があります。
  • 雇用保険料は保険料率によって決められます。平成31年度の一般事業の労働者負担率は「3/1,000」です。
  • パートやアルバイトでも「31日以上働く見込みであること」「1週間に20時間以上働いていること」に該当すれば、雇用保険の加入対象です。
  • 給付期間や受給額は、退職理由、年齢、離職時の賃金などによって違ってきます。
  • 基本手当の受給残日数を1/3以上残して就職が決まると「再就職手当」が支給されます。