この記事では、「獅子身中の虫」の意味や使い方、類語、英語表現について考察します。

「獅子身中の虫」という表現を聞いたことはありますか?「獅子の体の中の虫」とは、どんな意味があるのでしょうか?

「獅子身中の虫」は、ビジネス上でも使われる言葉です。
この記事を通して、「獅子身中の虫」の意味や使い方をきちんと理解し、社会人としての知識を広げてください。

「獅子身中の虫」の読み方・意味・使い方

「獅子身中の虫」とは、「組織などの内部にいながら害をなす者や、恩をあだで返す者」の意味で、「しししんちゅうのむし」と読みます。

「獅子心中の虫」と覚えている人もいるようですが誤りです。「獅子身中の虫」と正しくインプットしてください。

「獅子」は、ライオンのことで、古代インドでは王の守護動物として崇められていました。
この獅子に寄生して獅子の体を蝕むのが、「獅子身中の虫」で、由来は仏教経典にあります。

「獅子身中の虫」の語源

「獅子身中の虫」は、仏教の経典「梵網経(ぼんもうきょう)」の中で使われています。
梵網経は、出家した人が守るべき戒律を説いたもので、この戒律の四十八番目に「比丘・比丘尼の菩薩弟子のために、繁縛の事をなすこと、獅子身中の蟲(むし)の、師子の肉を食ふが如し」という一文が出てきます。

「出家した僧侶や尼を逮捕させることがあれば、あたかも獅子が体内に入り込んだ虫によって、肉を食べられるようなものだ」と例えているのです。
つまり、僧侶と言いながら仏法を破壊するような者を、「獅子身中の虫」と呼んだのです。

このような仏教の戒めから転じて、「獅子身中の虫」は組織の内部にいながら組織に害をなす者の意味で使われるようになりました。

例文
・政治の世界は獅子身中の虫だらけなので、同じ党員でも軽はずみな言動は控えてください。

「機動戦士ガンダム」のガトーのセリフとしても知られる

「指導戦士ガンダム」と言えば、1978年から放映された人気アニメシリーズですが、この作品の中で「獅子身中の虫」というセリフが登場しています。

そのセリフを言うのが、地球連邦との戦いで敗れたジオンの残党である「アナベル・ガトー」です。「ソロモンの悪夢」とも呼ばれたガトーは、その後も強いカリスマ性を持ち地球連邦に戦いを挑んでいきました。

しかし、女性将校のシーマが地球連邦に寝返り艦隊を乗っ取りました。その光景を目の当たりにしたガトーは、「シーマ・・・獅子身中の虫め!」と叫んだのです。

「獅子身中の虫」は、ガトーの名セリフとしてガンダムファンに語り継がれています。

「獅子身中の虫」のビジネス上での使い方

「獅子身中の虫」は、「組織などの内部にいながら害をなす者や、恩をあだで返す者」の意味ですが、実際の会社ではどのような人のことを言うのでしょうか?

会社にいる「獅子身中の虫」とは

過重労働やパワハラなど「ブラック企業」は大きな社会問題になりましたが、逆に会社に害を及ぼす「獅子身中の虫」は、「ブラック社員」とも呼ばれ、企業にとっては頭の痛い問題になっています。

もっとも怖いのが「情報漏洩」をする社員で、会社にとっては大きなダメージになります。
また、酔って喧嘩をしたり器物を壊したりして警察沙汰になる社員も「獅子身中の虫」で、いつか大きなトラブルを引き起こす危険性があります。
大きな問題にはならなくても、部下に仕事を押し付けて何も責任をとらない上司や同僚の足を引っ張る社員なども、会社にとっては「獅子身中の虫」になるでしょう。
さらに、会社に対する愚痴だけで、自分のスキルを磨かない社員も「獅子身中の虫」と言えるかもしれません。

「獅子身中の虫」になるかどうかは、明確な判断基準はありません。しかし、「獅子身中の虫」になりそうな社員を早めに見出すことは、会社の発展のためにも必要なことですね。

「獅子身中の虫」の使い方

ビジネス上で「獅子身中の虫」を使う場合は、以下のように使います。

例文
・今回の社内機密文書が漏洩した件では、社内に獅子身中の虫がいるようです。
・会社再建のためには、社内に潜んでいる獅子身中の虫を一掃すべきです。
・獅子身中の虫を捜す前に、改善すべき問題が山積しています。

「獅子身中の虫」は、悪い意味での表現ですから、相手に対して「君は獅子身中の虫だね」と使うのは失礼になります。意味をしっかりと把握して使い方には注意が必要です。

「獅子身中の虫」の類義語と例文

「獅子身中の虫」の類語としては、「飼い犬に手を噛まれる」「恩を仇で返す」「軒を貸して母屋を取られる」「裏切り者」「内通者」「スパイ」などがあります。

飼い犬に手を噛まれる(かいいぬにてをかまれる)
日頃から面倒をみていた者から裏切られたり害をうけたりすること。

例文
・今回の社長交代劇は、まさに飼い犬に手を噛まれたといっても過言ではありません。

恩を仇で返す(おんをあだでかえす)
恩を受けた人に対して、感謝どころか害を与えるような仕打ちをすること。

例文
・親身になって面倒を見ていた部長を裏切るなんて、まさに恩を仇で返す行為としか思えません。

軒を貸して母屋を取られる(のきをかしておもやをとられる)
軒を貸しただけなのに母屋を取られることから、恩を仇で返すのたとえ。

例文
・人を疑うことを知らない母だけに、今回は軒を貸して母屋を取られるようなことにならなければ良いのですが。

裏切り者(うらぎりもの)
それまでの約束や信頼関係を捨てて、寝返るなどの行為をする者。

例文
・新商品の内容を他社の人間に話すことは、裏切り者と言われても仕方ない行為です。

内通者(ないつうしゃ)
内部で密かに敵に通じたり情報を漏らしたりする裏切り者。

例文
・これほど詳細に真似できるとは、社内に内通者がいるとしか考えられません。

スパイ
秘密裏に敵や競争相手の情報を得る人のこと。

例文
・社内調査の結果、派遣社員の女性が産業スパイだったことが判明しました。

「獅子身中の虫」の英語表現

「獅子身中の虫」を直訳すれば、「insects in the lion」になりますが、日本語のような意味にはなりません。英語では、「a snake in one’s bosom(胸の中のヘビ)」が、「獅子身中の虫」に近い表現です。
また、「裏切り者」という意味で「traitor」を使いこともあります。

・He stole all my money and fled away. I had nourished a snake in my bosom.
 彼は私のお金を全て持ち逃げしました。私は獅子身中の虫を育てていたのです。
・He was a traitor to his company.
 彼は、会社にとって裏切り者でした。

さらに、「悩みの種」という意味合いで、「a thorn in one’s flesh」という表現もあります。

・She was a thorn in his flesh.
 彼女は彼の悩みの種でした。

まとめ この記事のおさらい

・「獅子身中の虫(しししんちゅうのむし)」は、「組織などの内部にいながら害をなす者や、恩をあだで返す者」の意味。
・「獅子身中の虫」は、仏教の戒めが語源。
・「獅子身中の虫」は、ガンダムのガトーの名セリフ。
・「獅子身中の虫」の類語には、「飼い犬に手を噛まれる」「恩を仇で返す」「軒を貸して母屋を取られる」「裏切り者」「内通者」「スパイ」などがあります。
・英語では、「a snake in one’s bosom(胸の中のヘビ)」「traitor(裏切り者)」。