ひいてはと強いてはの違いと使い方 類語英語表現の解説

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「ひいては」という言葉を日常で聞くことはあまりないかもしれません。もっぱら、かしこまった場での発言や文書で使われる言葉ですが、いざという時のために使えるようにしておいた方がよいでしょう。そこでこの記事では、

  • ひいてはの意味と使い方
  • 「しいては」との違い
  • 類語と例文
  • 英語表現

 

上記について解説していきます。
この記事を通して、誤用の危険もある「ひいては」を正しく使いこなせるようになりましょう。

「ひいては」の3つの意味と使い方

「ひいては」には大きく分けて3つの意味があります。しかしながらその意味だけを羅列したのでは少し分かりにくいところがあるので、この項目ではそれぞれの意味に対して具体的な使い方を合わせて記載しました。

具体例と合わせて確認することにより、さらに理解がしやすくなることでしょう。

それが原因になって

1つ目の意味は、「それが原因になって」です。「原因によって起こる別の結果」を指し、「Aが原因になってBという結果が起こった」ということを表します。

例えば「今回のセキュリティ事故は担当者の確認不足が原因だが、ひいては日常的に業務が逼迫していたことに問題があった」のような使い方が考えられるでしょう。このように、「あることが原因になって、別の問題が起こる」というように使うことができます。

それから引き続いて

2つ目は「それから引き続いて」という意味です。「Aという出来事がBという結果を出し、それからCという別の結果へと発展していく」といったニュアンスで使われます。

具体例としては「この度の産地偽装問題は消費者離れ、取引先との取引停止、ひいてはこの先の経営にも大きな影響を及ぼすと見られている」のようなものが挙げられるでしょう。ある出来事が起点になり、どんどんその影響が広がっていくイメージです。

さらには

そして3つ目の意味は「さらには」です。「Aという出来事がA1、A2、A3へと繋がっていく」というもので、1つ目や2つ目と違って目線は変えないまま先を見据えるという用い方をします。

例えば「今回の情報漏洩問題に対して事実を明らかにし誠実に対応することは、問題の解決、世間からの信頼回復、ひいては取引先からの取引再開に繋がる重要なことだ」のように使うイメージです。

すでにしていることやこれからしようとしていることをそのまま進めた場合に、影響がどんどん大きくなることに対して「ひいては」を使用します。換言すると、「すでにしていることやこれからしようとしていることを、その先にあることと結びつける」ということです。

「ひいては」の漢字表現

平仮名の「ひいては」を漢字で表すと「延いては」です。「延いては」は、元々は「引く」という漢字が由来になっているといわれています。「引く」に接続助詞の「て」が伴って「引いて」となり、「ある出来事の流れを引いて、このような結果になる」といった意味で使われていました。

ただ、なぜ「引いて」が「延いて」になったのかは明確になっていません。なお今日では平仮名で「ひいては」と表現されることがほとんどで、漢字の「延いては」で表されることはほとんどないようです。

「ひいては」と「しいては」の違い(どちらが正しいのか)

「ひいては」と似た言葉に「しいては」があります。どちらが正しいのか、または違う言葉なのか迷うことが多い言葉です。
これは、漢字表記を見ると違う意味の言葉であることがはっきりとわかります。「しいては」は「強いては」となり、正しくは「強いて」と使います

「しいては」と発音するのは「強いて」が「延いては」や「急いては」と混同された結果の誤用です。間違えやすいの注意しましょう。

また、江戸言葉では「ひ」を「し」と発音することが多いので、二つは区別がつきにくいことも誤用の原因でしょう。

参考までに「強いて」の意味と例文をあげておきます。

【意味】

無理をおして。あえて。無理やり。

【強いてはの例文】

お願いはしたが強いてはいない。
寄付を強いてはいけない。
強いて言えば目標のようなものだ。
チームは苦戦を強いられていた。

「ひいては」の類語

「ひいては」の類語は次の通りです。

そのため、それゆえ、それにより、その結果、その上、あまつさえ、加えて、
さらに、そればかりか、それどころか、それにとどまらず、おまけに、~のみならず…まで

いずれも、前後の事柄をつなげて因果関係を表しています。

「ひいては」の例文

そうすることがあなたのためにも、ひいては家族のためにもなるでしょう。
身のため、ひいては家のため。
その人は日本の、ひいては世界の宝となる人材です。
睡眠を十分に摂ることで体を休ませ、ひいては仕事への活力も生み出すことになるのです。
彼女の存在は喜びであり、ひいてはたったひとつの支えであった。

「ひいては」は口語表現?文語表現?

「ひいては」は文語表現だけではなく口語表現としても使われる言葉です。どちらかというと堅い言葉なので文語表現で用いられることが多いですが、口語表現で使用しても問題ないでしょう。

ただし口語表現は日常会話などで使われることがほとんどなく、ビジネスシーンのスピーチなどで用いられることが多いです。

ひいては 英語表現

英語では次のように表現することができます。

not only A, but also B
AだけでなくBも
You are not only a good coach but also a good player.
(君は素晴らしい指導者であるばかりか、優れたプレーヤーでもある)
and therefore
それゆえに
It can be used repeatedly and is therefore easier on the environment.
(それは繰り返し使うことができ、ひいては環境にやさしい)
in addition to~
~に加えて
In addition to good looks, he has a good intellect.
(彼はハンサムな上に賢い)
and consequently
ひいては、その結果として
The company went bankrupt, and consequently many employees lost their jobs.
(会社が倒産し、その結果多くの社員が職を失った)

「ひいては」まとめ

  • 「ひいては」には「それが原因になって」、「それから引き続いて」、「さらには」という3つの意味がある
  • 「ひいては」は漢字で「延いては」と書く
  • 「しいては」と発音するのは誤用
  • 類語は「そのため、その結果、その上、そればかりか」など
  • 「ひいては」は堅い言葉なので文語表現で用いられることが多いが、口語表現で使用しても問題ない
  • 英語では、“not only A, but also B”、“in addition to~”、“and consequently”などを用いる