ここでは「独壇場」という言葉について解説いたします。

人前で「独壇場」を「どたんば」と読んだら、思いきり笑われてしまうことでしょう。

でも、今では誰もが正しいと思っている「独壇場」という言葉も、実は誤りが定着してしまったもの。漢字も読みも「独壇場」はもともと間違いとされていました。

「悪貨は良貨を駆逐する」と言いますが、「悪い言葉」も「良い言葉」を駆逐しやすい傾向があります。

そこで、ここでは「独壇場」について、もともと正解だった言葉や、「土壇場」との違いも含めて多角的に解説してゆきます。

どうぞ最後までお読みください。

独壇場の読み方・意味・使い方

「独壇場」は「どくだんじょう」と読みます。「どたんば(土壇場)」と勘違いしないように気をつけましょう。また「どくだんば」も誤った読み方です。そう覚えていた方は、「独壇場=どくだんじょう」と頭にインプットし直してください。

「独壇場」は「すべてがその人の思いどおりにできる特定の場所や分野のこと」「ある分野や状況の中で、その人が他を寄せ付けないほど高い力を発揮すること」などの意味をあらわします。

「独壇場」は、もともとは「独擅場(どくせんじょう)」だった

「独壇場」はもともと「独擅場」という言葉の誤った読みから生まれた言葉です。「独擅場」は「どくせんじょう」と読みますが、「擅」(せん・左は「てへん」)という字が一般的ではなかったため、「壇」(だん・左は「つちへん」)と混同されるようになりました。

その結果、「独壇場(どくだんじょう)」という誤った用法が広まることになり、もともとの「独擅場(どくせんじょう)」という言葉を駆逐してしまうようになりました。

なぜ正解の「独擅場(どくせんじょう)」ではなく「独壇場(どくだんじょう)」という間違った造語のほうが社会に広く浸透したのでしょうか。それにはいくつかの理由が考えられます。

まず第一の理由として、もともと「擅(せん)」という字は知名度が低く、「壇(たん)」のほうが「教壇」「論壇」「画壇」などの言葉でよく知られていたことがあげられます。

また「つちへん」の「壇(たん)」は「土を盛り上げて一段高くした台」「神事や祭祀などの儀式を行う場所。壇上にならぶほど高貴な人や専門家の集団」などの意味をあらわす言葉です。

そのため、独擅場(どくせんじょう)」が意味する「一人の人間がやりたいようにできる場所」が、比喩的な意味での「独り舞台」と曲解されやすかったことも、「独壇場(どくだんじょう)」が広く浸透した理由のひとつと考えられます。

その意味で「独壇場(どくだんじょう)」は、語源ともいえる「独擅場(どくせんじょう)」よりも「独り舞台」のニュアンスが強まっていると言うこともできます。

「独擅場」と「土壇場」の違い

先述したように、独壇場(どくだんじょう)は独擅場(どくせんじょう)の誤りから生まれた言葉です。

一方、「土壇場(どたんば)」は「進退きわまったぎりぎりの状態」「重大な決断をせまられる、待ったなしの場面」などを意味する全く別の言葉です。

「土壇場」の「土壇」とは、死刑囚を斬首するために土を盛って作られる死刑台のこと。死刑囚にとって土壇の上に引き出されるのは刑が執行されるときです。つまり絶体絶命のピンチを意味します。それが土壇場の語源です。

最近では、宴会やイベントの参加予定者が、開催直前にキャンセルすることを「ドタキャン(「土壇場でキャンセル」の略)といいますが、この場合の「ドタ=土壇場」も単なる「ギリギリ」ではありません。

ここでキャンセルされるとキャンセル料が発生したり、予定が成り立たなくなったりする取り返しのつかないタイミング、という意味になります。

また逆に当日まで欠席予定だった人が、イベントの開催直前になって突然参加することを「ドタ参」ということもあります。

独壇場のビジネス上での使い方

ビジネスの場で「独壇場」というときは、ほとんどが褒め言葉の意味になります。たとえば飛び抜けて優秀な人を称賛するとき、「課長はほんとうに話し上手ですよね。先日のプレゼンも課長の独壇場でした」というように表現します。

さらに「独壇場」は人間だけでなく、他の追従を許さない高品質の商品を開発生産している企業を称賛するときにも使えます。具体的には、「あの分野に関しては世界的にA社の独壇場ですね」といった言い方もできます。

注意していただきたいのは、「独壇場」は圧倒的な優位を示す言葉だということです。複数の人や企業をほめる場合は使いません。

具体的に言えば、「デジタルカメラ市場は日本メーカーの独壇場です」という言い方はできますが、「デジタルカメラ市場はキヤノンとニコンとソニーの独壇場です」とは言いません。

独壇場のメーカーが3社もあったら、「他の追従を許さない」という意味と矛盾することになるからです。ビジネスシーンで「独壇場」と言うと「独り舞台」の意味が強いことを忘れないように気をつけましょう。

独壇場の類義語と例文

独壇場と同じような意味を持つ類義語としては、「総なめ」「第一人者」「天下一品」「八面六臂」「独り舞台」「掌握」「得手勝手」などをあげることができます。

「総なめ」はほぼすべてのジャンルで勝利をおさめて、メダルや表彰状などを独占することです。

「第一人者」は「ある特定のジャンルや組織の中で最も優れた人」という意味の言葉です。

「天下一品」は世の中に比較できるものがいないほど優秀なことをあらわす言葉です。

「八面六臂」は一人で多方面にわたり活躍することをいいます。

「掌握」はものごとを自分の思いどおりにすることです。

「得手勝手」は他人の都合や迷惑を顧みず、わがまま勝手にふるまうことです。

「総なめ」の例文

今年の世界陸上選手権大会では アメリカの選手が世界新記録を連発して金メダルを総なめにした。

「得手勝手」の例文

今日の公聴会は2ヶ月も前から予定していたのに、今朝になって欠席すると言いだすのは得手勝手が過ぎるというものだ。

独壇場の英語表現

独壇場の英語表現にあたる言葉としては、「monopoly」「unchallenged」「unrivaled」などの言葉を使うことができます。

「monopoly」は「独占」「専有」「専売権」「独占会社」などを意味する言葉です。

「unchallenged」は「挑戦者がいない」「ゆるぎない」などの意味を持つ言葉です。

「unchallenged」は以下のような表現で使用されます。

Toyota stands unchallenged as Japanese largest producer of cars.
トヨタ自動車は日本最大の自動車会社としてのゆるぎない地位を確立している。

「unchallenged」と意味も用法も同じ言葉に「unrivaled」もあります。上の用例の「unchallenged」を「unrivaled」に置き換えても通用します。

まとめ

「独壇場」は「すべてがその人の思いどおりにできる場所や分野のこと」「特定の分野や状況で他を寄せ付けないほど活躍すること」などの意味をあらわします。
「独壇場」は「独擅場(どくせんじょう)」を誤って表記したことから生まれた言葉です。
「独壇場」と「土壇場」は語源も意味も全く異なる言葉です。
「独壇場」は「独り舞台」の意味が強いため、複数の人や団体をまとめる形で使うのは正しい用法ではありません。