アンチテーゼとは?正しい意味や使い方、例文などをわかりやすく解説

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この記事では、「アンチテーゼ」の意味や使い方、英語表現について考察します。

「アンチテーゼ」という言葉を一度は聞いたことがあるはずです。難解な言葉のように思えますが、社会生活の中では時々使われる言葉なので、その意味をきちんと理解すること必要があります。

この記事で「アンチテーゼ」の意味と正しい使い方を理解して、社会人としての知識を増やしてください。

「アンチテーゼ」の意味とは


「アンチテーゼ」の意味とは、「ある理論・主張を否定するために提出される反対の理論・主張」のことです。哲学用語では「反定立(はんていりつ)」とも称されます。

英語では、「Antithesis」と表記しますが、元々はドイツ語の「Antithese」が語源です。

「Anti(アンチ)」は、接頭辞で「反」「抗」「対」の意味で、「thesis(テーゼ)」は、「命題」「定立」「論題」などの意味があります。エヴァンゲリオンの「残酷な天使のテーゼ」の「テーゼ」は、まさにこの「テーゼ」です。

「アンチテーゼ」は「反対の理論・主張」ですが、完全に対立する理論や主張を否定するものではありません。

例えば、テーゼが「日本人は愛社精神が強い」の場合、

「日本人は必ずしも愛社精神が強いとは言えません。なぜなら若者の離職率は上昇し、転職市場も活性化しているからです」

というのがアンチテーゼになります。

「愛社精神が強い」というテーゼを完全には否定していません。

「アンチテーゼ」と「アンチ」の違い

日本では「アンチ」というと「アンチ巨人」のように特定の団体や企業、製品などを嫌う人を指す時に使いますが、「アンチテーゼ」は単なる好き嫌いや反対の意味ではないことを理解してください。

「アンチテーゼ」の由来

「アンチテーゼ」という言葉が広く知れ渡るようになったのは、「ドイツ観念論」を代表する哲学者である「ヘーゲル」の思想がきっかけです。

ヘーゲルの思想は「論理学」「自然哲学」「精神哲学」の3つの体系から成り立っていますが、その中の「論理学」が「弁証法論理学」とも言われ、ギリシャ哲学以来の「弁証法」を独自の弁証法にして用いたのです。

このヘーゲルの「弁証法」を構成するひとつの要素が「アンチテーゼ」です。

弁証法の「アンチテーゼ」

ヘーゲルの弁証法とは、「対立もしくは矛盾する2つの事柄を統一・統合することでより高い次元の結論に導く思考法」です。

弁証法は、「テーゼ(命題)」「アンチテーゼ(命題の反対)」「ジンテーゼ(統合した命題)」の3つで構成されます。

かつての形式理論学では、「AはAである」ことが基本であり、「AはAでありかつAではない」という矛盾がおこれば、それは「偽りである」と排斥されました。弁証法では、対立や矛盾を受け入れ、より高い境地に進むことを優先します。

例えば、命題が「原子力発電は日本にとって不可欠である」の場合、アンチテーゼは「原子力発電は日本にとって不可欠とは限らない。自然エネルギーの可能性は大きい」などが考えられます。

そして、統合された命題は「太陽光発電および風力発電の国家的な推進」になるかもしれません。このように、弁証法ではアンチテーゼを掲げることでより高度な結論を導くことが可能になるのです。

ちなみに、この否定・矛盾を通して高度な次元に至る相互作用を「アウフヘーベン(止揚)」と言います。日本では一時期有名な言葉になりましたが、アンチテーゼと一緒に覚えておくと理解しやすいでしょう。

修辞学の「アンチテーゼ」

「修辞学」とは、言葉を適切に使ったり、美しく巧みな表現を研究する学問のことです。

修辞学は、古代ギリシャ時代に思想感情を効果的に伝達するための原理を研究する学問として誕生しました。ソクラテスに代表される弁論思想の根幹になり、弁論や著述の理論として中世の教育の中枢をなしていました。

現代の修辞学は、著述などに関係する事柄が中心で、美辞学・レトリックとも呼ばれます。
修辞学にはさまざまな技法が存在し、そのひとつに「アンチテーゼ」があります。

修辞学の「アンチテーゼ」は、「対照法」「対句法」と訳されるのが一般的です。

対照法(たいしょうほう)は、「月とスッポン」「提灯に釣鐘」のように、相反する事物を対照させて、両者の状態をより明確にする修辞法です。

対句法(ついくほう)は、組み合わせや対照を文章に用いることで文章の単調さを避ける修辞法です。例えば、童話「桃太郎」の「おじいさんは山へ芝刈りに。おばあさんは川へ洗濯に」も対句法になっています。

「アンチテーゼ」の使い方


「アンチテーゼ」は、あくまでも次へ進めための「反対の理論・主張」です。単なる反対意見ではありません。

例えば、「日本人は花見が好きです」が命題だとしたら、「私は花見が嫌いです」だけでは、次に進めません。

「日本人の中にも花見が嫌いな人はいます。その理由にはいくか考えられます」とアンチテーゼを述べれば、次に進むきっかけになります。

では、ここで命題とアンチテーゼの例を紹介します。

命題
今や寿司は世界中で愛されている和食です。
アンチテーゼ
寿司が世界中で愛されているとは限りません。まだまだ生の魚が食べられない人は多くいます。
命題
地球環境のために電気自動車に移行すべきである。
アンチテーゼ
電気自動車にはコストやバッテリーなどの問題がまだある。まずは、ハイブリッド化を優先すべき。
命題
英語教育は生後6か月からおこなうべし。
アンチテーゼ
生後6か月から英語を聞かせる効果は理解できますが、日本語の理解力が遅れる恐れがあります。まずは、日本語を中心におこなうのが良いと思います。

このように、単なる反対意見とアンチテーゼとの違いを理解しましょう。

「アンチテーゼ」の例文


「アンチテーゼ」を文章に使うことも少なくありません。「アンチテーゼ」を使った例文をいくつか紹介します。

  • 経営方針に反対するためには、明確なアンチテーゼが必要です。
  • 地球温暖化へのアンチテーゼとして、自転車で通勤する若者が増えています。
  • 田舎への移住は、都会志向へのアンチテーゼと言えるでしょう。
  • 大統領の移民政策へのアンチテーゼを唱えるアーティストたちが集結しました。

「アンチテーゼ」の英語表現


「アンチテーゼ」の英訳は「antithesis」です。「antithesis」を使った例文をいくつか紹介します。

・His theory is the antithesis of mine.
(彼の意見は私の意見のアンチテーゼです。)
・Death is the antithesis of life.
(死は生のアンチテーゼです。)
・In the world today we face two great economic antitheses.
(今日の世界は、2つの大きな経済的アンチテーゼに直面しています。)
・Economic development and the protection of the environment are not antitheses.
(経済発展と環境保護はアンチテーゼではありません。)

まとめ この記事のおさらい

  • 「アンチテーゼ」とは、「ある理論・主張を否定するために提出される反対の理論・主張」のこと。
  • ドイツの哲学者ヘーゲルが、弁証法を構成するひとつの要素として「アンチテーゼ」を使ったことで普及。
  • ヘーゲルの弁証法とは、「対立もしくは矛盾する2つの事柄を統一・統合することでより高い次元の結論に導く思考法」
  • 修辞学では「アンチテーゼ」は、「対照法」「対句法」などのことを言います。
  • 「アンチテーゼ」は、次へ進めための「反対の理論・主張」で、単なる反対意見ではありません。
  • 「アンチテーゼ」の英訳は「antithesis」です。