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ここでは、「教示」という言葉について解説いたします。
「教示」は文字通り「人に教え示すこと」をあらわしますが、似たような意味の言葉に「教授」があります。「教授」の意味は「教え授ける」こと。ご存知のように大学や高等専門学校の教職名にもなっています。
では、人に「教え示す」ことと「教え授ける」ことには、具体的にどのような意味の違いがあるのでしょうか。
ここでは「教示」と「教授」の使用法の違いも含めて、多角的に説明してゆきます。どうぞ最後までお読みください。
教示の読み方・意味・使い方
「教示」は「きょうじ」と読みます。意味は文字通り、「教え示す」こと。自分が持っている知識や情報を相手に伝えたり、自ら手本を示して教えることです。
使い方としては、敬語の接辞の「御」をつけて「御教示ください」「ご教示をお願いします」「ご教示を賜りたく存じ上げます」という形で用いるのが基本です。
教示の語源
教示は故事成語ではないので、語源のエピソードはありません。
漢字の成り立ちとしては、まず「教」は老人が子供を手で叩いて「ボコッ」という音をたてることを示す象形文字で、大人が子供に「しつける」「物事を教える」という意味をあらわします。
また「示」は神に生贄を捧げる台を象形する文字とされていますが、やがて読みが同じ「指(し)」と重なって、「しめす」ことを意味するようになりました。
「教示」と「教授」の違い
「教示」と「教授」は意味がほとんど同じです。たとえば「AはBに教示する」という文を「AはBに教授する」と書き換えたとしても矛盾はしません。でも厳密にいえば、以下のような違いもあります。
「教授」は大学や高等専門学校などの教職名でもあります。これは「教授」が教育機関の教員または研究者として、学生に学問や技能、芸道などを授業として教育指導する立場にあることを意味します。
一方「教示」は、教職員でなくても知識やノウハウを持つ人が後輩や部下に教え示すことです。「教示」は基本的に教育課程の一貫としてではなく、一時的な指導やアドバイスに近い教え方になります。
教示のビジネス上での使い方
ビジネスで「教示」を使う場合は、部下が先輩に教えを請うか、クライアントのアドバイスを得る場合など、目上の人から指導を受けるケースがほとんどです。
したがって「教示」をビジネスで使う場合は、前述したように敬語の接辞の「御」をつけて、丁寧語で使うのが基本になります。
「ご教示ください」と使われる場合が多い
ビジネスシーンでは、上下関係のマナーやルールを厳守しなければなりません。大事なクライアントや先輩に対して「教えてください」や「ご指導願います」といった言い方をすると、相手によっては「敬意が足りない」と受け取られるかもしれません。
かといって「私めにぜひご教示を賜りたく」といった就任の挨拶のような言い方では、かえって仰々しく感じられます。そこで「教示」の頭に「御(ご)」をつけて、丁寧語で「御教示ください」「ご教示をお願いします」という表現が用いられています。
注意したいのは、「教示」と「教授」の使い分けです。ビジネスシーンでは、ほとんどの場合「ご教示ください」で通用しますが、教育機関で授業に関連した質問をする場合や、伝統芸道などの指導を仰ぐ場合は「ご教授ください」という方が適切です。
一方、相手が誰であれ簡単なことをたずねる場合、たとえば午後の予定をたずねるときに「ご教授ください」「ご教示ください」などと言うのは適切ではありません。この場合は「お教えいただけますか」という丁寧語でじゅうぶんでしょう。
若い人の場合、「教示」「教授」を頻繁に使うと、ビジネスシーンでも堅苦しくて親しみにくい印象になります。「お教えいただきたいのですが」や「お教え願いませんか」などと丁寧に問いかけるような頼み方がよいでしょう。
教示の類義語と例文
教示と似た意味を持つ類義語としては、「指導」や「指南」「指教」などがあります。
「指導」は正しい目的や方向を示して導き教えることです。舞台監督の演技指導や、行政指導といった言葉があります。ビジネスシーンでもわからないことを教えてもらうときに使えます。
また改まった場でのスピーチでは「今後ともご指導ご鞭撻の程をお願い申し上げます」という言い方でも用いられます。「鞭撻(べんたつ)」は「努力するように励ますこと」を意味する言葉で、もともとは「鞭(むち)」で打つことを意味します。
「鞭撻」は単体ではあまり使われない言葉です。基本的には「指導」と組み合わせて、「ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます」という慣用表現としてよく使われる言葉です
「指南」はおもに武道や芸能など技や表現を教え示すときに使われる言葉です。学問や職務上の知識を伝える場合にはあまり使われません。
「指教」は「さし示して教えること」を意味する言葉です。日本では古語に含まれる言葉で、現代では使われませんが、中国では今もよく使われています。たとえば中国語で「請多指教」というと、日本語の「よろしくお願いします」の意味になります。
「指導」の例文
「教示」の英語表現
「教示」の英語表現としては、「advice」「teaching」「lecture」「instruction」「enlighten」などを使うことができます。
「advice」は日本語でも「アドバイス」というカタカナ英語で使われるように助言や忠告の意味があります。ただし英語の用法はもっと広く、医師の診断や弁護士の意見など専門家の見解や報告という意味もあります。
「advice」を使って「教えて下さい」という場合は「Give me advice.」と表現するのが一般的です。この場合「advice」は不可算名詞なので「an advice」「advices」などと表記しないように気をつけましょう。
「何か教えてほしい」という場合は、「Please give me some advice.」。いろいろと教えてほしい場合は「Give me many pieces of advice.」と表現します。
「teaching」も日本人には比較的なじみのある単語です。意味は名詞として「教えること」「教授すること」「授業」「教訓」「学説」などをあらわします。
「lecture」は「講義」や「公演」「訓戒」などを意味する言葉です。日本語でも「講義」のことを「レクチャー」とよく言います。訳語としては「教示」より「教授」に近い言葉です。
「instruction」はやや格式ばった言い方で、「知識や方法などの教えを請う」という意味があります。日本でも「ヨガのインストラクター」などといいますが、「instruction」はその語源です。
「enlighten」は「啓発する」「教化する」「疑いを解く」という意味の言葉です。一般的には学校や職場の指導教育ではなく、宗教的なレベルで教え諭す意味で用いられる表現ですので、場合によっては大げさに感じられる可能性があります。
まとめ
「教示」は知識や方法などを相手に教え示すことを言います。
「教授」は専門性の高い学問や技芸を授業の一環として教え授けることを言います。
「教示」は敬語の「御」をつけて、「ご教示ください」という言い方で用いるのが基本です。