終身雇用の意味と歴史 メリットとデメリット 英語表現を解説

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現代では、企業は個人の能力を重視し、個人は働き方に対する考え方が多様化しているため、終身雇用されるのは当たり前ではなくなってきています。

ここでは、終身雇用の意味や歴史、メリットとデメリット、終身雇用の英語表現などを解説します。現代では少なりつつある終身雇用についてしっかり把握することができます。

終身雇用は定年まで雇用され続ける雇用形態

終身雇用とは、日本の正社員雇用の慣行といわれ、特別な理由がない限りは一度就職した会社に定年まで雇用され続ける形態のことをさしています。

年功序列制度とともに導入されることが多く、長い間日本では一般的な雇用形態でした。

終身雇用は、制度であり法律などで決まられたものではないため、それぞれの企業が、企業努力で終身雇用制度を支えていました。

現代では、個人の能力を評価する制度が導入されつつあり、企業側も労働者側も、雇用に対する価値観が変化していることから、終身雇用制度は減りつつあります。

終身雇用を支えるには、雇用主の企業が成長し続けなければ難しいのも、現在では終身雇用が減りつつある一因でしょう。

1990年代の不況から、終身雇用の崩壊が始まりました。

2000年に入り、ホンダや日産自動車など自動車産業から終身雇用の廃止が始まりました。キリンビバレッジやソニー、パナソニックも成果主義の方向にシフトし、大手企業から終身雇用の廃止に向かっています。

終身雇用の始まりには諸説ある

終身雇用の始まりには諸説あります。江戸時代の丁稚奉公制度がもとになっているという説や、大正末期から昭和初期の工場での職人確保がもとになっているなどの説もあります。

終身雇用が広がり続けた1955年から1973年は、日本の高度経済成長期にあたります。実質GDPが10%ほどをマークした年が続いたころです。

現代の実質GDPが1%台であるのと比較すると、急成長ぶりがうかがえます。

人員整理の大規模な労働争議が起こった第二次世界大戦後、1950年代に争議の影響と高度成長に伴う人手不足などから一気に終身雇用制度が広まったともいわれています。

終身雇用のメリット・デメリット

終身雇用は社会の変化だけでなく、業種や企業によって終身雇用との相性がよくないこともあるともいわれます。

以下では、一般的にいわれている終身雇用のメリットとデメリットを解説します。

終身雇用のメリット:雇用側と被雇用側に信頼関係が構築される

一番の終身雇用のメリットしてあげられるのは、信頼関係の構築です。被雇用側には雇用が約束されるため、生活の安定が保証されます。

雇用側はさらに快適な労働環境を作り上げることで、信頼を獲得できるでしょう。信頼関係により、経験豊富で貴重な人材が雇用側から流出することも防ぐことができます。

終身雇用のメリット:社員の長期的な育成が可能

社員教育は、コストと労力がかかります。せっかく育て上げた人材が流出し、再度別の人を雇用すると、社員教育をしなおさなければいけなくなります。

専門性が高く教育に時間がかかる業種では、教育を長期で計画して行う必要があるでしょう。

終身雇用であれば、教育に時間がかかったとしても、コストや労力を仕事の成果として取り戻すのに時間がかかった場合も収支が成り立ちます。

雇用側は、安心して教育に取り組みやすい事が特徴です。被雇用側もその会社でしか使えない技術や知識だとしても、雇用され続ける場合、取り組みやすくなるメリットもあります。

終身雇用のデメリット:モチベーションの低下

終身雇用は、特別なことがない限り雇用され続けるのが前提です。

極端な話、真面目に働かなくてもクビになることはありません。緊張感が薄く、本人のモチベーションが低いままである可能性も生まれます。

周囲へ悪い影響を与えることもあるでしょう。終身雇用を支えるには、雇用側の成長が必須ですが、社員のモチベーションが低下したままでは、全体の生産性も低下してしまい、会社の成長が鈍化してしまうこともあります。

終身雇用のデメリット:雇用に変化がない、会社にも変化がない

終身雇用の場合、中途採用する必要がなく採用が新卒ばかりの場合は、被雇用者に刺激がなく、職場に変化が起きない可能性があります。

被雇用者の転職は、雇用の流動性といわれ、ある側面では会社にも業界にも成長をもたらすものです。

業界全体を考えると、終身雇用でひとつの会社にとどまってしまう優秀な人ばかりでは、変化がなくなってしまうことも考えられます。

終身雇用のデメリット:長時間労働が多く女性が少ない

終身雇用を前提にしていると、業績悪化などの時にも人員整理するのが難しくなるため、終身雇用の企業では採用人数を絞る傾向にあります。

日常的に人手が少ない状態になるため、長時間労働になる傾向が生まれます。

常に人手不足なだけに、結婚や出産で退職する可能性の高い女性は、初めから雇わないことも多くあるでしょう。数年で辞めることを考えて、能力を活かせないような簡単な仕事ばかりを任せる傾向もあります。

終身雇用の英語はLifetime employment

終身雇用は、英語で「Lifetime employment」とあらわされることが多いです。

終身雇用は日本独特の雇用制度ですが、語源は英語からきています。1958年にアメリカの経営学者であるジェイムズ・アベグレンが、日本の雇用制度を「lifetime commitment」と表現した事が始まりです。

直訳すると「終身の関係」で、アベグレンは終身雇用を「permanent employment system」とも表現してます。

終身雇用についてのまとめ

  • 終身雇用とは、日本の正社員雇用の慣行といわれ、特別な理由がない限りは一度就職した会社に定年まで雇用され続ける形態のことをさしています。1990年代の不況から、終身雇用の崩壊が始まったといわれてます。
  • 終身雇用の始まりには諸説ありが、本格的に終身雇用制度が広まったのは、1950年代で雇用の争議の影響と高度成長に伴う人手不足などからといわれています。
  • 終身雇用のメリットには、雇用側と被雇用側に強固な信頼関係が構築される、長期的な育成が可能などがあるでしょう。反面、デメリットとしては、モチベーションの低下、雇用に変化がない、会社にも変化がない、長時間労働が多く女性が少ないなどがあります。
  • 終身雇用の英語表現は、一般的に「Lifetime employment」とされることが多いでしょう。