マウントをとる会話とは?なぜ人はマウントをとってしまうのか

※本サイトはプロモーションを含んでいます。

「マウントを取る」とは、自分の方が恵まれていたり優秀であることを、相手や周囲に示す行為のことを指します。「マウンティング」とも言います。マウンティングでは、自分の成功や豪華なライフスタイル、仕事や学業の成績、経験や旅行などでアピールする例が見られます。また、人をけなしたり陰口をたたいて貶めることで、自分の優位性をアピールする場合もあります。

「マウントをとる」「マウンティング」とは何か

「マウントをとる」「マウンティング」という表現は、自分が優位に立っていることを示すために、自慢や相手を貶めたりする発言をする振る舞いを指します。 このような行為は、相手を不快にして対人関係を悪化させることがあります。

動物の生態に対して使われる「マウンティング」とは、他の個体に対して自分の優位を主張する行動を指します。犬や狼では、上位個体がほかの個体に馬乗りになって、下位個体は腹を出すなどして無抵抗の姿勢を示します。群れの中のヒエラルキーを確認していると考えれれます。転じて、人間関係でも用いられるようになりました。

身近な女性間の対立に対して「マウンティング」を使ったのは、2014年に出た書籍「女は笑顔で殴りあう:マウンティング女子の実態(瀧波 ユカリ・犬山 紙子)」が最初とされています。

同年、沢尻エリカ主演のドラマ「ファースト・クラス」で、ファッション雑誌の編集部を舞台に、格付けしあう女を意味する「マウンティング女子」の姿が描かれたことも、「マウンティング」が日本社会に定着するきっかけとなりました。

似た概念としては「スクールカースト」があり、これはアメリカの高校を舞台としたドラマでアメフト選手とチアが上位、メガネのオタクや地味女子が下位といった描かれ方がされています。日本でも「一軍女子」などの言葉を見かけます。学校や職場等の人間関係が固定された集団では、独自の価値基準による序列づけが発生しやすいと考えられます。

マウントをとる会話に使われるテーマ

「マウントをとる」には、会話などで相手を下げたり自分をアピールするような振る舞いが行われます。

  • 自分のことを大げさにアピールすること
  • 相手の話を無視して、自分の話ばかりすること
  • 相手の考えを否定する言動をとること

優位性のアピールに使われる話題としては、自分の仕事や肩書、裕福さ、きらびやかな私生活などが挙げられます。

例えば「この間、隣の県に旅行にいってきたんだ 」と言われたときに「どこに行ってきたの?」などと会話を広げるのではなく、「私なんか海外リゾートで遊んできたよ」とかぶせた場合、相手の話を無視した上で自分のことを大げさにアピールするマウンティングになります。

マウンティングする人の特徴や心理

マウンティングがどんな場所でなぜ発生するのか。

まずマウンティングは、日常的に関係があり今後もやり取りが発生する場合に発生する特徴があります。その場限りでその後会う機会がない場合、優劣を決める必要性が薄いからです。

次にマウンティングのアピールは暗示的に行われる特徴があります。直接的に「あなたより格上なのよ」とは言わず、婉曲的な表現が使われます。

3つ目に、マウンティングされた側は立場が下に見られたことを察し、不快に感じます。当事者間では通じる優劣アピールは、他人からはわかりづらいことがあります。

4つ目に、マウンティングする人は、そのことに無自覚なことがあります。SNSでの炎上事例など、他人から見ると明らかなマウンティングでも、ご自身は無意識だったり、止められなかったりします。

マウンティングされた場合の対処方法

マウンティングは、今後もやり取りが発生する人間関係で発生するため、その場の雰囲気を壊さないため、不快な気持ちを示さないように振る舞うことを強いられるなど、日常的なだけに慢性的なストレスがかかります。

関係が薄い友人関係の場合、距離を置くのもひとつの方法でしょう。相手が無自覚で、話せば理解してくれると期待できる場合は、相手の気持ちも尊重しながら、不快に思ったことを伝えても良いでしょう。

職場の場合は、それが仕事に支障をきたすレベルであれば、上司やリーダー的ポジションの人間が対処する必要があります。複数人の客観的な証言を集めた上で、パワハラ対策等の枠組みが使えるかもしれません。

マウントとは?マウントをとる人の特徴や対処法も紹介

女性同士のマウントをとる会話の例

女性集団においても、その集団にしか通じない基準でお互いに暗黙に格付けし合うマウンティングが行われています。

  • 恋愛でモテていることを示す恋愛強者アピール
  • 美肌や美脚、高級ブランドの着用などの美容やファッションに関するアピール
  • 旅行やグルメなど、充実したライフスタイルのアピール
  • ダイエットや運動など健康に関するアピール
  • いい旦那やめぐまれた子育て環境など良好な結婚生活アピール

ここでは、2021年に御茶ノ水大学から出た論文「マウンティングエピソードの収集とその分類:隠蔽された格付け争いと女性の傷つき」で紹介されているマウンティングの例を列挙します。本研究は、書籍やテレビドラマからマウンティングに該当するエピソードを収集して主な概念に分類したもの。

その結果、20の概念と3つの上位概念<伝統的な女性とし ての地位・能力を誇示する><人間としての地位・能力を誇示する><女性としての性的魅力を誇示する>を抽出sました。

