仁とは|意味・読み方・使い方・英語表現を解説。孔子の論語についても

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今回は「仁」という意味について解説します。

古代中国の教えである儒教において、人が目指すべき心のあり方の一つとされている言葉です。仁について学ぶことで、日々の過ごし方を見つめ直す機会になることでしょう。

本記事では、意味や使い方について詳しく解説していきます。

仁とは|意味・読み方・使い方

仁は「じん」と読みます。「思いやり」「いつくしみ」といった意味です。儒教の教えの一つで、他人に対して親しみや思いやりの心で接することで、共生を実現しようとする考え方です。仁の心を持つ人のことを「仁者(じんしゃ)」と言います。

儒教には「五常の徳」と呼ばれる徳目があります。

「仁・義・礼・智・信」で構成されており、社会の基盤となる倫理規定であると同時に、人々が目指す心のあり方でもあり、古代中国から根付いているものです。五常の徳の中において、「仁」は基本的な要素とされています。

仁の語源は、人間の姿を示す象形文字で、それが変化し、「人が二人」と書いて二人の人と人との間にある思いやりの心というのがもともとの意味だといわれています。そこから範囲が広がり、自分の身近にいる仲間との間での思いやりとなったのです。

日本語では、仁という言葉は単独で使用されることはほとんどなく、熟語やことわざなどの一部として使われることが多いです。

中国の思想家「孔子」の教えの一つ

儒教は中国の思想家である孔子を祖とする教えです。その思想を著わした『論語』の全499章のうち、58の章に「仁」の言葉が登場しており、孔子がいかに人という言葉を重んじていたかをうかがい知ることができます。

孔子は、『論語』のなかで「仁」を明確に定義しているわけではありません。そもそも儒教は実践倫理であり、原理や規定をケースバイケースで適用することを考察しています。したがって、質問してくる相手や事例に応じて柔軟に回答しています。

孔子の教えを現代のビジネスシーンに応用するならば、「仁」のある人というのは、組織のリーダーであるといえます。

思いやりの心を持っていれば、部下からの人望が厚く、適切な判断を行えるからです。

仁を含む故事・ことわざ

仁を含む故事成語の多くは、『論語』に由来しています。ここでは「巧言令色、鮮し仁」と「剛毅朴訥、仁に近し」の2つについて解説します。

巧言令色、鮮し仁

「こうげんれいしょく、すくなしじん」と読みます。「巧言」とは、言葉巧みであることで、「令色」とは、媚びへつらうような顔色のことです。「令」は新元号の令和の「令」と同じ意味で「良い」という意味で、「色」は顔色や表情のことを意味しています。

言葉巧みで、人に気に入られようと良い顔をしておべっかを使う者には、徳である仁の心が欠けているため、注意が必要であるという意味です。論語の学而篇に由来しています。

剛毅朴訥、仁に近し

「ごうきぼくとつ、じんにちかし」と読みます。「剛毅」とは、意志が強くてくじけないという意味で、「朴訥」は、無口で飾り気がないことです。

強い意志を持ち、無欲で素朴で口数が少ない人物が、仁に最も近い人であるという意味です。論語の子路篇に由来しています。

仁の類義語と例文

「仁」は「思いやり」という意味がありますので、同じ意味を持った熟語が類義語として使えます。ここでは「親切」「厚意」「人情」の3つについて解説していきます。

親切

「親切」とは、相手のためになるように、思いやりの心を持っていることです。「親が切ると書くのに、なぜ思いやりがあるのか」と疑問に思う人が多いですが、実はそういう意味ではありません。

「親」は「親しくする」という意味で使います。そして、「切」という漢字は、動詞や形容詞の働きをする漢字の下に付くと「とても」「非常に」という意味になります。すなわち、親切という熟語は「とても親しくする」という意味になるのです。

 

例文
・「道に迷っていると、親切な人が道案内をしてくれた。」
・「学費の保証人になってくれた伯父の親切に報いるためにも、大学では勉学に励むつもりだ。」

厚意

「厚意」とは、相手を思いやる気持ちのことです。ビジネスシーンにおいて、メールや手紙などで相手に感謝の気持ちを述べたり、相手からの気遣いを断ったりするさいに使われます。なお、ビジネスでは単なる親切心だけでなく、寄付金などの金銭が絡むことも多いです。

 

例文
・「平素は格別のご厚意を賜り誠にありがとうございます。」
・「せっかくのご厚意ではございますが、諸事情によりお断りいたします。お気持ちだけでもありがたく頂戴したいと存じます。」

人情

人がもともと持っている思いやりの心のこと。

例文
「下町に暮らす人々の人情あふれる様子は、時代が変わってもなくならないだろう。」

仁の対義語と例文

仁そのものには対義語はありません。しかし、「思いやり」の対義語として「薄情」「冷淡」「非情」の3つが挙げられます。

薄情

思いやりが薄く、冷たい様子のことを意味します。

例文
・「彼は薄情な人間だ。」

冷淡

人に対して使う場合は、冷ややかで思いやりがない様子のことをいいます。ものごとに対して使う場合は、熱心さがないといった意味になります。

例文
・「市役所の職員の冷淡な対応に憤りを覚えた。」

非情

人間らしい感情を持たず、冷たい様子のことです。

例文
・「試合に勝つために、監督が非情な采配を振った」

仁の英語表現

「仁」という言葉を英語で説明するための表現として、「Benevolence」という言葉があります。また、「思いやり」の英訳として「Consideration」という単語もあります。

Benevolence

「仁」は英語で「Benevolence」といい、慈悲心や善意などの意味を持ちます。18世紀にイギリスの道徳家によって、この言葉が仁という概念を説明するためにとして用いられました。また、対義語として「Malevolence(悪意)」という英単語もあります。

この単語は「bene」「vol」「ent」の3つに分解することができ、「bene」には「good」や「well」と同じく「良い」という意味があります。に「vol」は「will」に相当し、「意志」という意味で、entは「full」と同様に「たくさん」という意味です。これらをつなぎ合わせて、「良いことをたくさん行おうという意志」という意味になります。

Consideration

「Benevolence」が聞き慣れなくて覚えづらい場合は、「思いやり」を英訳するという手段もあります。それに相当するのが、「Consideration」という英単語です。「Consider」の名詞形で、「よく考える」「熟慮する」という訳で知られていますが、「斟酌(しんしゃく)する」という訳もあります。これは「相手の事情をよく考えて、適切な行動をとる」という意味があります。

まとめ この記事のおさらい

  • 「仁」とは「思いやりの心」のこと。
  • 儒教の祖である孔子が著書『論語』で説いた教えで、人が目指すべき心のあり方として示されている。
  • 「仁」のある人物は、ビジネスでは理想のリーダー像だと言える。

以上が「仁」についての解説です。ビジネスでは結果を出すことはもちろん大切です。しかし、それを追求するあまり仁すなわち思いやりを欠いた行動をしてしまうと、周囲からの評価や信頼は得られません。仁について学ぶことで、それまでになかった視点を得ることができ、仕事やそれ以外のことに活きてくることでしょう。