砂上の楼閣とは|読み方・意味・ビジネス上での使い方・類義語・対義語・英語表現を解説

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ここでは「砂上の楼閣」について解説いたします。

日常生活で「砂上の楼閣」という言葉を使う機会は決して多くありません。一方、ビジネスシーンでは比較的よく使われますが、意味は大別して2つあり、正しく使い分けるには正しい知識が必要です。

そこで、ここでは「砂上の楼閣」という言葉について、くわしい意味や使い方、類義語や英語表現などをまじえて多角的に解説いたします。どうぞ最後までお読みください。

「砂上の楼閣」の読み方・意味・使い方

「砂上の楼閣」は「さじょうのろうかく」と読みます。

「砂上」とは文字どおり「砂の上」のこと。「楼閣」の「楼」という字には「高くそびえる建物」の意味があります。また「閣」も「高い建物」を意味する漢字ですが、もうひとつ「立派な御殿」という「楼」にはない意味もあります。

「砂上の楼閣」を言葉通り解釈すると、「砂漠のような砂の上に建つ豪勢な高層の御殿」という意味になります。そこから転じて、「見た目は立派でも基礎が弱く簡単に崩壊してしまう物事」や「実現不可能な物事」をたとえる言葉になりました。

日常生活で「砂上の楼閣」を使用する場合は、「貯蓄もないのに開業するのは砂上の楼閣(のようなもの)だ」というように、名詞や形容動詞の用法で、語尾に「~のようなもの」あるいは「~だ」をともなうのが一般的です。どちらも意味は同じです。

「砂上の楼閣」の語源

「砂上の楼閣」というと、かつて中央アジアで栄えて滅亡し砂に埋もれた伝説の都市国家「楼蘭(ろうらん)」を想起する方も多いのではないでしょうか。しかしながら「砂上の楼閣」の語源は楼蘭ではありません。意外にもイエス・キリストの教えが由来です。

新約聖書の「マタイによる福音書」にはイエスのこんな言葉が書かれています。

「今の私の話を聞いて実践しない者は、砂の上に家を建てる愚か者と同じです。大雨が降り、川の水があふれ、大風が吹けば家は簡単に倒れてしまう。それも実にひどい倒れ方です。」

この言葉は、ある山の上でイエスが大勢の民衆や弟子たちに語った「山上の垂訓(すいくん)」という有名な教えの一部です。それが「砂上の楼閣」の語源となりました。

「山上の垂訓」には、ほかにも「汝の敵を愛せよ」「敲けよ、さらば開かれん」「右の頬を打たれたら、左の頬を向けなさい」などのよく知られた教えのほか、「豚に真珠」ということわざの語源になった訓戒も書かれています。

 

投資における「砂上の楼閣理論」とは

ビジネスシーンで「砂上の楼閣」といえば、経済学者のケインズが唱えた株式投資に関する「砂上の楼閣理論」が有名です。

ケインズは投資家としても大きな成功をおさめた人物。「砂上の楼閣理論」とは、株価を形成するのは企業の資本価値ではなく欲に駆られた投資家の心理であり、相場の局面では企業価値よりも投資家の群衆心理を把握するほうが勝てる、という理論です。

ケインズの「砂上の楼閣理論」は、ジョン・バー・ウィリアムズが提唱した「ファンダメンタル価値理論」の対極にある思想といえます。ファンダメンタル価値理論は、企業の資産評価額を分析すれば、将来の株価の推移を正しく予測できる、というもの。

「ファンダメンタル価値理論」では、株価が企業の資産評価額を下回れば買いを入れ、上回れば売るタイミングだと判断します。

そもそも株式投資の目的は、自分が安く買った株を他の誰かに高い価格で売って利潤を得ることにあります。言葉を換えれば投資とは、自己資本を相場という畑で大きく育てるプロセスのこと。株価は投資資金の需要と供給によって決まります。