マウンティングの3つのカテゴリーはじゃんけん的3すくみの関係にあると考えられ、完全な優劣が決せず場面場面でマウンティングが繰り返されているのではとしています。

伝統的な女性としての地位・能力を誇示するマウンティング

伝統的な女性としての地位・能力とは、主婦や母親に代表される、伝統的な女性の役割に該当する概念やエピソードのこと。伝統的な女性役割とは、仕事よりも結婚や出産・育児を重んじる態度や、優しく上品で従順な態度のことを指します。

実家資源や年齢など、本人では変えられない要素で優劣をアピールできる一方、こうした伝統的な女性としての役割を重視する人が減ってきていること、後述する「自立した人間としての地位・能力」とは両立づらいことから、万能のマウンティングではありません。

概念 例(要約)
貞淑さ ・飲み会でおしゃれをする女性たちに「今日は気合入ってますね」という
・産後すぐに仕事復帰する女性に「子どもが3歳まではそばにいた方がいい」
既婚の安定 ・独身の友人に「イケメンを紹介するよ~」と言う
・結婚したいのにできない友人に「いいんじゃない、独身の星って感じで」
夫・彼氏の存在 ・「イヤになったらいつでも仕事やめていい、と彼氏が言ってくれる」と誇る
・「夫が家にいてほしいという」と飲み会を断る
子どもの存在 ・恋愛の悩みを相談すると「子どもを育ててると毎日が忙しくて、ちっちゃなことで悩んでるヒマはないかな~」と言われる
・子どもを産んでいないと「縛られることがなくてうらやましい」と言われる
年の功 ・年下女性に対し「あなたたち、キャーキャーしてられるのも今のうちよ」と言う
・「こんなこと言うのもなんだけど、幸薄そうよね」と決めつける
実家資源 ・高級ブランドバッグを身につけ「ママの借りて来ちゃって」と言う
・権力者の父の人脈を誇る

自立した人間としての地位・能力を誇示するマウンティング

自立した人間としての地位・能力には、従来男性役割とされてきた仕事や経済に関する内容が含まれます。伝統的な男性役割には、職業上の成功と達成や、肉体的・精神的強さと独立心、感情表出の制限、女々しくないことなどが含まれています。

女性の社会進出に伴い、キャリアや学歴、有能さやタフさなど、男性間のマウンティング同様のテーマも、相手に対する優劣のアピールに用いられます。

一方で、保守的なコミュニティでは評価が低かったり、家庭やモテを捨ててキャリアに邁進する場合など、ほかのカテゴリーと両立しないことが考えられます。

概念 例(要約)
キャリア ・非正規雇用の女性に「いいな、頑張りが報われる人は。正社員はいくら頑張っても、お給料が変わらないんですよ」という。
・主婦の女性に「主婦なんて、いいご身分だよね」という
学歴 ・主婦に対し「主婦なんて中卒でもなれる」と言う
・学歴がない女性に対し「男の金で生きてくの?つまんない人生」という
仕事の有能さ ・自分が仕事で目標を達成したと言うと「私もこの前、同期で一番のりでプレゼン担当になったんだ」と言われる
・ミスした女性社員に「まだ仕事始めたばっかりなんだし、しょうがないですよ~」
苦労 ・子どものお迎えを親に頼むと「やっぱり実家近いの超得だよね~」と言う
・時短勤務の先輩に「会社のお荷物、権利だからのうのうとして」と言う
経済力 ・高級時計を見せながら「これすごく安く買ったんだけど」
・家を購入した友人に「ローン払っていくの大変だよね~」
独身の自由 ・既婚の友人に「独身生活を謳歌しまくってま~す」と言う
・「妊娠するといろんなものが食べられなくなるから大変だね」と言う
海外経験 ・「バックパッカーの経験があって視野が広がった」と誇る
・観光客が滅多に行かない海外の地位での経験を誇る
居住地 ・地元に帰った時に「こんなオシャレな店ができたんだね」と感心したようにいう
・都会に住んでいるというと「怖い」と言われる
趣味・教養 ・テレビドラマがおもしろかった話をすると「テレビを見る時間に意味を見いだせない」と言われる
・寿司屋で「お寿司、トロから頼んじゃうんだ」と言われる

女性としての性的魅力を誇示するマウンティング

女性としての性的魅力とは、女性としての美しさと魅力でアピールするマウンティングを指します。優しく上品で従順な態度といった伝統的な女性役割と異なるため、該当論文では独立した概念としています。

また、モテ経験は男性から評価されることで有効になるため、間接的なマウンティングともいう要素もあります。

概念 例(要約)
美しさ ・「みんなメイク盛ってるね~!」とすっぴんの女性が言う
・色白女性に「あんまり白すぎると年取った時に大変らしいよね」と言う
ファッションセンス ・「素材はいいのにもったいない!」とメイクや服装に口を出す
・「カワイイ系のおしゃれをした方がモテる」と服装やメイクを強要
若さ ・お説教をしてくる年上女性に「年を取れば分かるのかなー」と返す
・アラサー女性に「30過ぎての婚活はイタい」と言う
モテ経験 ・男性に声をかけられることを話し「軽く見られてるのかなー」
・性交経験があることをもって「処女なんて後生大事にもってるもんでもないよ」と誇る
男のセンス ・「彼氏、イケメンじゃないところが逆にいいね」と言う
・「私の旦那の方が稼ぎがあるし」と誇る

マウンティングを理解して穏やかな生活を

マウンティングが自分の優位性を示す行為である以上、された側は不快な思いをします。無意識に自分がマウンティングしていないか振り返ったり、あるいは「ああマウンティングしたいんだな」と冷静に判断するなど、本記事を人間関係の改善に役立てていただければ幸いです。