人間関係で「マウントをとる」話の元となった、動物社会におけるマウント行為の意味とは

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「上から目線」と並び最近よく聞く「マウントをとる」会話。人間関係では、自分の方が優位であることを示そうとしてアピールする振る舞い・発言のことを指します。元々マウントは、動物社会において上下関係を示す行動として知られています。同じ種類の動物の中で、主に食物、縄張り、メスなどのリソースをめぐって、上位個体が下位個体に上下関係を再確認する行動を行います。

最近使われる「マウントをとる」行為は、元々動物社会の分析で使われる用語だった

最近よく見かけるようになった「マウント」「マウンティング」「マウントをとる」行為。英単語のmountは馬乗りになるという意味で、転じて上下関係をアピールする行為としても使われます。

例えば人間社会では、自分の強さを肉体的な暴力で表すわけにはいかないので、優劣は容易に決定しません。そこで、自分が優位に立っていることを示すために、自慢や相手を貶めたりする発言をする振る舞いをとるマウンティングが行われると考えられています。

人間社会のマウンティングでは、自分の仕事や肩書、裕福さ、きらびやかな私生活等、様々な要素でのアピールがおこなわれるのが特徴です。ある要素では優位をアピールできても別の要素ではそうではない、と最終的な優劣が決定しづらいことが、何度もマウンティングが繰り返される要因になっています。

マウンティングする人の特徴や心理、使われる会話のテーマなどは、「会話における「マウント」とは?なぜ人はマウントをとってしまうのか」をご参照ください。

動物社会における「マウンティング」の意味とは?

動物社会におけるマウンティングは、犬や猿などある程度集団生活や社会生活を行う動物で見られます。集団の中では、食べ物、縄張り、メスなどのリソースをめぐって競争関係があり、都度喧嘩をしていては大変です。そこで、お互いの順位をつけてある程度安定した関係を築くことで、無駄な争いを避けられる意味があると考えられます。

犬の間のマウンティングとは

犬がほかの犬や人間に前脚をかけたり覆いかぶさる行為は、性的な意味を持つ場合もありますが、単純に自分の方が強いことを示すマウンィングのことも多いでしょう。例えば、メス犬でもマウンティングすることが知られています。子犬の場合は、遊びの中で力の優劣を徐々に学んだり、順位関係を作っていきます。

犬の優劣関係におけるマウンティングはある程度パターン化されています。例えば、下位側の犬は頭を低くしたり、無防備にお腹を見せる行為は敵意がないことを示し、上位個体はそれ以上攻撃しないことが知られています。

こうしたマウンティングは、お互いの優劣が付いた後も行われることがあり、これは優劣を再確認する意味があると考えられます。

よく研究されているニホンザルの社会

上野動物園や高尾山など、各地の動物園にあるニホンザルのサル山。ニホンザルの社会にも上下関係があり「ボス猿」の存在はよく知られています。

ニホンザルは複数のメス・子どもを中心に少数のオスが交じる数十〜100匹の群れを作ります。メスは一生群れにとどまりますが、オスは4才くらいになると群れを離れ、一人で暮らしたりほかの群れに入ったりします。食べ物は葉っぱから果実や種子、昆虫まで食べる雑食性です。

ニホンザルは順位社会であり、一位の個体を「ボス猿」と呼びます。喧嘩の仲裁をしたり、ほかの群れとの争いで先頭に立つと行った役割があるとされます。高尾山さる園には歴代ボス猿の紹介ページが設けられています。

ただし、ボス猿が現れるのは飼育下の餌付けされた環境であって、野生ではボス猿は存在しないとする話もあります。野生では餌が少なければ新たな場所に移動すればよいだけで、厳密な順位が必要になるのは行動範囲や餌に枠がある飼育下だからだ、とするものです。

上野動物園に見られるように、メス猿もボス猿になることがあり、力以外に血縁も群れ内の順位優劣の要素になると考えられています。

では、ボス猿はどのように交代するか。ほかの群れからやってきたオスが現れたり、歳を取って衰えたりすると、ボスに挑戦するものが現れ、そこで弱みを見せてしまうと順位が逆転してボス猿交代に至ります。