目端の鋭い投資家は相場が動き始めると誰よりも早く参入し、風向きが変わると見るや誰よりも早く撤収します。企業の資本価値を考えて株を売買していたら、相場の波にすばやく乗ることができません。

そのため大相場になると株価は投資家の心理という実態のない要素に左右されます。それがケインズの考える「砂上の楼閣理論」です。

ジョン・バー・ウィリアムズの「ファンダメンタル価値理論」と「砂上の楼閣理論」には、それぞれ一長一短があります、どちらが正しいとは一概には言えません。ひとつ言えるとすれば「投資に必勝法はない」ということ。

たとえば2008年のリーマンショックや2020年の新型コロナウイルスによる世界的な株価の大暴落はまさに投資家の「群集心理」が生んだ高次元のパニック現象といえます。でも、それを誰よりも早く察知して儲ける手法はいまだ確立されていないのも現実です。

「砂上の楼閣」のビジネス上での使い方

「砂上の楼閣」の意味を大きく分けると、「見た目は立派だが内情や基盤は砂のようにもろく不安定な見かけ倒しにすぎない」という意味と、「コンセプトや目標が非現実的で実効性がない」という意味のふたつがあります。

1.「見た目は立派だが内情は見かけ倒しにすぎない」意味の例文

あのレストランは操業からわずか数年で全国50店舗を達成したが、新型コロナウイルスによる業績悪化によって強気の出店計画が砂上の楼閣になってしまった。

2.「コンセプトが非現実的で実効性がない」意味の例文

原材料費がこれだけ急騰しているのに去年の相場価格を前提に設備投資を断行するなんて、それじゃ砂上の楼閣だよ。

「砂上の楼閣」の類義語と例文

「砂上の楼閣」と同じ意味を持つ類義語としては「絵に描いた餅」「張り子の虎」「机上の空論」「見かけ倒し」「絵空事」などをあげることができます。

「絵に描いた餅」は役に立たない物事のたとえで、実現の可能性がない計画などを言います。

「机上の空論」は頭の中で考えただけの役に立たない考えのことです。

「絵空事」は実際よりも美しく描いた絵のように、大げさで現実離れしていることをいいます。

「絵に描いた餅」の例文

宝くじが当たったらマンションを買うつもりで住宅情報を検索するのは楽しいかもしれないが、現実には絵に描いた餅でしかない。

「砂上の楼閣」の対義語と例文

「砂上の楼閣」と反対の意味を持つ対義語としては「堅実」「用意周到」「地に足がついた」などをあげることができます。また、外観と内容に違いがない、という意味では「見かけに違わぬ」も対義語のひとつにあげられます。

「地に足がついた」の例文

昨今の景況悪化を鑑みて、地に足が着いたアクション・プランを立案したい。

「見かけに違わぬ」の例文

彼が買ったスポーツカーは見た目に違わぬ高性能だ。

「砂上の楼閣」の英語表現

「砂上の楼閣」の英語表現としては「a house built on sand」という意味通りの表現が可能です。ほかには「トランプで作った家のように崩れやすい」という意味で、「house of cards(トランプのカードで作った家)」も定型表現のひとつです。

まとめ

・「砂上の楼閣」は「見た目は立派でも基礎が弱く、簡単に崩壊してしまう物事」や「実現不可能な物事」を意味することわざです。
・「砂上の楼閣」は「マタイによる福音書」に記されたイエス・キリストの「山上の垂訓」が語源です。
・ビジネスシーンではケインズが唱えた「砂上の楼閣理論」が有名です。
・「砂上の楼閣」の類義語には「絵に描いた餅」「張り子の虎」「机上の空論」「見かけ倒し」「絵空事」があります。
・「砂上の楼閣」の対義語には「堅実」「用意周到」「地に足がついた」などがあります。
・「砂上の楼閣」の英語表現としては「a house built on sand」「house of cards」があります。