毅然とは|意味・使い方と注意点・泰然との違い・英語表現を解説

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ここでは毅然という言葉について解説いたします。

「毅然」の「毅」は、人名漢字として訓読みでは「つよし」「たけし」「あつし」、音読みでは「き」などの読み方で男子の名前によく用いられます。でも人名以外では「毅然」のほかに用例がほとんどありません。

「毅然」という熟語もあまり使用頻度の高い言葉ではありませんが、名前に「毅」がつく人は電話や口頭で自分の名前を説明するときに「名前は『毅然』の『き』と書いて『つよし』と読みます」とよく言います。

そこで「毅然」という熟語の由来や意味などを学んでおくと、ビジネスやプライベートを問わず意外な場面で役に立つことがあります。どうぞ最後までお読みください。

毅然の読み方・意味・使い方

「毅然」は「きぜん」と読みます。意味としては「意思が固く、ものごとに動じないこと」「強い意思を持ち、自分の信念を貫くこと」などをあらわす言葉です。

「毅然」は名詞ですが、単独で使われることはまずありません。基本的には、断定を意味する助動詞の「たる」や「とする」などを語尾につけ、「毅然たる」「毅然とする」という語法で用いられます。

毅然の語源

「毅然」は故事成語ではないので、語源となるような言い伝えはありません。そこで漢字の「毅」と「然」に分けて、それぞれの成り立ちについて解説します。

まず「毅」は象形文字の「豙」+「殳」を組み合わせて成立した漢字です。「豙」は「入れ墨をされたイノシシが痛みに荒れ狂い牙をむいている様子を表した象形文字とされています。

一方、「殳」は「杖を持った手」の象形で、「やたらに怒りっぽく杖をふり回す」人の様子をあらわします。

このように「毅」は「激しい怒り」や「手強い様子」「猛々しいさま」などをあらわす文字でしたが、やがて「手強い」から「強い」の意味に変わり、「強く決断する」「意思が強い」「思い切りが良い」などを意味する文字になりました。

一方、「然」は「切った肉と耳を立てた犬が炎に焼かれる様子」を象形しています。これは儀式で犬と獣の肉などを生贄として焼くことを意味します。

そこから「然」は「もやす」ことをあらわす文字となり、やがて読みが同じ別の漢字の当て字になって、「しかり(そのとおり)」という意味もあわせ持つようになりました。

このような成り立ちから「毅然」は決断力や意志が強いことをあらわす熟語になったとされています。

「毅然とした態度」とは

仕事でもプライベートでも、重要な場面で判断に迷ったり、誰かに気持ちをはっきり伝えられなかったりすると、「もっと毅然とした態度をとりなさい」と叱責されることがあります。

この「毅然とした態度」とは、具体的にどのようなことを言うのでしょうか。

誰かに自分の意思を伝えたいときや重大な決断に迫られたときには、自分の意見や判断をはっきりと示さなければなりません。それが「毅然とした態度」になります。

「毅然とする」ということは、相手の立場や考えを尊重したり忖度したりする前に、自分の意思を堂々と示す、ということです。でも、それは「自分勝手にふるまえ」という意味でも「相手の意見を無視してよい」という意味でもありません。

議論や意見交換の場では、互いに認識のズレを洗い出し、相互理解を深める必要があります。そのためには自分の考えをはっきり主張して、互いに納得できるまで意見を戦わせければなりません。

「毅然とした態度」とは、自分が正しいと判断したことを冷静にしっかり主張すること。卑屈になったり控えめになったりせず、自分の言い分を臆せずに伝え、相手の言い分にも謙虚に耳を傾けることです。

議論に熱中して感情的になったり、自己主張の強い相手に言い負かされたりしたら、公平で建設的な議論はできなくなります。

まず自分の考えを堂々と主張しましょう。そのうえで相手の主張に納得できれば、すなおに賛同しましょう。それがほんとうの「毅然とした態度」です。

毅然のビジネス上での使い方

日本のビジネス社会では、集団主義と合議制が主流です。職場や仕事を共有する者は互いに連帯感を持ち、自己主張よりも気配りを尊び、その場の「空気を読む」ことを大事にします。

日本型の企業は官僚的な縦割り組織で、経営上の権限や責任が上層部に集中しがちです。その結果、社内には「調整」という名の根回しや稟議、忖度などがまかり通り、部下たちはみな失敗を恐れるあまり「事なかれ主義」に陥りやすくなります。

このような組織の中で毅然として自分の信念を貫き、堂々と意見を述べるのは決して容易なことではありません。一方で、ITやAIの進歩によって情報のスピードが劇的に速くなっている現代では、業種を問わず国際展開と超情報化への対応を迫られています。

日本企業の旧弊な感覚で時間をかけて情報を収集し、社内で慎重に議論して、上司に稟議書の書き直しを何度も命じられながら提言し直し、また内容を吟味して最終的に社長が決断を下したときには、とっくに時代遅れになっていることも少なくありません。

日本のビジネス社会で「毅然」という言葉を使うときには、「強い意思を持ち、自分の信念を貫くこと」だけでなく、「スピード感を持って決断し対応すること」の重要性も認識しなければなりません。

毅然の類義語と例文

毅然と同じような意味を持つ類義語としては、「泰然」「決然」「断固」などをあげることができます。

「泰然」は「いつも落ち着いていて、何があっても驚いたり動揺したりしない様子」をあらわします。

「決然」は「きっぱりと決心した様子」「覚悟を決めた様子」をあらわす言葉です。

「断固」は、「何があっても必ず実行するという強い意思や態度」「周囲の意見や状況に左右されない様子」をあらわします。

「泰然」の例文

この前、仕事中に地震があったとき、みんな右往左往する中で、彼だけが机で目を閉じて泰然自若としていたから、大した男だと思ったら、単に居眠りをしていただけだった。

毅然の対義語と例文

毅然と逆の意味を持つ対義語としては「優柔不断」「意志薄弱」「逡巡」「及び腰」などがあります。
「優柔不断」とは物事の判断や決断がなかなかできず、いつまでもぐずぐすしながら迷っていることです。

「意志薄弱」は意思が弱く、忍耐や決断ができないことです。

「逡巡」はぐずぐずと決断をためらうことをあらわします。

「及び腰」は自信がなく、おどおどしていることです。

「優柔不断」の例文

部長は仕事では毅然としているのに、昼休みになるとランチのメニュー選びに15分もかかるほど優柔不断になるんですよ。

毅然の英語表現

「毅然」を意味する英語としては、「firm」「resolute」「arenose」などがあります。

「firm」は「性質が硬い」「堅固な」「しっかりした」「断固とした」などの意味をあらわします。

「resolute」は「決然とした」「断固とした」という意味の言葉です。

「arenose」は「砂っぽい」のほかに「度胸がある」という意味があります。

まとめ

「毅然」は「意思が固く、ものごとに動じないこと」「強い意思を持ち、自分の信念を貫くこと」をあらわす言葉です。
「毅然」は「毅然たる」「毅然とした」という言い方で用いられます。
「毅然」の類義語には、「泰然」「決然」「断固」などがあります。
「毅然」の対義語には「優柔不断」「意志薄弱」「逡巡」「及び腰」などがあります。