「渾身」の意味とは|使い方・類語・対義語・英語表現と例文を解説

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ここでは「渾身」という言葉について解説いたします。

「渾身」は「渾身の一撃」「渾身の力作」などの用法でよく使われる言葉です。またツイッターなどのSNSでは「選りすぐりの傑作写真」の意味で「渾身の1枚」というハッシュタグが人気を集めています。

このように「渾身」は難読字の中では比較的ポピュラーな言葉です。その一方で、正しい意味や使い方については意外に知られていない面もあります。

そこで、今回は「渾身」に焦点を当てて、正しい意味や使い方などをくわしく説明していきます。どうぞ最後までお読みください。

渾身の読み方・意味・使い方

「渾身」は「こんしん」と読み、「全身」「満身」など「体全部」ということを意味します。

「渾身」は「全身で何かに取り組む」「身体全体を使って打ち込む」という意味で使われるのが一般的です。たとえば「渾身の力を込めてぶつかる」という表現で、「全身の力を込めてぶつかる」「全力でぶつかる」といった意味をあらわします。

このように「渾身」は「全身」と同じ意味を示す言葉です。したがってスポーツ選手などの活躍を「渾身」を使って表現したい場合は、意味が「全身」と同じだということを理解して用いる必要があります。

たとえばボクシングのパンチを「渾身の左フック」と表現した場合、「渾身」は「全身」と同じ意味ですから、文中の「渾身」と「全身」を置き換えても意味が通じなくてはなりません。

しかし「渾身の左フック」を「全身の左フック」と言い換えると、意味がわからなくなってしまいます。この場合は「渾身の力を込めた左フック」と表現しなければなりません。

ただし場合によっては、ボクサーのパンチを「渾身の力を込めた」と言い表すことも誤用になる可能性もあります。

そもそもボクサーのパンチが強いのは、腕や胸の筋肉だけでなく全身の筋肉を使って力を拳の一点に集中させるからです。その意味では「渾身の左フック」という表現は正しい使い方になります。

でも、それが「クリンチしたまま渾身の力を込めてショートパンチを連打」というと、相手に抱きついた状態で腕だけを使ってショートパンチを連打することになり、全身の力を込めることにはなりません。したがってこの文言は誤用になります。

このように「渾身」という言葉は「全身」と同じで、それだけでは力を発揮する意味にはならない、ということに注意して使用する必要があります。

アニメやゲームでよく使われる「渾身の一撃」とは

アニメやゲームでは「渾身の一撃」という表現がよく使われます。この表現は正しいのでしょうか。

前述のように「渾身」は「全身」と同じ意味の言葉です。「渾身」を使う場合、厳密には「渾身の力を込めた一撃」と表現しなければなりません。

ただしアニメやゲームでは言葉の意味を省略したり、言葉そのものを短縮したりするのはよくあることです。「渾身の一撃」も「渾身の力を込めた一撃」の意味を短縮した用法と認めていいかもしれません。

そうすると次に問題となるのは「渾身の一撃」がどう使われているかです。格闘ゲームのキックやパンチの意味で使われるのは正解といえますが、シューティングゲームで敵に弾丸やミサイルが命中したことを「渾身の一撃」というのは誤りです。

なぜなら敵に命中したミサイルや銃弾に、攻撃者の「渾身の力」が込められているわけではないからです。「みごと敵に命中した」と言いたい場合は「会心の一撃」を使いましょう。

このように「渾身」と「会心」を取り違えた表現も、最近増えている誤用のひとつです。

渾身のビジネス上での使い方

ビジネスシーンで「渾身」を使う場合は、まず第一に前述のような誤字や誤用をしないように細心の注意を払う必要があります。

ビジネスシーンでも、最近は「渾身の企画」「渾身のプレゼン」「渾身の講演」などの誤用がよく見られます。

前述のように「渾身」は「全身」と同じ意味の言葉です。「渾身」そのものに「全力」の意味はありません。「全身の企画」「全身のプレゼン」などという表現が日本語として意味をなさないのと同様に、「渾身の企画」「渾身のプレゼン」は誤用です。

また「渾身」の「渾」を「指揮」の「揮」と間違えた使用例も増えています。「揮身」という熟語は存在しません。上司に提出する企画書などの草稿を手書きで作成するきは、このような誤字にじゅうぶん注意する必要があります。

渾身のよくある誤用表現

前述した誤用例のほかにも、「渾身の新作」「シェフ渾身のひと品」のように「渾身」を「入魂」の意味と取り違えた表現も多く見られます。

また将棋やギャンブルなどで一か八かの勝負を決める重要な一手を、「渾身の一手」と表現するのも誤用になります。この場合は「運命をかけて大勝負をする」という意味で「乾坤一擲(けんこんいってき)の一手を打つ」と表現するのが良いでしょう。

渾身の類義語と例文

「渾身」と同じ意味の類義語としては、「全身」「満身(まんしん)」「五体」「総身(そうしん・そうみ)」などがあります。いずれも身体全体を意味する言葉です。

「満身」は現在では「満身創痍(まんしんそうい)」という全身傷だらけの意味でよく使われますが、それ以外に「渾身」や「全身」の意味でもふつうに用いることができます。

「満身」の例文

私が当店の店長に就任して早5年目となりますが、これからも初心を忘れず満身の気合いを込めてがんばりたいと思います。

渾身の英語表現

「渾身」を英語で表現する場合、「全身」の意味では、「whole body」「total body」といった言い方ができます。

「whole」は「全体の」「完全な」「無傷の」などをあらわす言葉です。「total」は日本でもよく使われる「トータル(合計)」という意味のほかに、「全体の」「完全な」「絶対的な」などの意味をあらわします。

次に「渾身の力で」の意味を英語で表現する場合には、「with all (of) one’s might」「exert maximum effort」などの言い方ができます。

「might」は「may」の過去形ではありません。同じスペルで「腕力や「権力」を意味する名詞です。「effort」は努力。「exert」は「能力を発揮する」「用いる」「働かせる」などの意味をあらわす言葉です。

最後に「with all (of) one’s might」と「exert maximum effort」を用いた簡単な例文を以下にご紹介します。

I swung the bat with all of my might.
(私は渾身の力でバットを振った。)
All you can do is to exert the maximum effort for solution.
今君にできることは問題の解決に向けて全身全霊で取り組むことだけだ。

まとめ

  • 「渾身」は「全身」と同じ意味の言葉です。
  • 「渾身」には力を発揮するという意味はありませんので、「渾身の一撃」「シェフ渾身のひと品」のような表現は誤用になります。
  • 渾身」の英語表現する場合、「全身」の意味では、「whole body」「total body」、「渾身の力で」を意味する場合には、「with all (of) one’s might」「exert maximum effort」などの言い方ができます。